第35話 早く実のなる梨の木に仕立てたい
梨の剪定も、終わりに近づいた。
最初に剪定した木の先からは、もう赤いあかちゃんの芽が出てきている。
どうやら、休眠から目覚め始めたようだ。
若木を仕立てて、将来の梨の木の形を作る仕事を急いでいるところだ。
さて、梨の仕立て方だけど。
1年目。冬の間に梨の苗を植え、まっすぐ真上に伸ばす。
2年目。おへそのあたりで一度切って、出てきた枝を、斜め上の3方向に伸ばす。
3年目以降。3方向の枝をほぼ水平に伸ばして太く長く育てる。先端を上に向けるのがこつ。これが主枝となる。
これが普通の仕立て方だ。近所の梨畑も、大体この仕立て方になっている。
ところが我が家の梨の木は、2方向の仕立て方だったので、受け継いだ時には、なぜだか分からず驚いた。
父は、Yの字のように2方向に伸ばして、それをTの字のように伸ばしていった。これは、父に研究心があったからだと、今は考えている。
3本の枝を伸ばすより2本の方が収穫が早いのは、なんとなく分かると思う。枝が伸びる力が1/3ではなく1/2になるので、より早く大きく成長するからだ。
父は、より早く梨の実を収穫する仕立て方を考えたのだった。
ところで、実は、この2方向に伸ばす仕立て方は、剪定がとてもやりやすいという、初心者向きの利点もあった。これは、とても助かった。
上から見ると分かるのだけれど、3方向だと枝先はどんどん広がる事になるから、実の成る枝の伸ばし方がとても難しい。枝先になるにつれ、長さが広がることになるからだ。
父の仕立てた2方向だと、どの枝も同じ長さでいいから、実の成る枝の伸ばし方が、とてもシンプルになる。
簡単に言えば、魚の骨のように、実の成る枝を伸ばせばいいので、とっても分かりやすいのだ。
さて、僕が梨園を受け継いだ時、梨の木はジャングルみたいだった。父が亡くなる前は、母が剪定をするようになっていたから、父の意図が良く分かっていなかったようだ。
それは、魚の骨型の仕立てを維持するには、毎年たくさんの枝を切り落とす必要があるからだ。枝を切るのは、とても勇気がいるからでもある。
今現在、自分も若木を育てているけれど、父と同じように仕立てている木が2本ある。あと1・2年すれば実が取れそうで楽しみだ。我が家一本もない幸水なので大事に育てたい。
ただ、残りの若木は、最新の考えを取り入れて、真上に伸びてきた枝を、そのまま、地面と平行に曲げる方法を取っている。一方向しか伸びてないので、一番早く実を収穫できる方法だ。
しかも、曲げる位置が、腰のあたりで低いので、一年間のいろいろな作業が本当に楽になる。
ただこの方法は、曲げる時に、太い幹がボキリと折れやすいのが欠点なのだ。
父が亡くなってから植えた苗木だが、一方向の仕立て方は成長が早くて、今年はは、いくつか実がとれるだろうと思っている。
まるで実験なのだけど、どういう結果になるか、夏の収穫が待ち遠しい。
【近況ノートへリンク】↓ 父の仕立てた梨の木 2方向
https://kakuyomu.jp/users/suzukaze3/news/16817330654241516111
【近況ノートへリンク】↓ 魚の骨のような枝
https://kakuyomu.jp/users/suzukaze3/news/16817330654241783436
【近況ノートへリンク】↓ 主枝が一本の新しい仕立て方
https://kakuyomu.jp/users/suzukaze3/news/16817330654242015258
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