第4話 呪具

「それで、ここは何でしょうか?」


 フウカは大きな洞窟の中をキョロキョロと見渡していた。


「呪具はここで眠ってる」


「え?そうなんですか?何故分かるのです?」


「レイヤはね。呪具の居場所がある程度分からんだ」


「へぇ、便利なものですね」


「呪具限定だがな。俺の様に呪具を目的しない人間ならいらない能力だろ?」


呪具は呪われた道具。

 下手をしたら自分の命まで失ってしまう事から、呪具を自分から使う人間はいない。それは自殺と致しい事だからだ。


「魔導師としてなら、必要な人材になり得ますよ。その様な者がいれば、特別待遇を受けられると思いますよ?」


「へぇ、それは魅力的な言葉だ...でも、もうちょっと早く聞きたかった事だな。今の俺を手放す気がない子がいるからね」


「ん?レイヤは絶対にアタシの仲間にさせるよ?魔導師なんてさせないから」


「わぁってるよ。それに、俺は魔導師が嫌いだ」


「それは良かった」


リンは嬉しそうに笑うのだった。

そして、レイヤは呪いの力が強い場所に向かう。


「ここに強力な呪具がある」


「こんな島の下に、こんな扉があるのですね」


「すっごい!!なんか、お城みたい!!」


目の前にあるのは大きな扉だった。

レイヤはその扉を触れて押す。


「おお、意外と軽いぞ」


扉が開いた事に、レイヤは部屋の中に入る。

部屋の中心にあるのは、手のひらサイズの黒い球だった。


「何これ?武器?」


「これはどう言った呪具なんでしょうか?」


「これは...体内に埋め込む系の呪具か?」


「そんな呪具があるのですか?」


「ああ、結構レアだぞ。ほれ、こんな感じの呪具」


レイヤは右腕の袖を上げる。

右腕には黒色の模様が広がっている。


「これは呪印って言って、ある民族が使う呪いなんだ。この呪印も体内に埋め込む系の呪具なんだ。まぁ、俺とその戦闘民族以外の人間が、その呪具を体内に刻むだけで死ぬけどな」


「なるほど。なら、どうやって体内に埋め込むのですか?」


「簡単だ。この呪印は、ある呪いのインクで刻むのだが、多分これは普通に飲み込めばいい」


 レイヤはその黒い球を手に取り、口の中に入れて飲み込んだ。


「レイヤさん?!そんな、簡単に飲み込んでいいのですか?!呪いとか、大丈夫なんですか!」


「俺に呪いの効果は効かないよ...?!」


ドクンッ!


 それは自分の心臓を、何者かが締め潰す様な苦痛が走る。レイヤは思わず胸を押さえて、その場で崩れ落ちるのだ。


「レイヤ!!」


リンは慌ててレイヤに駆け寄る。

フウカも少し心配な顔でレイヤを支えるのだ。


『フハハハ!ようやく俺様の器になる人間を見つけたぞ!!この俺様の呪いを耐えきれる人間を見つけたぞ!』


レイヤの頭の中に、男の様な声が響くのだった。


...喋った?喋る呪いは初めてだ...


『あ?魔力がねぇ?なるほど、お前だな?どうりで、俺の呪いが効かない訳だ。まぁ、魔力がなくても構わない。それ以上に悪魔憑きは強力だ。好都合だ』


「黙れ。俺を乗っ取ろうとしてるのか?ふざけるなよ」


『あ?この俺様に口答えするのか?悪魔憑きとは言え、俺の本気の呪いを見せてやる』


すると、レイヤの全身に激痛が走る。

内臓を潰される痛みや、燃やされる痛みが走る。


『どうだ?!耐え切れないだろう!』


「...お、俺を支配しようとしてるのか?!」


すると、レイヤの呪印が顔にまで伸びるのだった。


『な、なんだ、この精神力は!?な、何故...』


そして声が途切れると、レイヤに走る激痛も止む。


「はぁはぁ、これでお前の呪いは俺のものだ」


「レイヤ!!大丈夫?!」


「ああ、支配しようとした所を返り討ちにした。この呪具は完全に俺のものになった」


全身までに広がった呪印は元通りになり。


「凄い。本当に呪いに耐え切った。こんな人間、初めて」


「にししし、これがアタシの副魔長よ」


リンは自分のかの様に、嬉しそうに笑うのだ。


「そうだな」


「...え?!」


「何驚いてるんだよ?俺はお前の副魔長なんだろ?なぁ、魔長さんよ」


「れ、レイヤが仲間になってくれた!!」


「正直、最初から認めてたんだよ。ただ、困るリンを見たかっただけだ」


「むぅー!レイヤの意地悪!!」


 レイヤはリンの下につかないと、ずっと言いつけて困るリンを楽しんでいたのだった。種明かしをするのは、呪いをゲットしてからだと考えていた。

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