第33話 蟹の楽園での宴準備

「...うう?」


レイヤは目を覚ますの、そこは知らない天井だった。起き上がると全身痛みが走る。


「イテっ!」


「れ、レイヤさん!あまり、動かないで下さい!」


 レイヤが起きた事に気づいたフウカはすぐに駆けつけて、レイヤの身体を支えるのだ。


「街の人から聞きましたよ、この島に三王剣豪の1人、黒騎士と戦ったそうじゃないですか。本当、無茶しちゃって、本当に心配しましたよ!」


フウカは目元を見れば分かる、どれほど心配したのか、どれほど泣いたのか、目元が赤くなって辛そうな表情をしていた。


「心配させてすまないな」


「本当ですよ!」


フウカは涙を流しながらレイヤに抱きつくのだ。

悪い事したなっとフウカの頭を撫でるのであった。


「そういえば、リンとクロエは?」


「ボクならここにいるよ」


杖をついているクロエが部屋の中に入ってきた、クロエはレイヤが眠っていたベッドに座り込む。


「なんか辛そうだな」


「今まで我慢してきた傷が、あのハゲの衝撃で酷くなった...マジ、最悪」


「無理するからだ」


「それはお互い様」


クロエは疲れきったのか、ベッドの上で寝転がり、レイヤの膝を枕にする。


「ボクを助けてくれて、ありがとう」


「それが、人に感謝するときの体勢か?」


「細かい事は気にしない...」


「...なんか懐いた猫みたいですね」


 いつの間にか距離が縮まった2人を見て、フウカは苦笑いするのだった。


「それで、リンは?」


「あの娘ならまだ寝ておる」


リンの容体を尋ねると、ハタ婆が部屋の中に入ってきて、代わりに説明するのだった。


「この3日、お主達の治療を専念したからのう、命には別状がない。感謝するのはそこの娘だ」


ハタ婆はフウカの方を見るのだった。


「あまり寝らず、食事すらまともに取らず、お前達の看病をしていたからな」


「そうだったのか。ありがとうなフウカ」


「...へへ、感謝して下さい」


レイヤはフウカの頭を撫でるのだ。

 フウカは気持ち良さそうに笑うのだった。


「...ん?3日?待てよ?俺達は何日寝てたんだ?」


「ボクは昨日の昼に目を覚ました」


「レイヤさんとリンさんは、この3日間寝ていたのですよ」


「ええ、マジか」


「ここまでの容体の患者を看病したのは久しぶりだ...まぁ、そんな事より、この街を救ってくれてありがとう!」


ハタ婆は深く頭を下げるのであった。


「婆さん、俺らはしたくてやっただけだ、頭を上げてくれ」


「いや、これだけは譲れない。本来なら私達、街の住人がなんとか解決するべきだったんだ。本当にありがとう。お前達に返しきれない恩がある!何か足しにはならんと思うが、少しでも良いが恩返しさせてくれ!」


「...なら、最初に言った通り、この街で1番美味しい、蟹料理コースを食いたい!」


「そうかそうか!私が出来る最大の恩返しはお前達に最高の料理を振る舞う事だ!今から宴の準備だ!...って言いたい所だが」


ハタ婆は深刻そうな顔に変わる。


「あの娘...リンは目が覚める気配がしないのだ。怪我とかはある程度治っておるのに、起きる気配が見えてこないのだ」


「...なら、宴の準備しないとな」


「え?」


「だって、俺達は3日間も寝ていたんだろう?なら、まともに食わず腹を空かしている筈だ。料理の匂いを嗅いだら、リンは起きるぞ」


「ふふ、そうですね。リンさんは私達の中で食いしん坊ですから。ハタさん、私もお手伝いします!今日は宴を開きましょう!」


「そ、そうか。お前達が言うなら、今からポトを呼んで、街のみんなに伝えるぞ」


「おう!今日は大きな宴を開こう!」


 ハタ婆達は今日の宴の為にフウカと共に料理を作るのだった。そして、その間クロエからオクト達の事を聞いた。

 どうやら、オクト達とグルだった魔導師ではなく、ユリウスが信頼できる魔導師に連絡し、その関係者がこの島に上陸し、オクト魔賊団を拘束して引き取ったのだ。街の住人達からの証言で、オクト達とグルだった魔導師達に然るべき罰を与えると、また今度連絡すると帰って行った。


「あの、黒騎士にデカイ恩を作っちまったな」


 レイヤ達が気絶している間、ユリウスはオクト魔賊団達が逃げない様に、特製の拘束具で拘束してくれていた。ユリウスはこの街1番美味い酒を提供してくれた恩と言って、助けてくれたそうだ。


「てか、アイツって魔賊じゃないんだ...」


「黒騎士は特例ですね。あの人は確か親が魔賊であって、黒騎士本人はなんも罪がないのですよ。魔賊の親の船に育って気付いたら三王剣豪と呼ばれる様になったのですよ。ですが、政府側も黒騎士が悪い事をしていないと調べがついて、黒騎士の親の魔賊団が拘束された時、取引として魔導師の傭兵になったら、捕まえる事はしないと約束したのです。まぁ、簡単に言えば世界政府によって公認された魔賊と言えば良いのでしょうかね?」


「あの見た目で傭兵なのか...雇った奴の安心感ハンパねぇんだろうな」


 レイヤはユリウスと戦って、奴の実力を痛感されるのだった。すると、なんか外が騒がしいと窓を開けると外から入ってくる香ばしい匂いで、腹の音が鳴るのだった。


「レイヤさん!準備が出来ましまよ!街の皆さんがレイヤさん達にお礼がしたいと、色々な料理を持ってきたそうです!」


 ポトが、窓から覗くレイヤ達に大きく手を振るのであった。

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