第8話 大魔賊団

「ラット!をするぞ」


「うっす」


ラットはハンマーを構える。

 拳を構えるフウカに、レイヤは肩に手をポンッと置く。


「この船を守るって約束したんだ。覚悟を決めろよ?フウカ、この2人を俺に任せて、他の魔賊を頼む。できればヘーストさんに伝えて欲しい」


「分かりました!」


「それは必要ない。俺はここにいる」


「っ?!」


すると奥からヘーストが現れる。

ヘーストは棍棒を持っていて、魔賊を倒していた。


まさか、ずっとそこにいたのか?気づかなかったぞ?


「まさか、魔導師が賊の真似事をしているとはな。ライセンスの方は本物だったが、まさかお前ら魔賊に成り下がっんじゃないよな?」


 元魔導師として、ヘーストは敵である魔賊の味方になった事が許せなかった。ヘーストはそんな2人を睨みつけてる。


「あはははっ!そりゃそうだろ!魔賊の方が稼げるからだ!」


「そうか。それは残念だ。レイヤ君、この船を頼んで良いか?本当なら俺がアイツらをぶん殴りたい所だったが、今の俺にそんな力はない」


「約束通り、この船を任せてください」


「頼んだぞ!」


ヘーストは満面な笑みでサムズアップを送る。レイヤは肩を回しながら2人に近づく。


「リン、どっちが良い?」


「なら、あたしはあのハゲをやるよ」


「オーケーだ」


「やるぞ!」


モルトとラットは2人に向かって飛び込む。

 ハンマーと剣で攻撃する2人を簡単にリンとレイヤは止める。リンは剣で、レイヤはモルトの手首を掴んで攻撃を止めた。


「武器を持たないお前は脅威じゃねぇ!」


「お前は俺の何を知ってるんだ?」


 呪具達は部屋の中に置いあり、素手で戦う事にする。モルトは剣で攻撃をする、だがレイヤさ全ての攻撃を紙一重で避ける。

レイヤは拳を握りしめモルトに打撃を喰らわさる。


「お前、本当に魔導師なのか?流石に弱すぎるぞ。二等兵でもまだ強いぞ」


「うるせぇ!!」


攻め込むモルトはレイヤの首を狙うが、アゴに目掛けて蹴り上げられる。レイヤは退屈そうに首をコキコキと鳴らす。


「リン、そっちは終わったか?」


「ガハッ」


リンの方に視線を移すと、ちょうどラットが倒れ込んでいる。


「おお、流石の腕前だ」


 ヘーストは2人の魔導師を瞬殺したレイヤ達の実力を見て感心する。そして乗り込んできた敵を拘束するフウカ


「こちらは終わりました」


 そして縄で縛られているのにまだ騒ぎ立てているモルト。


「お前ら!覚悟しろよ!くたばれ!死ね!」


「...ヘーストさん、これ殺して良いんじゃね?うるさいぞ」


「ダメだ。こやつは魔導師としてやってはいけない事をしでかしたんだ。その罪の報いを受けてもらう!この裏切り者どもが!」


「...」


 同じく魔導師を裏切ったフウカは、ヘーストの言葉が刺さるのであった。


「そうか。まぁ、ヘーストさんに任せますよ...ん?」


レイヤは異変な音が聞こえる。

 海を素早く走る何か大きな物が近づいて来る。


「...ヘーストさん、どうやらまだ終わりじゃないみたいですよ」


「え?」


「来たな」


その海を切る様な音、それは近づいて来る。


「リン!クロエ!構えろ!」


海の底から飛び出す様に現れる大型船。

 

「あの旗は...懸賞金2600万Gギール首領グラトニーが率いるグラトニー大魔賊団。その数30隻超えると言われている」


 すると後ろ...いや、周りから複数の大型船が飛び出す様に現れる。その数10隻近くはいる。


「あはははっ!お前達は終わりだ!グラトニー大将が来た事にお前らの死は近づいた!!グラトニー大将はあの魔の界岸ヴァルハラランドを囲む地獄への門島ヘヴンズドラグニアラインから無事帰還出来た男だ!」


 この世界は東西南北に四つの世界で分けらている。その四つの世界の中心にあると言われている魔の界岸を囲むようないくつかの島がある。そこの生息している生き物は他の四つの世界と比べ物にならないぐらい強い。


 ヘーストの船が囲まれた今逃げる事は不可能。10隻近くある船の中で1番豪華な船から1人の大男が降りて来る。


「グラトニー大将!!」


「モルト。ヘマをしたな」


「すいまさん、大将!まさか、俺達以外に美食屋を雇ってるとは思わず...」


「言い訳か?」


「え?」


グラトニーはモルトに向かって銃口を向ける。


「ま、待って下さい!」


「いらねぇ。言い訳を述べる人間なんぞ俺の世界にいらねぇんだよ」


バンッ!


グラトニーは引き金を引いた。

 頭を撃ち抜かれたモルトは吹き飛びその場で息絶えた。


「仲間なのに殺しちゃうのか?」


「仲間?弱い奴は仲間でもねぇ。悪いが、この船の食料と金...あとは女を全て頂くぞ」


グラトニーはリン、フウカを見渡す。

確かに3人とも美女と聞かれれば10人中は10人頷くであろう。


「悪いな、ウチの長は渡せられねぇ。それにこの船を守ると約束したんでね。大人しく帰ってくれれば嬉しいんだけどね」


「無理な願いだ。俺に逆らう奴は全員殺す」


「なら、対抗するぞ」


レイヤとグラトニーは鋭い目つきで睨み合うのだった。

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