第65話 レクタール家

「れ、レイヤ君!く、クロエちゃんを1人にしちゃって良いのかな?...ですかね?」


「ん?まぁ、大丈夫だろ。それに、今のクロエに俺の声なんて届かない。スッキリするまで好きにやらせれば良い。あのパンダ頭野郎にどれほどの恨みがあるかは知らないが...人の復讐を邪魔出来ないからな」


 時を少し遡り、レイヤとシャーロットは廊下を走っていた。レイヤは後ろに付いてきているシャーロットに少し視線を移した。


それにしても、少し早めのスピードで走っているが、普通についてこられてるな...シャロと初めて出会った、違和感...気のせいじゃないな。シャロは普通に強い。


「で、でも、どこに行けば良いのでしょうか?く、クロエちゃんのお父様やお母様がどこに捕まってるか...分かりませんし」


「まぁ、それは誰かを捕まえて居場所を吐いてもらうしかないけどな」


「す、少し気になっていたけど...いますけど。な、何故城の中なんですか?ふ、普通、罪人を牢獄する所に居るんじゃないでしょうか?」


「そいつらを人質にクロエを脅しているんだぞ?流石に普通の牢屋に隔離はさせないだろ。少しは特別扱いはさせている。なら、そいつらはどこに隠すと思うか?それは市民達に見られないいつでも会える場所。なら、この城のどこかにいる。もしかは隠し通路の先とかかな?まぁ、あの国王が何も考えてなくて、ただ普通の牢獄にぶち込んでいたら、今の行動とが全て無駄になるがな」


「か、隠し通路...わ、私、少し気になる場所があります!」


シャーロットは少し考え、ある場所が頭によぎる。

 それは、リンが違和感を覚えて額縁をぶった斬った場所だった。斬られた筈の額縁は新しく変えられていた。レイヤは額縁を外すと、そこには入り口があった。


「いやいや、まさかこんな人が多く通りそうな所に、堂々とこんな場所に隠し部屋を作るなんて、趣味が悪りぃな。こりゃ、見つけずらいぞ。これはあの国王が考えた訳じゃねぇな。裏に誰かがいる...クロエが話した中で出てきた前国王かな?」


 レイヤ達は入り口の中に入り、横にあった松明を取り階段を降りた。そして、徐々に明るくなっていき、ある空間に出たのだ。


「遅いぞ!私達は腹が減っている!早く飯を持っていかんか!」


「...」


 到底、檻の中に捕まっている人の態度ではなかった。檻の中にいたのは男1人と女1人だった。2人ともクロエの様に黒曜の様に黒い髪をしている。


「ん?今日は良い面の兄ちゃんだな。一発、ぶん殴らせろ」


「...シャロ、多分コイツらは別人だ。他を当たろう」


「おいおい、待て待て!飯は?え?お前ら、もしかしてここの兵士とかじゃねぇのか?確かによく見れば、服装は違うし...」


「悪いな、オッサン。俺らは忙しいんだ」


「忙しい?そう言えば上が、なんか騒がしいが、なんかあるのか?」


「ああ、俺達は魔賊。国堕としをしている最中だ。この城のどこかに捕まっている、レクタール家の関係者を探している」


「ああ?レクタール家か?なら、俺が関係者だ」


「何?!本当か!」


レイヤは驚き檻を強く掴んだ。


「てか、関係者より。私はレクタール家の現当主マグナ=レクタールだ。そして、横にいるのは、私の妻クロナ=レクタール」


「どうも」


クロナはレイヤ達にペコリとお辞儀をする。


「それで、兄ちゃんは私達に何の様だ?」


マジかよ!元王族の貴族って聞いたから、こんなムキムキなオッサンだとは思わなかったぞ!


「俺達はクロエの仲間だ。ここに捕まっているアンタ達とこの国を自由にしたい彼女の願いを叶えに来た」


 レイヤはドクちゃんの口の中から天叢雲剣を抜いて、檻をぶった斬るのだった。


「クロエ?詳しく話してみろ」


レイヤは簡易に今の事情を2人に話した。

 マグナは頭を抱えてため息を吐くのだった。


「はぁー、私達の為に、わざわざこんな国に戻ってきたのか。バカだな」


「アンタらを助けに来たんだぞ。その言い方はないだろ?」

 

レイヤはマグナを睨みつける。


「なるほど。クロエの事を大切に思っているって分かった。すまないすまない。そもそも私達に助けなんぞ必要ないぞ?私達はつよい」


 するとマグナは自分の手首にある手錠を力でぶち破った。隣にいたクロナも、魔法で手錠を切ったのだ。


「レクタールが黙って捕まっていると思うか?今回、パンダが裏で、バカマクラの闇取引の資料を集めてたからな。私達は黙って捕まっていた。逃げられるなんぞ、いつでも可能だ」


「あ?パンダ?パンダって、あのムキムキした変態か?」


「ああ、そうだが?」


「待って。そのパンダってアンタ達の仲間なのか?」


「そうだが?」


「それはマズイ!そのパンダをクロエが殺そうとしてる!」


「あ?クロエに負ける程パンダは弱くな...いや、待てよ。アイツならクロエが望む事なら、平気で首を差し出すかもな...アイツは私達が安全だと知っていても、クロエを裏切った事を深く罪悪感を覚えていたからな」


「早く言え!」


 レイヤは雷神ノ怨を口に咥えて、超スピードでクロエの方は向かった。もし、あのパンダがクロエの事を裏切っていなく、クロエが勘違いで間違えて殺してしまえば、クロエ自信を責めるかも知らない。


間に合え!!


 そして目の前にいたのは、パンダを殺そうとするクロエ。クロエの目は悲しさの復讐の目をしていた。

レイヤは大剣でクロエの魔法を打ち消したのだ。


「何考えてるんだ?全員、助けるんじゃねぇのか?」


この復讐だけは認めねぇ。この復讐は誰も幸せにならないんだ。

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