第40話 レイジー

「それではDチームのバトルロワイヤルを開始する!」


 開始の宣言が鳴り響いたと同時に、参加者達は一斉に動く。だが、動かなかったのは闘技場で立った2人、それはレイヤとガルドーザ。2人は視線を合わせていた。


「(なるほど。この男強者つわものだな。少し残念なのが拳闘士ではなく本業が剣士、我のライバルとするなら拳を極め合う同士不甲斐ない、もし、此奴が拳闘士として道を進めていたらなかなかの人材になっていた所だった)」


ガルドーザはレイヤの筋肉のつき方を見て、一瞬で剣士だと分かる。


「名の知らぬ武人よ。汝の名を聞かせてくれないか?」


「レイジー。それでアンタは?まさか、俺だけ名乗らせる気じゃないよな」


レイヤはガルドーザに警戒をする。


「我はガルドーザ=ギュラガラベロトベル。汝とは本気の一対一を申し込む」


「本気...そりゃ、本気じゃないと無理そうだな」


俺の格闘なんてたかが知れてるし、本物に勝つのは難しい...


「だが、多分アンタの期待には応えられないと思うぞ?」


「なるほどそうであったな。お主は剣士であったな。気付いていたのに気づかえ出来ず申し訳ない」


「へぇ、気付いていたんだ」


「ふむ、我の仲間に剣士がいてな、その肉のつき方が似ていたのだ。なら、此方もハンデをしないとな。剣士に剣がないと同等なハンデ...よし、我は拳を封印しよう。普段、足技など使わぬが、お主相手に足技だけで戦おう。ハンデとして張り合うだろ?それとも右脚だけにしとくか?」


「いや、良い。それ以上のハンデは俺を舐めてるにしか思えねぇ」


「...それはすまない事をした。決して汝を舐めている行為はしていない」


なるほど、こいつは重症な戦闘バカか。自分の行為が相手を侮辱しているのか無自覚でやってる...


「それでは、こちらから参るぞ!」


 ガルドーザは一瞬でレイヤの目の前に飛び込み、レイヤの身体に向かって蹴りを入れる。だが、ガルドーザは気付いていた、自分の動きを捉えているのにも関わらず、レイヤは避けようとしなかった。


バンッ!!


 その音は人の蹴りでは出せない、大砲の音と同等なモノ。ガルドーザの蹴りはレイヤの腹に激突した。


「レイジーよ、なぜ避けなかった?」


「そりゃ、アンタが全ての試合を1発KOで終わらせてるんだろ?そんな奴の記録を潰してみたかった。残念なのが本気のパンチじゃないって事だがな...」


まぁ、それでもこいつの蹴り...全然本気じゃなかったな。俺の骨が粉々折れない程度に加減してやがる。ヒビだけで済んでやがる


「...ふっ、フハハハハ!レイジー!汝は面白いな!それだけの為に我の蹴りをわざと受けたのか!レイジーどうだ?我と武の高みを極めないか?お主には拳闘士としての才能がある!」


「悪いね。俺には旅する仲間がいるだ。アンタの誘いは応じられない」


「それは残念だ!なら、レイジー!汝の攻撃を見せてみろ!」


「本物のアンタには退屈だと思うがな」


レイヤは拳を構えて棒立ちのガルドーザに踏み込む。


俺のパンチなんて、アンタにとって意味ないかもな...ここはちょっとズルをさせて貰うぞ。


レイヤは雷神ノ怨を咥える。

 レイヤは完全に集中モードに入り、ほんの一瞬で筋肉の繊維、骨に影を纏わせ強度を上げ、そして血液に雷を通した。本来なら戦いの最中で出来ない芸当だが、ガルドーザはレイヤの攻撃を待っていた事に準備させてくれる機会を与えた事に成功させた。


「こい!レイジー!!」


その威力は強い拳闘士でさえ出せない威力。レイヤのパンチはガルドーザの顔面に激突した。その衝撃波だけでもガルドーザの後ろの観客席にさえ吹き飛びそうな威力。


「イテッ...」


その威力本人でさえ耐えきれなく、レイヤの拳が傷だらけになり血をポタポタと流す


「フハハハハ!いきなりの顔とはお主容赦ないの様だな!いや、それより最高な一撃じゃないか!この我の兜にヒビを与えるなんて」


「おいおい、こちとらお前を場外から飛ばす勢いでやったつもりなんだがな...」


それに、反則したのにも関わらず、一歩も動かせなかった...いや、呪いだから反則じゃないか?


本来なら大会で魔法を使う事は禁止されている。

 だが、レイヤが使ったのは呪い、なら反則じゃないと考えるが、実際は呪いだが魔力感知もされなくバレていないが反則である。


 倒す覚悟で放ったパンチをガルドーザの右目の部分の兜に亀裂が入る程度で済んでいた事にレイヤは悔しかった。


「あっ!やべっ、闘技場に4人まで勝ち抜きました!よってこのDチームのバトルロワイヤルをここで終了!!」


 レイヤとガルドーザの戦いに釘付けだった司会者はいつの間にかレイヤとガルドーザ含め4人になっていた事に気付いてなかった。

 もう試合が終わった事にガルドーザは残念そうな空気を放つ。


「ここからだと思ったのにな...まぁ、良い。汝とはまた本気で戦えるであろう。楽しかったぞ。レイジーから与えられたこの一撃の傷は、記念としてとっといてやろう」


ガルドーザは闘技場から降りてどこか行ってしまった。レイヤはガルドーザと戦った感想を心の中で嘆くのだった。


あんな化け物...ヤベェな優勝できるか?あんなの居るとは思わなかったぞ...


「てか、防具を傷物にしたのに記念としてとっとくって...分かった趣味してんな」


レイヤは応援をしてくれるクロエを見て、頑張って優勝する事を決意するのであった。

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