魔力至上主義の世界で、魔力を持たない呪われた男は、呪いの力で成り上がる〜仲間達との野望を叶える為に世界を回る航海記〜

ちゃんユウ

南の界岸編

夢見る2人の出会いは...

第1話 魔力のない青年

ここは、五つの世界に分かれていた。

 その世界では魔力と言った特殊な力が存在する。魔力には主に火、水、土、風と光、闇の六大元素が存在する。その特殊な能力を『魔法』と呼ぶようになった。

 魔法は神から与えられたと言われ、全ての人類には魔力を宿っていた。


「はぁ〜こりゃ勝てん気がする」


 山々が噴火するなか、夜空と言うのに真っ赤に染まっていた。その中で9人の男女が立っていて、眼帯をした男がダルそうにしゃがんでいた。


「なんだ?やる前から諦めてるのか?」


「諦めるにも何も、暑すぎてやる気が出ないんだよ。こんな暑い環境で平気そうに出来るのは君だけだよ?」


 隣に立っていた白髪で目を隠す様に包帯を巻いていた男に対して呆れる表情を浮かべる。白髪の男は平気そうにいたが、目の前にいるのは炎を纏う最強種の不死鳥と対面していた。不死鳥から発する熱は1000度近くはある。そして眼帯の男は立ち上がる。


「まぁ、ここで駄々を捏ねても君は戦うんだろうね」


「当たり前だ。天朧てんろうが逃げるなんてないんだよ」


白髪の男は刀を抜くのだった。

 そして、年月が流れて南の世界と呼ばれる『南の界岸アウステルランド』での出来事。ある島の酒場の中で、超どデカいリュックを背負っている男がいた。


「アンちゃん、随分と重そうなの背負ってるな」


「全部、大切なもんなんでね。これがないと生きていけないんだよ」


「そうなのか。ほら、注文のレモンエールだ」


目の前に泡が溢れるほどの樽ジョッキが出される。

 男はフードを脱いで、ハニーエールを口の中に流し込んだ。


「へぇ、兄ちゃんの様な漢前がこんな田舎街になんの様だ?」


 後ろを刈り上げた汚れ一つない白髪の短髪に、その鋭い瞳の中で輝く渦の様な同心円系の様な模様。右耳には二つの金色のリングを付けていた。


「なんだ?惚れたか?」


 顎に親指と人差し指の間を当てて、目をキラッと輝かせる。


「悪いな。俺にそんな趣味はねぇ!」


「わぁ!!良い匂いがする!!」


 酒場に元気いっぱいな客が入ってきた。カウンターに走ってきて、白髪の男の隣に座る。


「大将!肉沢山!」


「はいよ」


 隣に座る女性は、赤髪のサイドテールに夕日の様な色の瞳。腰には両手剣をさしていた。そして女性の目の前に山に積まれている、骨付き肉が出される。


「ん?何?」


「いや、良い食いっぷりだなって」


パクパクと食べる女性に白髪の男はジッと見ていた。


「それにしても、嬢ちゃんもそうだが、お前ら2人ともこんな田舎島に観光する所なんてねぇぞ」


「確かに島を見た感じおっちゃんの言う通りだな、強いて何かあるとしたらこの島の唯一の店、ここの美味いハニーエールぐらいだな」


「ぐははっ!お前さんお世辞が上手いな!気に入った!サービスしてやる!」


「おお!それはありがたい」


 ハニーエールが追加された事に男は嬉しそうに笑うのだった。


「さてと、おっちゃんに聞きたい事がある」


「ん?なんだ?」


「さっき、この田舎島に来た理由を聞いたよな?俺の目的はこの島に眠る財宝があるって聞いたんだ。その居場所を知らないか?」


「...眠る財宝か」


 ずっと明るい表情だった、店主が思い詰めた表情を浮かべる。


「え?!その話、アタシにも聞かせて!この島に凄い財宝が眠っているって聞いたの!」


「へぇ、アンタも財宝狙いか?名前は?」


「アタシはリン=ウォーカー」


「そうか。俺はレイヤ=カグラザカ。よろしくね」


レイヤは手を差し出し、握手を交わすのであった。


「何、お嬢ちゃんも財宝狙いなのか?」


「うん!その財宝が魔剣かもしれないからね。普通の剣じゃ、限界があるからね」


リンは自分の腰にある、鉄の剣に触れる。


「なら、諦めるんだな。あれは剣じゃない」


「そうなのか...」


リンは分かりやすく、しょんぼりするのだった。


「小僧も、諦めるんだな。確かに価値はあるものだが、財宝と呼べる物じゃない」


「小僧って俺は二十歳だぞ...んで、この島に眠る、その何かは一体なんなんだ?」


「呪われた武器、呪具だよ」


「...」


呪具

 この世界には、魔力を使って特殊な力を引き出す魔具が存在する。呪具とは、魔力を使わずに生命を使って魔具より強力な力を引き出す呪いの道具なのだ。


「なおさら、欲しくなったね」


「はぁ?!呪具だぞ!危険な道具って知らない訳ではないだろ!」


「俺は呪具を集めてるんだよ。それが呪具って知れば、尚更引くわけにはいかねぇ」


「じゅ、呪具を集めてる?」


「ああ、俺は魔力が一切ないからね。だから、呪具を使うしかしない」


魔力がない。

 この世界の全人類には魔力を持って生まれる。魔力が少ない人間はいるが、レイヤの様に一切魔力がない人間は存在しないのだ。


「おっちゃん、その居場所を教えてくれ!」


「はぁ、死んでも俺を恨むなよ?」


「うん!大丈夫、大丈夫!俺は死なないから」


「多分、この島のど真ん中にある洞窟の中にある。でも、呪具が本当にあるかは、正直俺は知らない。そこにあるって、ガキの頃から聞かされてるだけだからな。絶対にあるとは言い切れないぞ?」


「絶対にないとはならいないだろ?調べる価値はある。よし、良いことを聞いた。ありがとな。ここのレモンエールは美味かった」


「おうよ」


レイヤは酒場を後にするのだった。


「あ!!ちょっと待って!!」


「なんだよ?ついてきたのか?」


後ろから自分を呼び止める声が聞こえる。

 後ろを振り向くと、リンが追いかけながら手を振っていた。


「ねぇ、呪具を使って大丈夫なの?」


「あ?それだけの質問のために来たのか?」


「うん!重要!なんで、呪具を集めてるの?」


「さっき言った通り、俺には魔力がない。だから、呪具を使うしかないんだ...でも、魔力はないが、何故か呪具の呪いには影響がないんだよ。


「呪いが効かない。うん、気に入った!レイヤ!アタシの仲間になってよ!」


 この物語は、魔力がないレイヤと魔剣を探すリンとの出会い、この島で出会う2人の戦士と呪いによって、今後引き寄せる大災害が降りかかるのであった。

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