第34話 ダイヤモンドクラブ

「うおお!!なんだ、この並べてある蟹の料理達は!」


 街のど真ん中に大きな机を並べて、沢山の種類の料理が並べてあった。レイヤはクロエを支えながら料理を見る。


「これはなんだ?」


 レイヤの目の前にあったのは、中がとうもろこしの様な黄色い粒ぎっしりと詰まった蟹が目に入った。隣にいたフウカは説明する。


「こちらは、蟹コーンですね。加熱すると」


フウカは網の上で蟹コーンを加熱する。

すると、粒が破裂してポップコーンが出来る。


「確か、これは前菜として打って付けなんですよ、食欲増進効果に優れているのですよ。どうぞ食べてみて下さい」


「どれどれ...んっ?!」


口に入れるだけで分かる喉越しの良さ。


な、なんだこれ?マシュマロ?いや、それ以上に柔らかく、喉に入れるだけで溶ける綿菓子のようだ。そ、それに...


 溶けたポップコーンから爆発するか様にコクのある香り、そして溶けかかったポップコーンを噛むと、肉汁の様なモノが溢れて出て、塩気と甘味が絶妙に絡み合ってあまりにも美味しさに手が止まらなかった。


「うめぇな!」


「ふふ、そうですよね。蟹コーンは1匹で2万Gはすると言われている無級高級食材ですからね」


「こんな高級食材、タダで食って良いのか?」


「良いんですよ。レイヤさん達はこの街の英雄なんですから」


近くにいたポトは、レイヤに飲み物を差し出す。

 ポトを含めた、街の住人達は長年オクト達に苦しめられた環境から解放させてくれたレイヤ達を心から感謝するのだ。


「ねぇねぇ!この、牛の様な食感の蟹は何?」


「あー、そちらはビーフ蟹ですね。噛むと牛肉の様に肉汁が...え?!」


「ん?どうしたの?フウカ」


 リンは蟹ビーフを待って齧り付いていた。いつの間にかいたリンにフウカは驚くのだった。3日も起きる気配がなかった、リンが何も無かったか様に食べていた。


「リン、怪我は大丈夫なのか?」


「うん!寝たら元気になったよ!」


「それは良い事だ」


「本当に匂いで釣られて起きるとは、いきなり目が覚めた時驚いたぞ」


リンの後から追ってきたハタ婆と合流する。

 ビーフ蟹をむしゃむしゃと食べるリンの腰にレイヤは見るのだった。


「リン、その剣見せてくれないか?」


「ん?良いよ!」


 ドラゴンの様な鱗の鞘に、剣身は赤黒く輝く両手剣だった。


「それにしても重いな...」


「れ、レイヤさん!それって龍剣ヴィクトリエじゃないですか!世界で26本ある二級業物の一つ龍剣ヴィクトリエですよ!ドラゴンの素材で使った両手剣で、別名ドラゴン殺しの剣と言われているんですよ!」


「ぽ、ポト?なんかテンション高くねぇか?」


「ポトは武器オタクだからな」


 ユリウスから貰った剣を見たポトのテンションが格段と上がるのだった。そして、ポトは手を震わせながらレイヤの腰にある刀を指で指す。


「先程から気になっていましたが、その刀って...もしかして阿修羅刀陣丸ですか?!刃長は76.5センチ、刃は乱れ刃鋸刃!その技術は真似る事が出来なく、刃が人の眼球では見えないノコギリ状になっていて、肉の油を斬る事からその油が染みつき発火すると言われている。斬れば斬るほど炎の威力が上がり、最後は持ち手ですら焼き殺してしまう妖刀。世界でたった8本しかない特級業物の一つですよね?!ここ数年姿を見ない事から海の底に沈んだと言われていたのですよ!まさか、特級業物をお目にかかるとは思わなかった!よく見せてもらうと嬉しいです!」


「お、おう。べ、別に構わないけど、触るなよ?下手したら呪われちまうからな」


「呪い?よく分かりませんが、分かりました!」


 よく喋る様になったポトに、レイヤは少し戸惑うが刀を近くに見せるのだった。

 ポトが言う特級業物や一級業物は、この世界の剣や刀(槍や斧等)の階級を表すランクは階級業物と呼ばれ、特級業物8本、一級業物15本、二級業物26本、三級業物51本、四級業物の5種類に分類され、どれにも属さない武器は業物なしとなる。

 

そして、阿修羅刀陣丸は業物に認定されているが、それを呪具だと知っている者は少ない。


「今宵は、この街を守った英雄達を祝福して宴を開催するぞ!!」


「「「「「おー!!!」」」


 ポトの掛け声に街のみんなは、街中に響くぐらいの笑い声が広がる。


「レイヤさん!いよいよ今日の宴のメインディッシュが来ましたよ!」


ポトはレイヤ達をある机に案内される、するとハタ婆が一つの蒸し器を持っていき、レイヤ達の前で蓋を開けた。中に入っていたのは綺麗に輝く蟹だった。


「こ、これは!」


それを見たフウカは目を大きく見開くのだ。


「第一級高級食材のダイヤモンドクラブ...一杯、6000万Gです」


「マジか!オクトより高いじゃねぇか!」


その額を聞いたレイヤは驚くのだ。

 レイヤ達は蟹の脚を取り、その身を口の中に入れる。すると、口の中に広がる深い味が爆発するか様に広がるのだ。


「なんだ、これは!プリプリで弾力のある身、プチプチとした食感が良い!噛むと瑞々しさとともに濃厚な旨味、甘味が口一杯に広がってる!」


「まだ、終わらんぞ。この蟹味噌を使うのだ」


ハタ婆はダイヤモンドクラブの蟹味噌を出す。

蟹の身を蟹味噌につけて、口の中に運ぶ。


「濃厚な旨味とほのかな苦味が甘みのある身と一体化した事で、贅沢な味へと変貌した。これはたまらねぇ!」


 御満身になるレイヤはダイヤモンドクラブを美味しく味わうのだ。それから、宴はまだまだ続き朝日が登る。レイヤ達は修理されていた船の中に登る。


「もう行くのか?まだ、滞在しても良いんだぞ?」


「いや、もう行くよ。結構楽しめたし、御目当ての蟹も食えた」


それに、クロエも何か急いでいるし...


「それで、本当に全部貰って良いのか?これはアンタらも貰う資格はあるぞ?」


「いいんだ。オクト魔賊団を倒したのはお前達だ、それを受け取るのはお前達の方が相応しい」


「...そうか。なら、有り難く貰うぜ」


オクト魔賊団の懸賞金が入った袋を受け取る。

 そして船は海の向こうへ動き出し、ハタ婆やポト、街の住人達は大きく手を振るのだ。


「ねぇねぇ、クロエ!アタシ達の仲間になってよ!」


「...ごめん。ボクにはやる事がある。だから、リンの誘いは応じられない。誘ってくれるのは、本当に嬉しいけど...ごめん」


「なら、みんなで解決すればいいじゃねぇか。クロエが本当に俺達と旅したいなら、俺達も手伝うぞ。クロエの目的はなんだ?」


「お金集め」


「ふーん、クロエ。次のアテはあるのか?」


「...まだ、一億ちょい足りない...まだ、沢山集めないと...だから、お金が貯まる場所」


「1億ちょいか...この近くの島で高い懸賞首いるかな?」


「あっ!そう言えばポトさんから聞いたのですが、東の界岸オリエンスランドで年に一度開く拳王大会の賞金が1億だと言っていました」


「大会か...確かに一度で大金が入るけど、大会には世界の猛者も集まるから大喰らいを捕まえるより難しい...」


クロエは良い考えだと思ったが、世界中に集まる強い人間達がいる事で、難しいと判断する。

レイヤはフウカが言っていた言葉を考えるのだ。


「東...拳王大会...いや、良いんじゃねぇか?」


レイヤはニヤリと笑う。


「多分アイツがいる。その大会に出よう!必ず優勝をしてみるさ!」


「まぁ...レイヤが言うならば...まぁ、丁度東に用があるし」


レイヤの宣言で、クロエは信じる事にして、次の目的は東のグルメ界岸となった。


「よし!レイヤが言う東に出発進行!」


レイヤ達は東の世界に進むのであった。

 そして、レイヤは遠くにあるコップを手から伸びる黒いモノで取ったのだ。


「この力の使い方は、記憶の中に刻まれている。少しずつ俺のモノにするぞ」


レイヤはコップの中身を飲むのであった。





南の界岸編・完

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