第2話 梅が咲いた
1月上旬 我が家の自慢の梅の木が咲き始めた。
「梅が咲くと花粉の薬を飲まないとね」
と妻がつぶやく。
決して梅が悪いわけではない。自慢の梅だ。杉の木だって悪いわけではないのだけれど、やっぱり花粉症は辛いのだ。特に外で働く農家にとっては……。
季節はめぐり、忘れた頃に、今年も花粉の季節がやってきた。
テレビの花粉予想も正しいのだろうけれど、めぐる季節のうつろいは、植物たちの方が正確に教えてくれる。...ような気がする。
そうそう、話は「梅」の話だったっけ。
我が家の自慢の梅の木は、もうかれこれ150年以上活きているんじゃないだろうかと思う。自分が生まれた時にはもう今の大きさの見事な梅の木だったから。
自慢の梅なので、25年も前に家を建て替えた時には、まず、梅の木が育つように家の配置を考えた。梅の木の移植も怖くて、手を付けることをやめた。
この措置は、多分ご先祖様にも褒めていただけるような気がしたし、そもそもここまで見事に育つと精霊かなにかが宿っているような気さえして、伐採という気持は一切なかった。
家の建て替えで、根っこも痛めたようだけれど、梅はなんとか生きて続けてくれた。
そんな梅だが、10年ほど前から、幹に腐りがでてきて、花も少なく元気がなくなってきていた。腐った梅がポッキリ折れないように金属パイプでつっかえ棒もした。それでもやっぱり少しずつ、元気がなくなってきた梅の木だった。
数年前から、息子が梅の木を剪定するようになった。
徒長枝という、元気な枝を残すという剪定方法だ。これは、梅の剪定の常識とは外れる方向の剪定だった。梅は徒長枝がたくさん発生するから、基本は、徒長枝を根元から切り取る剪定をするのが基本だからだ。
しかし、この徒長枝を活かす剪定方法は、老木となった梅にはとても良かったようだ。太くて腐り始めた枝を切って、新しく元気な徒長枝を育てる事を繰り返した事で、梅が元気を取り戻した。
二年三年と、年がめぐるたびに、徒長枝も太くなり、腐った枝に置き換わってきた。次第に幹もなんだか活き活きしてきた気がする。
そんなわけで、今年も我が家の自慢の梅が咲く時期がやってきた。
早春に元気に咲く梅はやっぱりすがすがしく感じる。
息子が剪定をしていることも、どうやら関係しているかもしれない。
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