第3話 魔導師

「でも、中心にあるって事しか知らないけど。見つかるのかな?てか、本当にあるのかな?」


「あるよ。断言する。この島に呪いはある。結構強力な呪いがね」


「何で分かるの?」


「呪いってのは、魔具と違って意思みたいなのがあるんだよ。呪具は何発か使うと死に至るって言われてるだろ?なら、2つの呪具を同時に使ったらどうなるかは知ってるだろ?」


「確か、その呪いに耐え切れなくなって爆発するんだよね?」


「そうだ。正確には体内にある魔力が流れる器官、魔道回路が暴走状態になり、魔力が爆発しちゃうんだ」


「へぇー...それって呪いがあるのと何が関係するの?」


「呪いは、他の呪いを嫌う。が反応してるんだ。普通の呪具なら、感知出来ないけど。この島に入ってから、ずっと警告音みたいなのが鳴り響いてるんだよ。最初はこんな田舎島にないだろうと思って、やって来たが。とんだ大物が釣れたよ。俺が持つ呪具の中で、上位にくる呪いだ」


「ふーん、よく分かんない」


「あははは!まぁ、結論だけ言えば絶対にあるよ。無駄な時間ではない」


「レイヤが言うなら、絶対にあるんだね」


「ブホッ!」


「お?イノシシじゃん!」


 レイヤ達が森の中を歩いていると、1匹のイノシシと鉢合わせるのだった。


「美味しそう...」


「アンタ、食ったばかりだろ?」


「お腹空いた!あれ食おう!」


「はいはい。ちょっと待ってろ、今から狩る」


レイヤはバックを地面に置き、中を漁るのだった。


「何それ」


魄啜弓はくていゆみ。術者の命を使い強力な炎の矢を生成する。最小限の威力でイノシシを殺る」


 レイヤは弓の弦を引くと、そこに赤い蝶々が集まり矢が出来上がる。そして、レイヤはイノシシに向かって放つのだ。見事に命中して、イノシシはその場で倒れるのだった。そして、すぐにイノシシに刺さっている矢を抜いた。


「イノシシに、そんな呪い使っても良いの?」


「大丈夫だ。俺に呪いの類は効かない。俺が使うなら、この弓はただ矢を作るだけの強力な弓に過ぎねぇ」


「本当に呪いが効かないんだ。なんで?」


「さぁな。それは俺も知らない。何故か呪いが効かない体質なんだ」


「ふーん」


「まぁ、飯にしよう!」


 レイヤはイノシシを解体して、火に炙って2人で食べるのだった。


「せめて、塩胡椒が欲しい」


「分かる。肉だけだと、なんかね...ちょっと、獣臭いし」


「悪い。俺料理、そうも上手くないんだ。我慢してくれ」


「あら、こんな所でキャンプですか?」


匂いで釣られたのか、黒髪の女性が現れる。

その服装は白い軍服の様なものだった。


「おっと、すみません。私はフウカ=ナーベです。もし良ければお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「俺はレイヤ=カグラザカだ」


「アタシ、リンだよ!」


「レイヤさん、リンさんですね。2人に尋ねないのですが、こんな所で何をしているのですか?」


「お宝探し!呪具があるから、それを手に入れようと来たの!」


「呪具をですか?呪具を所持してる事は犯罪って事は知っていますよね?」


「うん!どうせ、アタシ達魔賊だし、関係ない」


「なるほど。魔賊なんですね」


「あ...リン、その服装なんか見た事あるなって思ったら、そいつら魔導師だ」


「へ?魔導師って、魔賊を捕まえる人達?」


「ああ、そうだ」


レイヤはペラペラと喋ってしまったリンに、あちゃーっと頭を抱えるのだった。


「見逃してくれる事はない?」


「ありませんね。目の前に犯罪者がいるならば、拘束するしかありません」


「だよね...逃げるぞ!リン!」


「うん!ごめん!」


レイヤはバックを持ってリンと逃げるのだった。


「逃しません!」


「わぁ〜!魔導師に追いかけられている!!これぞ魔賊って感じ!!」


「言ってる場合か!えっと、これでもない、あれでもない、あった!!」


 レイヤはバックの中から木箱を取り出して、その中にあった煙管を取り出す。


夢幻煙世むげんえんよう


レイヤは煙管の煙を吸い、口から吐くのだった。

 すると、森中が煙に覆われる。レイヤ達の姿が見えなくなる。


「レイヤ、これは!」


「夢幻煙世。こいつの煙は、周りを覆って相手の視界を奪う」


「呪いの効果は?」


「いや、これはまだ呪いの効果を発動する程の能力を使ってない。この煙を充満させる事が抜刀した状態なんだ。まぁ、強いて面倒なのは、自分の視界まで見えなくなる。これは呪いじゃないから、俺も見えなくなるのが難点だ」


「えぇぇ」


「...天武強式てんぶきょうしき心羅耳しんらじ


 フウカは周りが見えなければ耳を研ぎ澄ませれば良いと考える。そして音がする方に一直線でレイヤ達の方は向かった。


「「ん?」」


 フウカの蹴りに気付いた2人は、バックステップで避けるのであった。


「ああ!!めんどくさい!!」


 リンは追いかけてくるフウカに嫌気を刺したのか、見えないことから地面に向かって剣を叩きつける。すると剣から炎が現れて爆発したのだ。


「おい!リン!!何考えてるんだ!」


「煙がうっとしい!!」


「本当、騒がしい人達ですね!...うぇっ?!」


「あっ?!」


「へっ?!」


フウカ、レイヤ、リンは驚くのだった。

 何故ならば、下勢いよく落ちたのだ。どうなら、リンが攻撃した所は、空洞で地面を叩き割った事に穴が開き落下してしまったのだ。


クソ、このままじゃ地面に激突する。俺は大丈夫だが、2人がやべぇ!


「ちっ、雷神ノ怨らいじんのおんを使うか!」


 レイヤは首にあるネックレスに触れて、先についている黄金の棒状の宝石を加える。


「雷装!!」


ビリリッ!ビリリ!!


 レイヤの足に雷の鎧を纏い、2人を抱えて宙を飛ぶのだ。そしてゆっくりと地面に着陸するのだった。


「っぶね!」


「...なんで、助けたのですか?私は魔導師ですよ?」


「あ?魔賊だからって人を助けちゃダメか?」


「でも、私は魔導師です。貴方達が魔導師の私を助けるメリットが...」


「だから、俺は魔導師が嫌いんなんだよ。メリットなんて関係ねぇ。お前ら魔導師は人を助ける仕事だ。でも、全員とは言わないが、それは義務でやってる奴らが多い、だから間違った正義を背負う奴がいるんだ。でも、魔賊の人助けは自由だ。助けたい者を助ける。魔賊でも、正義の味方になっちゃいけねぇか?」


「自由に人助けをする...」


「...どうやらアンタ、魔導師に向いてねぇ様だな。正義に憧れてるなら、義務でやる正義より、自由な正義の方がアンタにお似合いだぞ」


レイヤはフウカとリンを地面に下ろした。


「れ、レイヤ!!上!」


「あ?...あっ」


 リンの言葉に上を向くと、そこには大きな岩が落ちて行くのだった。すぐに避けようとするが、フウカが立ち上がり岩を打撃で砕け割ったのだ。


「あれ?俺らは魔賊だぞ?俺らを助けていいのか?魔導師さんよ」


「どうやら、貴方達は根っから悪い人には見えません。だから、助けたのですよ。これは魔導師としてではなく私の意思です」


これが、フウカとの出会いなのだ。

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