第21話 梨園を継いだ時
いよいよ3月。梅の花も満開を過ぎ、早咲きのスイセンが咲き始めました。
剪定作業はタイムリミット目前です。クリスマス前のケーキ屋さんです。
梨畑の作業も、一番大切で一番やっかいな、苗木を『実のなる木の形』に仕立てる作業をやり始めています。
梨畑を見渡すと、『父が植えて形を整えた梨の木』は、もう樹齢が30年を超す古木になってしまいました。
そんな、古木を見ながら、自分の方法で苗木を仕立てていると、梨園を継いだ時のことを思い出します。
・・・・・
退職後、私は、すぐに梨を育てていたわけではありませんでした。梨園管理は、当時まだ元気だった父と母の仕事でした。
私はといえば、自由に畑を耕して、気に入った野菜を作っては、農協の直売所に出荷していました。自分の好き勝手に野菜を育てるのは、とっても楽しい仕事でした。
初夏のある日、元気だった父が急逝しました。
まさに、我が家にとっては晴天の霹靂の大事件でした。
特に残された梨園をどうするかが一番の課題でしたので、家族会議を開いて相談しました。梨の木をひっこ抜くか。それとも梨園を続けるか。これは、我が家の大問題でした。
私の住む地域は、古くから梨が栽培されている産地なのですが、梨畑はどんどん姿を消しているのが現実です。やはり、梨の栽培は難しいのです。
いろいろな技術と経験の積み重ねが必要なのが一番の問題なのです。それに農薬や肥料もかかりますから、ひとつ間違えれば、赤字になってしまいます。そんなわけで、我が家の周囲にあった梨園はどんどん姿を消しつつありました。
家族会議の結果、出した結論は、
『まずは、やれるだけやってみようか。もし失敗したらやめればいいじゃない』
でした。息子がやってみたいと言った事が、判断の決め手となりました。父の残した梨園ですし、自分が出来なくなっても、その後に未来があるならば、やってみてもいいかなと思ったのです。
ただ、当時の私には、全く経験がないわけで。無口な父からは、梨の木について教わった事はほとんどありませんでしたし、母に聞いても正しい情報はわかりませんでした。
今となれば恥ずかしい話ですが、『よめっこ』の妻の方が、梨の実を見て品種名や特徴を答えられるといった具合でした。
まずは、近所の大先輩や、農協に次から次へと聞くことから始めました。近所のみなさんや、初めてうかがう梨農家のみなさんは、どの方もとても親切でした。
父が亡くなったのは、初夏だったので、収穫前のいつ、どんな農薬をかければよいかが、まず大事でした。
収穫方法や販売方法は、母に聞きました。
梨を売り始めると、これまで父が築いてきた、消費者さんとのつながりの大事さに気づきました。それや農協さんに、助けられて、なんとか、全部売ることができました。
その頃から、私は、書店で本を買いあさり勉強しました。息子はインターネットで情報を仕入れました。
秋になり、母から聞きながら、農薬よる防除や、落ち葉の管理などの作業を進めました。
冬の剪定の時期になりました。近所の先輩さんに聞くと、
「私が教えるのはいいけれど、あなたの家の剪定は、私らと違うから、気を付けてね」
といわれ、初めて、我が家が、他の梨農家とはちがう剪定をしていることを知り、驚きました。
それでも、剪定をしなければなりませんので、一年目は、母の方法、つまり、『他の梨農家とはちがう剪定』をしました。
近所の先輩の話や、勉強した本の話、インターネットから仕入れた情報から、次の年からは、母の経験とは違う栽培計画を立てて進めることにしました。
農薬を使った防除と、新しい肥料の導入は、息子が調べ考えた方法で進めることにしました。
剪定の仕方や、梨の木の形は、新しい考え方を参考にしました。
東北の津波で被害を受けた地域での梨の整枝方法は、これまでとはちがう方法でした。言い換えると、梨栽培が、もっと体に負担なくできる方法だったのです。
今、梨園には、父の育てた古木が植わっています。実は、その古木の仕立て方も、調べてみると、周囲の梨農家とは違う、ちょっと新しい方法でした。父も、工夫して仕立てていたようです。
その横に、父とは違った、新しい仕立て方で、苗木を育てています。
父が植えた古木も、木の中心が腐ってしまい、寿命を迎えつつあります。ですが、もう一度手を加えて、剪定と新しい整枝方法で、活性化してみようと考えています。
梨栽培は同じように思えますが、月日が流れ、研究が進めば、栽培方法も変わりつつあります。
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KAC2023 初めてのイベントなので参加しようと思います。ウェブサイト読んでもよくわからないけど、参加賞くらいもらおうかな。
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