第39話 アンビルバサミなら痛くない

 梨の剪定を始めた頃、腱鞘炎(けんしょうえん)になった。剪定ばさみを使っていると、切り終わる時に、カックンとなる。その振動が、手の筋を痛めたようだ。しばらく整形外科に行って治療して貰った。

 前後して、左手の指が、バネ指と言われる状態になり、手術をした。


 高校時代は自転車通学だったせいか、握力が60キロあって自慢だった。だから握力だけは自信があったので、これはありえない事だと思った。


 お医者さんと話しているうちに、握力に自信があったので、逆に無理をしたのだと、ようやくわかった。とし相応の動きをしないといけないと、頭でわかってはいても、どんどん下降してくるのが我が体力なのだ。


 ネットで調べたら、剪定をしている果樹農家では、たくさんの人が、腱鞘炎で苦労していることを知った。


 道具でなんとかならないか調べていきついたのが、アンビルバサミだった。日本製のものもあるが、紹介されていたのはドイツ製だった。


 清水の舞台から飛び降りる気持ちで、6000円のアンビルバサミを買った。


 結論は、おすすめである。もう二度と、他のハサミは使う気になれない。医者代や痛みを考えれば、6000円も安い物だ。


 良い点

 カックンが起きない。だから、手が痛くならない。

 ひもが切りやすい。だから剪定の作業が楽。

 

 悪い点

 切り口がつぶれる。

 値段が高い。

 最近ネット販売も少なくなって、売っていない。


 アンビルバサミは、まな板のような平らな下刃に、上から切れる歯ををてこの原理で押し切る仕組みでできている。持ち手は、エルゴノミクスデザインで湾曲していて、これも手の負担を減らしてくれている。

 まな板に切りつける仕組みだから、ひももよく切れる。

 まな板に切りつけるわけだから、切り口はつぶれやすくなる。


 普通のハサミは、二枚の歯がこすり合って切れるわけだから、根本的に発想が違うのだ。

 二枚の歯がこすり合わさるから、よく切れるけど、切り終わった瞬間に、カックンという振動が起きてしまう。

 二枚の歯の微妙な加減がなければ、ひもは、歯と歯に挟まって切れない。


 実は、電動バサミというものもある。軽く握れば太い枝でも、「スパッと切れる」優れものだ。これは、「スパッと切れすぎ」だから事故が心配で、手を出さないことにした。

 電動バサミの中に、ゆっくり動いて切れるものがあった。ゆっくり動けば、事故は防げるはず。それで、こちらの電動バサミは購入して使っている。使用頻度も高い。パワーはそこそこだけど、アンビルバサミで切れない太さでも、軽い力で切れるのはありがたい。


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