第60話 手刀と根性

その頃、船を守るリンとフウカがいた。

 いつもなら、リンは自分から戦闘に立って暴れる性格な筈なのに、船を守ると自分から船に残ったのだ。フウカはリンを1人にさせるのが心配で一緒にいた。


「リンさん、一体何を待っているのですか?」


「待ってて。そろそろ来ると思うよ」


リンは、何かワクワクしながら何かを待っていた。

すると、建物の隙間から一つの人影が現れる。


「あの人は...」


現れたのはハクケンだった。


「ふむ、正解じゃったな。これがお主らの船だな」


「ふふん、お前アタシの闘気を感じて来たな?会えて嬉しいよ」


「ふむ、どうやらあの白髪の嬢ちゃんは居らんな?速やかにお主達を拘束させてやる」


「り、リンさん!な、何故あの老人が!」


「フウカ。手を出さないで。同じ剣士として、手も足も出なかった。アタシは、もう2度と負けたくない。この剣を自分のモノにするまで負けたりしない」


 リンはユリウスとの約束を果たすまで、負ける事は許さなかった。ハクケンと前回戦った時、手も足も出なかった事が悔しかったのだ。


「はぁ、あの白髪の嬢ちゃんが居らなぬなら、お主達は敵ではないぞ?」


「あの時がアタシの本気だと思ってる?あの時は目立つ行為を避けてくれと、レイヤに頼まれただけ。だから、本気を出せなかった。だから、今から本気でやろう。それに1お前を倒せば、もうこっちのもんよ」


「拙者が1番強い?それはどうかな?」


ハクケンはニヤリと笑い刀を抜いた。

リンも続いて剣を抜いて船から降りるのであった。

そして、その頃フミュウとスイリューは共にノーディと戦っていた。


「おいおい、レイヤの旦那。本当にこいつ弱いんすか?」


 フミュウとスイリューの2人がかりでも、ノーディに押されるのだった。ノーディは長いムチで、2人に攻撃をする。一撃でレイヤにやられたノーディは決して弱い訳ではなかった。単なるレイヤが強すぎただけだった、ノーディはムチでフミュウの腕を掴み、横にいるスイリューに投げ飛ばす。


「あら、今回の賊はお弱いわね?前の人をお呼びなさい」


「フハハハ!これは悔しいっすね。まさか、こんなに強いとは思わなかったっす。だから、自分!これを使いますよ!」


 背中の服の下にさしていた細い金棒を手に取りノーディに向ける。


「さぁ、やるっすよ。この自分のど根性バットでお前を叩き潰すっそ!」


「あーあ、嫌気さしちゃうわ。私、漢くさい奴嫌いなのよ。だから、ここで死んで?」


 すると、ノーディの腕がムカデの様な体の形に変わり、ムチの様にフミュウを襲う。だが、向かってくるムガデにスイリューが手刀で薙ぎ払う。


「まさか、亞人だと...まぁ、それでも私の武には到底及びません」


「あら?そう?なら、これはどうかしら?」


両手をムカデに変えて同時に襲う。

 スイリューとフミュウは抵抗するが、少しずつ押されていき、ムカデの脚のような刃が2人の体に傷をつけ始める。


「なんて、厄介な能力」


「美しくないわね?」


「美しくないですって?それはどちらかな?ムカデの方が美しくないだろ」


「そんな、やっすい挑発に引っかかると思います?」


 ノーディは2人を挟む様に両手のムカデを横に薙ぎ払う。フミュウはバットを横にして挟んでくる2つのムカデを止めた。そして、スイリューがムカデの上を駆け走りノーディ本体に攻撃を入れる。


「甘い!」


 ノーディの頭がムカデとなりスイリューに向かって伸びて、首に噛みついた。


「何をしているんすか!この大馬鹿!」


スイリューを助けようとフミュウは間合いに詰めるが、足にムカデが絡みつけそのまま宙に上がる。


「美しくないものは死になさい!」


そして思いっきり地面に叩きつける。


「このバカ!何故、私なんかを助けようとした!今のは避けられた攻撃だろ!」


「友と呼べる人だからっす!自分はお前の事は嫌いだが、心の中でかっけぇって思ってるっす。だから、助けたんすよ!」


「あら?友情?あらあらあら、美しい友情は私好きよ」


「だから、自分はお前を助けるっすよ!スイリュー!根性を見せろ!」


「誰に命令をしているんですか!!フミュウ!」


「?!」


 スイリューは自分の首に噛みついているムカデ状態のノーディの頭に掴む。本来なら牙の毒で動けないのにも関わらず、スイリューは力を込めて目を締め潰していた。


「敵に目を近づかせちゃダメですよ」


「アアアアァァ!!!やめろ!離せ!な、何故、こんな力を出せる?!!クソぉ!!あの男から食らった傷さえなければ、お前らなんかぁ!!」


ノーディはレイヤから食らった傷のせいで、自分が得意とする、攻撃して離れる戦法が使えないのだ。だから、ノーディはずっとその場に止まっていたのだ。


「根性!!!!」


 締め潰そうとする目ん玉は、ノーディにとって激痛だった。


「フミュウ!今ですよ!」


 視界を失せがられているノーディは両手のムカデを暴れさせているが、そんなのはフミュウに当たる事なく間合いを詰めた。フミュウは人間部分の体に向けてバットを思いっきり振ったのだ。


「ガハっ!」


 その痛みにノーディは口を開いて、スイリューを離してしまったのだ。そして一瞬意識が飛んだ事にノーディの獣人化が解除されて人間姿に戻る。


「岩落とし!!」


 スイリューは天高く腕を上げて、そのままノーディの頭に向けて振り下ろした。その手刀はノーディこ後頭部に直撃して地面に叩きつけられる。


「やるじゃん。手刀バカ」


「うるさいですよ。根性バカ」


「の、ノーディ様がやられた!!だ、だが、今体力を消耗している隙にやるぞ!」


「はぁはぁ、ヤバいっすね」


「そうですね」


 フミュウは思いっきり地面に叩きつけられた事と、スイリューはノーディの毒で思いの外、体を満足に動かせる事は難しかった。警備隊に囲まれた絶体絶命に2人はどう切り抜けるか考える。


「もしや、オデの事を忘れている?後はオデに任せろ。2人は回復するまで休むと良い」


タットパムは2人の前に立ち、両手には2つの岩を持っていた。


「次はオデが頑張る番!」


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