第3話 キジバト
梨畑で剪定をしていたら、いつのまにかキジバトが、ネットの中に迷い込んできた。
バタバタ、バタバタしているので、それに気づいた。
近くに来た時、ジッと観察してみた。
目の周りが赤くて、茶色の縞模様がとっても綺麗だ。スマートだから、メスなのかと思った。
こちらが静かにしていれば、逃げようとしない。どうやらかなり慣れているようだ。これはうちの庭を、いつもポッポと散歩しているキジバトではないかと思った。
梨畑は、ネットで囲っているけれど、中央の出入口の地面付近だけは、くぐって入れるように、少しだけ開けてある。どうやら、そこから入ったようだ。ということは、ポッポと地面を歩いて入って来たということだ。
いやはや、そんな狭いところから、歩いてはいってくるのかよと、驚いた。梨畑の中にエサなどないと思うのだけれど。キジバトの気持ちは、わからない……。
バタバタ飛び回って、ネットの上の方から出ようとする。だから、ネットに、はばまれてしまう。一時間くらいあちらこちらとバタバタ飛び回っていたが、入って来たところは、やっぱり忘れているようだ。
ネットは見えるはずなので、中央入り口を開けておいたら、そのうち出て行かないかと考えたが、逃げ出せなかった。やっぱり空に向かって逃げる習性があるからだと思えた。
いよいよ夕方になり、梨畑から帰る時刻になった。
『鳥は、一日食べ物を食べないと死んでしまう』と、聞いたことがあるので、そのまま放置するのもかわいそうだと、逃がす方法を考えた。
ハトがバタバタと何度も出ようとしている所が、ネットの東上のすみだったので、そこから出すことにした。
まずは、ネットの東上のすみを1m四方くらい開けた。
そうして、梨畑の中央から、東に向けて、ゆっくり追ってやった。そうしたら、驚くほど早く出て行ってくれた。ほっとした。
でも慣れているのか、どこかに飛び立つのではなく、近くの木にとまって羽根を休めていた。やっぱり、うちの庭をポッポと歩いているキジバトらしいと思った。
朝食の時、
「夫婦のキジバトがいたよ。そこに、もう一羽が近づいて来たけど、仲間に入れてもらえなかったみたい。ちょっとかわいそうだった」
と妻が話してきた。
梨畑のキジバトはどっちだろうと、ふと考えた。
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