第42話 トーナメント戦

「レイヤ」


「ん?」


 宿屋にて、フウカとクロエが楽しそうに会話をしていた。レイヤはべランダで座っていて、その隣にリンが座る。


「最近、クロエの為に頑張ってるね。偉い偉い!クロエの事気に入った?」


「まぁね...でも1番の理由はクロエの瞳が気になる」


「瞳?」


「昔の。何か復讐を抱く様な目、誰かを殺したい程誰かを恨んでいる。そして...」


いや、気のせいか


「俺はその復讐に縛られているクロエを自由にしたい」


「復讐ね。アタシから見れば、普通に楽しそうにしてるよ?」


「自分の気持ちを隠すのが上手いのかな?でも俺は分かるんだ。昔は俺の...大切な人達を殺した奴を殺したくて、復讐に囚われてた」


「その復讐は叶った?」


「叶ってはないな。ソイツを殺せてない...まぁ、今になっちゃどうでも良いがな」


レイヤは心配ないとニッコリと笑う。

 リンは立ち上がりレイヤの目の前に立つ。そして両手でレイヤの頬を触り自分のオデコとレイヤのオデコを当てる。


「レイヤ、もしその復讐が再び芽生えたのならアタシに言って、1人で抱えないで。アタシもレイヤの汚れた部分を背負うから。だからこれだけ約束して、1人で抱えないで、アタシはいつだってレイヤの味方だよ。アタシの大切な剣で、大好きな人なんだから」


その言葉にレイヤは目を大きく見開いた。


「...ああ、そうだな。まぁ、その時来たらよろしくだな」


「うん!」


2人はニシシと笑う。

 そして次の日、拳王大会の本戦が始まる。バトルロワイヤルに勝ち抜いた16人は闘技場に並んでいた。そして司会者は16人の前に立った。


「ここに集まったのは他でもない。それは!バトルロワイヤルに勝ち抜いた16人の精鋭達の、拳王大会のトーナメント本戦!組み合わせ抽選会を開始する!!」


「「「「「おおおおおお!!!」」」」


会場は大盛り上がりだった。

16人の拳闘士に向かって膨大な握手を浴びる。


「抽選方法は例年と同じくじ引き!それでは初め!」


そして1番右にいたタラタキがくじを引いた。

その番号は7番だった。そして次々とくじ引きが引かれトーナメント表は完成した。


1、シラヌ=マダス

2、ヘム=セット

3、フミュウ

4、スイリュー=ハキュート

5、マグタス

6、エージ=ルー

7、タラタキ=マグウェル

8、イライジ

9、アジュ=ブルペン

10、セイドト

11、レイジー

12、タットパム

13、フウカ=ナーベ

14、ガルドーザ

15、トルカ=オドレル

16、ムメン


フウカと当たるとしても準決勝。タラタキとは決勝って所か...それにしてもフウカの場所、結構キツイな。最初からあのガルドーザと被るとは...


「...クロエさんの為に頑張らないと」


「...ごめんフウカ!」


「え?なんの事ですか?」


レイヤはフウカの頭を撫でるのであった。

 仲間の為に頑張ろうとするフウカに向ける気持ちは、勝利すると信じる気持ちだった。


「フウカ、お互い準決勝まで頑張ろうな!」


「はい!お互い悔いのない、ように頑張りましょう!」


そして試合は始まった。

 最初の戦いはシラヌ対ヘム。その戦いは開始の合図と共にヘムが地面に叩きつけられていた。


「あと少しで俺が求める最強に近づく」


勝者シラヌ=マダスとなった。そして次の試合、フミュウ対スイリューの試合になる。


「手刀の使いスイリュー=ハキュートVSバーサス根性魂のフミュウ!それでは試合開始!」


「「...」」


司会者の開始の合図があってもお互い動こうとしなかった。そしてお互いが初めて接した言葉が、この組み合わせの不満だった。


「これはどうゆう事っすか?なぜ、一回戦目の相手が毎回貴方なんすか?スイリュー」


「それは此方が聞きたい所ですよ。クソフミュウ」


「やっぱ、お前とは気が合わないっすね」


「同然だ」


2人は構える。

そして先に動いたのはフミュウだった。

フミュウの拳にはナックルがあった。


「やはり、武としての芸がありません。武器を使う奴は弱い人なんですから」


「武器?こりゃ自分の体の一部っすよ」


 フミュウはパンチをするが、スイリューに避けられる。ワンツーワンツーとスイリューに殴り続けるが全ての攻撃を交わしていく。


「それじゃ当たりませんよ。攻撃とはこう当てるのですよ」


スイリューの手刀がフミュウに振り下げる。

 だが、フミュウは避けませずにそのまま頭で受け止めるのであった。


「根性!!」


「岩でさえ砕く威力なんですよ。本当暑苦しいてすね。根性って奴は」


「根性は男の最大な武器っすよ!」


「...そろそろですかな?」


「あ?...うぅ!ぐぅぅ!!おおお!!な、なんだこれぇ!!腹が痛いっす!!!」


フミュウは自分の腹を抑えて倒れ込むのだった。

スイリューはそれを見てニヤリと笑う。


「どうだ?今朝、私の牛乳を勝手に飲んだ感想は?」


「何か仕掛けたな!卑怯っすよ!」


「いつも言っていますよね?人のモノは勝手に飲むなと?その仇が今来たのです。反省して下さい」


「うおおおおお!!!」


ゴロゴロとなる腹痛にフミュウは叫ぶ事しか出来なかった。


「おおっと!フミュウ選手がいきなり倒れ込んだぞ!これは戦闘不能と見做し、勝者スイリュー選手!」


スイリューはドヤ顔で片腕をあげるのであった。

そして次の試合はマグタス対エージ=ルー、勝者エージ=るー。そしてその次の試合はタラタキ対イライジ。試合は始まりイライジはタラタキの身体に連撃を打ち込んだ。


「なっ?!俺の拳を喰らえば立てなくなる程激痛を感じさせるのだぞ!」


「死に物狂いで、アイツの盾を受け継いたんだ。そう簡単にこの盾は壊れないぞ。そして喰らうが良い、俺の最強な矛を!」


タラタキは大きく腕を振り上げて、イライジに向かって拳を薙ぎ払った。岩の様な腕は衝撃波だけでも凄まじい威力。イライジは吹き飛び壁にまで飲み込まれるのだった。


「す、凄い!!イライジの戦闘不能と見做し、勝者タラタキ!!」

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