第62話 立ち上がる理由

「ほーう、まだ立ち上がるか。流石拳王って所か?」


「はぁはぁ。いや、やるねぇ。ちょっと驚いちゃったよ...」


「いやはや、こちらも驚いている。まさか、俺が憧れていた拳王が、こんなに弱い事に...いや、こんなに俺が強いことに驚いているさ」


「それは悪いことしちゃった。なら、ファンサしないとな」


タラタキはシラヌに踏み込み蹴りを入れる。

だが、シラヌは体勢を後ろに下げて蹴りを避けた。

そして、反撃にタラタキの体に蹴りを飛ばす。


「やはり、すぐにやられない所は褒めてやる」


「偉そうに。何様のつもりだよ」


「魔導師でもあり、貴族の家系でもある」


「なるほど。偉そうにしている理由が分かったよ!」


 タラタキは拳を、シラヌに打撃を繰り広げるが避けられてしまう。避けられたその打撃の威力は建物の屋根のレンガを風圧だけで飛ばした。

大ぶりに腕を振った事に、一瞬の隙を突いてシラヌはタラタキの体にパンチを入れる。


「もう、いいか?タラタキ、悪あがきは辞めろ。一応、俺もお前のファンでもあった。あまり、お前に対する尊敬を崩させたくないんだ。もう、諦めて、コイツは俺に任せろ」


「...うるせぇ。コイツは俺がやる」


 トルカから心配はされる。だが、タラタキは立ち上がりシラヌに踏み入れる。


「何故、勝てない相手と知りながら向かってくる?」


「負けたくないからだ。俺は負けられないんだよ!」


 タラタキの攻撃を避けるシラヌは、タラタキの首を鷲掴みにして地面に叩きつける。


「やっと終わったか?んじゃ、次は俺とやろうか?」


「トルカ!!ふざけた真似をするな」


「まだ、立ち上がるのか?」


「はぁはぁ、当たり前だ。俺は負けられないもんを背負っているからな」


『えっと?何故、俺なんだ?』


タラタキは一年半前の出来事を思い出す。

 そこに居たのは、目に包帯を巻いているレイヤは片手に酒を持ってタラタキの隣に座り相談を受けていた。


「えっと、まずおかしい所は、何故レイヤが消えるんだ?」


「アハハハ、言葉のあやだよ。もしもの話だ。もし、俺が突然と消える事があったら、天朧はお前に任せていいか?二代目」


「はぁ、まぁそのもしもの話が合ったとしよう。何故、俺なんです?」


「だってよ。ホクトの奴は適性だがアイツはそう言うガラじゃないし。サラは自由行動が多いから色々とアレだろ?サクヤは自分のやる事が多いし、デルグは単細胞だから、必然とお前になっちゃう」


「他にいるだろ?だって、俺は1番弱いんだぞ?」


「別に俺は1番強いから天朧のリーダーをやってる訳じゃないぞ?ホクトの方が強いし」


「そのホクトは、レイヤの方が強いって言ってるぞ?お前ら2人ともそろそろどっちが強いかハッキリさせた方が良い。めんどくさいのかは知らないけど、押し付け合うなよ」


「まぁまぁ、んで?天朧はやってくれるか?二代目君」


「いやいや、まだ承諾した訳じゃないからな?そもそも、こんな俺に務まる訳がねぇ!」


「務まるよ。アンタ、真面目なんだから。リーダーは1番真面目じゃないと」


そして、レイヤはお酒を口の中に入れる。


「じゃ、現リーダーでもある、レイヤも真面目になるべきだ」


「ん?」


タラタキはレイヤの背後に指を指す

 レイヤは後ろを振り向くと、怒っている女性が立っていた。


「...さ、サクヤ?」


「アレほど酒は体に悪いって言ってんだろ!お前昨日からずっと飲んでるんじゃねぇか!怪我人はアルコールを控えろ!アホ!」


「はぁ、このチームをまとめられる訳がないだろ...」


「(そうだ。半年後にレイヤが言っていた事が現実となった。レイヤは本当に半年後に突然と消えたんだ。だから、俺は任されたモノを全うしようとした。少しでもレイヤに恩返しをする為に...)」


「天朧二代目タラタキは負けちゃ行けねぇんだ。アイツらが帰ってくる場所をいつでも作れる為に、俺は負けちゃダメなんだ!!」


タラタキはシラヌの服を掴みながら立ち上がる。


「うっとしい...でも、やはり俺が尊敬していた漢だな。もっと強くなると良い。お前はまだ強くなれる」


シラヌはタラタキの殴り飛ばした。

 壁に激突して崩れ落ちるが、タラタキはまだ立ちあがろうとする。


「お、俺は負けちゃ...」


「もう、よせ。漢気としてお前の勝ちだ」


シラヌはボロボロのタラタキは支える。

 そして、静かに眠るタラタキをトルカは地面に寝かせる。


「それで、どうする?お前もやるか?」


「当たり前だ。拳王タラタキを倒したお前を倒す。それが最強に近づく為に」


「良いね。俺は信念がある漢は好きだ」


2人は同時に動き拳を交わすので合った。




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