第9話 首領グラトニー

「野郎ども!男は殺せ、そして女は捕えろ!!」


「「「「「おう!!」」」」


バゴォーン!!


 次々と船から魔賊が乗り込んできたとき、ヘーストの船から大砲の音が鳴り響く。どうやら、異変に気付いた従業員達が起きて戦いに参戦しようとする。船の中から次々と武装した従業員が現れ賊と戦う。


「俺達は魔導師じゃないが、力にも自信があるぞ」


そしてヘーストも襲ってくる魔賊を薙ぎ倒す。


「無駄な足掻きを、数を見れば分かるだろ?大人しく首を差し出せ」


ヘーストの従業員は訳30人近く、だがグラトニーの兵力は10倍の300人近くはいる。戦力的に絶望的だった。


「なら、一気に減らせば良い話だ。あまりこの船を荒らさないでくれ...雷切」


「?!」


レイヤは雷神ノ怨を咥え横に手を上げる。

 手のひらから稲妻がビリリっと走り、一気に3隻を沈めるのだ。その威力と能力にグラトニーは驚くのだった。


「なんて威力の魔法だ...それに雷、特異元素か?お前魔導師か何かか?」


 この世には六大元素と言った、魔法の性質が存在する。火、水、土、風と、さらに上位な元素、闇と光が存在する。その元素に該当しない元素が存在する。それは特異元素だ。雷の性質を持った魔力も特異元素に当たる。だが、レイヤのは魔力ではなく呪力の力。


「だったら、どうする?」


「なおさら殺す」


 レイヤは手のひらの先をグラトニーに向けて小さな稲妻を走らせる。だが、グラトニーはそれを軽く避けてレイヤの間合いを詰める。


「俺は一回だけ、お前と同じ雷の性質を持った魔導師と戦ったことがある。そいつは特異元素だからって最強と言う言葉に溺れていた、俺も当時は特異元素は最強と信じていたが、戦ってみたら呆気なく殺せた。特異元素だからってなんだ?結局凡人と変わらなかったじゃねぇか」


レイヤの服を掴み地面に叩きつける。

その威力は下の階まで突き抜けた。

倒れるレイヤをグラトニーは見下す。


「特異元素を扱えるだけで怪物といい気になっている奴をへし折るのがキモチィんだよ。どうだ?本物の怪物を目の当たりにして」


「あはははッ!確かにアンタは強ぇ!驚いたよ、まさかこんなに強いとは思わなかった。だが強いだけだ、本物の怪物?なら、見せてくれよ」


「いいぞ、地獄に堕ちる前に怪物を見せてやるよ」


「それは楽しみだ」


レイヤはニヤリと笑う。

 グラトニーはレイヤの顔に目掛けて踏み潰そうとする。だが、レイヤは腕の力だけで起き上がり紙一重で避けて顔に目掛けて蹴り上げる。


「くっ、クソガキがぁ!」


「ガキじゃねぇ、成人者だ!」


この世界は18歳を超えたら成人扱いとなる。

 煽るレイヤにイラつきグラトニーはピストルの銃弾を数発放つ。

 銃弾を避けて攻撃をするが頑丈な体のグラトニーには効かない。


困ったな。俺は格闘家じゃねぇから強く殴る蹴るだけじゃ、本物の格闘家じゃ効かないよな


 ピストルを持っているが、身体の筋肉の形状や銃弾以外の攻撃手段が打撃の事からグラトニーは格闘家だと分かる。それに、能力も使えねぇな。まだ、これを扱うには加減が出来ねぇ。下手に使ってこの船を半壊してしまう。リンの旅に出るなら、船の上でも能力の扱いを覚えねぇとな...


「逃げてるだけじゃ、何も出来ねぇぞ!」


 レイヤは距離を飛びつつ策を考えていた。グラトニーは逃げるレイヤを追いかけながら打撃や銃弾で攻撃をする。


ちっ、やるしかねぇな。最小限に力を抑えろ!あの時やったみたいに...


「あっ?」


人間電死蓮慈にんげんでんしれんじ最小出力」


「あっ?」


するとレイヤの身体に雷を纏う。

それはまさに雷の化身と言えるだろう。


「ガハッ!」


 そのスピードは目で追えることは不可能に近かった。レイヤはグラトニーの身体に目掛けてパンチを入れた。

 雷を神経に流し、超人的なスピードとその威力は数十倍も上がる。そしてその能力は一つだけじゃなかった。人間電死蓮慈にんげんでんしれんじが最も恐ろしい能力は、マイクロ波を纏っていること。触れた箇所に肉体の水分と血液を沸騰させる。


「あ"!!!いでぇ!!!」


「はぁはぁ、このモードは最小限に抑えてでも、少し動いただけでこの燃費の悪さ」


 このモードはいくら呪いが効かない体質でも、呪いで身体能力を底上げしている事から、血液の流れを通常より上げ、爆発的な瞬発力を得る事から体の負担が大きい。今のレイヤに、このモードで居られる時間は10秒が限界だ。


 燃える様に熱くなる殴られた場所を抑え地面に這いつくばるグラトニー。レイヤは息を荒くして自分の部屋に入る。先程グラトニーに戦っている最中自分の部屋までに誘き寄せていたのだった。ベッドの横に立ててある大剣を持ち倒れているグラトニーの所に向かう。


「アンタ、普通に強かったぞ」


「はぁはぁ、黙れ!!俺は負けてない!俺は地獄への門島ヘヴンズドラグニアゲートから無傷で帰ってきたんだぞ!」


「無傷?それは自分の手下を囮にして逃げ帰ったと違うんじゃねぇのか?」


「あ?」


その言葉にレイヤを睨み上げる。

 その反応にレイヤはニヤリと笑う。


「いや〜これは俺の憶測だけだ。ヘーストさんは30隻近く持つ大将と言ってたのに、ここにきてる船の数は10近くしかねぇ。これはどう言う事だ?なんで、お前の手下どもはあんなにボロボロなんだ?なんでお前が乗っていた船だけ傷一つないんだ?教えてくれよ、負け犬」


「オメェは絶対に殺す!!」


「地獄で勝手にやってろ」


バシッとグラトニーの首を大剣の面の方を使って、顔面に目掛けて叩きつける。グラトニーはその威力に気絶したのだった。


「ふ〜、呪具最高。魔導師みたいにいられるよ」


レイヤは大剣を肩に担ぎ上に向かおうとする。


「あっ、そう言えばコイツ...」


グラトニーは懸賞首。

 今のレイヤ達にはお金がない事から、こいつを差し出せばお金が貰えると、嬉しい気持ちになるのだった。

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