第18話 梨の防除 カイガラムシをやっつけろ
2月の大事な作業の防除作業をしました。マシンオイル(ハーベストオイル)という薬剤をかけました。
□薬剤の内容と目的
この薬剤は、オイルという名前がついているように、油が主成分の薬剤です。害虫の体を覆ってしまい、呼吸できなくして殺虫するという内容の薬です。
昆虫の仲間は、気門(体の横に空いている、たくさんの穴)で呼吸をしているので、そこをふさいでしまうのです。
ちなみに、野菜についたアブラムシを同様に気門をふさいで退治する農薬としては、でんぷんのり(紙を貼り付けるのりです)を主成分にした農薬もあります。人にやさしい農薬ですね。他にも、牛乳を直接スプレーするという方法も、無農薬栽培法の本に書いてあることがあります。でも、実際にやってみると、葉に着いた牛乳が腐ると臭いが気になって、これはダメだと思いました。
□薬剤の毒性
主成分が油なので、毒性はとても低いです。
□薬剤の目的
越冬している害虫の駆除が目的です。
特に、カイガラムシに効果が高いです。
カイガラムシは、春から夏にかけてどんどん増えて、梨畑一面に一気に広がってしまいます。枝や、果実を真っ白にするくらいひろがります。しかも、水をはじく体をしているので、増えてからは、普通の薬剤はなかなか効果がありません。
そこで、2月のこの時期に、マシンオイルをかけて、元から駆除してしまうのです。
□他の月だとなぜダメなのか
花が咲いている時期は、おしべ、めしべにくっついて、受粉に影響が出てしまいます。
梨が実った時期では、果実が、てんぷらであげたような見栄えになってしまいます。見栄えが悪くては売れません。
2月ならば、まだ、枝を探しても、カイガラムシは発見できないくらい少ないわけです。害虫駆除は、『広がる前にやっつけろ』なので、今のうちに、元を断ってしまうわけです。
□苦労話
この防除作業は、毒性が少ない点は、とても気楽なのですが、全体にまんべんなくたっぷりかける必要があります。かけない枝があると、そこから広がるからです。
おわった防除用のホースや噴霧器、タンクなどの器具は、台所用の中性洗剤を溶かした液で、十分洗う必要があります。普通は水洗いですましますが、中性洗剤で洗うのは、なかなか骨が折れ、時間もかかる仕事になります。
実は、私が、梨畑を継いだ時の一年目の事です。父が急逝し、無口な父からは、それまで全く梨畑の事など教えてもらったことのない自分でした。
夏のある日、カイガラムシが梨の枝についていて、まるでゴマ粒のように見えたのが少し気になりました。白くて動かないので、カイガラムシだということさえ知りませんでした。それに、他の防除はきちんとしていたつもりだったので、大発生しているとは思いませんでした。
その後、近所の先輩のみなさんに話を聞いて、カイガラムシだと分かり、マシンオイルでの防除方法を教えていただきました。どうやら、我が家はマシンオイルをこれまで、かけたことが無かったようでした。
梨を育てる上では、欠かすことのない作業が色々ありますが、この、マシンオイルを冬にかけることが、とても重要な作業だと思う経験でした。
ちなみに、薬剤をかけた後の梨の枝は、それこそ、油でコーティングされていて、一見、枝を油で揚げたようにも見えて、ちょっと不思議な感じがします。
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