第48話 レイジー対トルカ

「...」


「ど、どう言う事でしょうか?シラヌ選手現れませんね?」


 タラタキの対戦相手でもある、シラヌが会場に現れない事に観客席から不満の声が上がる。2人ともワンパンで上り詰めた選手同士の戦いを楽しみにしている客が多かった。


「じ、時間切れです!!タラタキ選手の不戦勝となりました!!非常に残念です!」


「...スイリューの野郎をボコした借りを返させて貰おうと思ったのに、残念だったな」


シラヌが現れることがなく、タラタキの勝ちとなった。

 そして、次の試合はレイヤ対トルカ。両者ともやる気を満ちていた。


「やっと、お前を殺せるんだな。羽虫」


「同意見だ。アンタをぶちのめしてやるよ」


2人は殺意を向けながら睨みつけていた。

応援をする、リン、フウカ、クロエの隣にスネイが立っていた。


「どうです?VIP席からの眺めは?一般席と比べて、よく見えますよね?あのアホがやった事のお詫びです。ここで楽しんで行ってください」


「す、すみません。わざわざこの様な席までご用意して頂き...」


「いえ、謝るべきはトルカの暴走を止めなかった私です」


スネイは申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「おや、そろそろ試合が始まりますね。トルカにはもし、昨日の様な事がまた起きない様に今回はすぐに審判に止める様に、強く言っておきました。昨日の様な大怪我になるのはないと安心してください」


「...えっと?」


「どうしましたか?フウカ様?」


戸惑う様子のフウカに、スネイは疑問を抱く。

そして真剣な眼差しでレイヤを見ていたリンが口を開くのだ。


「その言い方、レイヤが負けるみたいな言い方に聞こえるけど?」


「そうですね。確かにレイヤ様...いや、レイジー様はお強いです。ですが相手は次元が違います。彼の才能は本物です。なら、ここで賭けをしませんか?大丈夫です。私からの賭け事はしません。この試合は100%トルカの勝利なので。ですが、もし彼が勝てば...うーん、私の武器屋として、何か一つ業物を差し出しましょう」


「へぇ、本当それで良いの?」


「はい」


「分かった。でも、それじゃつまらない。なら、もし貴方が期待している男が勝ったら、この剣をあげる」


「良いのですか?それは業物ではないのでしょうか?」


「うん。お前と同じぐらい、アタシはレイヤを信じてる。この剣は人からの借り物、それをアタシは勝手に人にあげようとしている馬鹿。でも、そんな事にはならない、だってレイヤはこの試合で絶対に勝つから。だから、これは賭け事すらにならない」


「ふふ、それは楽しみになってきましたね」


「それでは白髪仮面レイジーVSバーサス飲んだくれトルカ=オドレル!!それでは試合開始!!」


2人が賭け事をしていると、試合の合図が響く。


「おい!羽虫!昨日はお前の女をボコして悪かったな?!せっかくの顔が台無しになっちまったよなぁ?!でもよぉ、あの女の人生はお前が止めたのも悪いんだぜぇ?!顔が不細工になって才能もねぇ、これからどう生きるんだろうなぁ?!せっかく、俺が殺して楽にさせてやろうと思ったのによぉ?!!」


「おい、この試合は口勝負なのか?拳でやり合おうじゃねぇか?」


「ガハッ?!」


レイヤは拳に力を込めて腹に目掛けてパンチを入れる。

トルカは腹を抑えて地面に倒れる。


「もう終わりなのか?」


「テメェ!!羽虫がぁ!!!」


トルカは見下すレイヤの目を見て怒りを覚える。

すぐに立ち上がりレイヤを殴り飛ばした。


「俺を舐めやがって!!このクソ羽虫がぁ!!」


「おい、これがアンタの本気か?随分痒い攻撃だな?てっきり、虫が肌を触る様な痒みだ」


「殺す!!」


 連打!連打!連打!と次々と打撃を放つが、レイヤは全ての攻撃を交わした。そして避けながら反撃を狙い、トルカの顔に目掛けて後ろ回し蹴りを喰らわせる。


「顔面直撃なのに、何故倒れないのですか?やはり、あの男の身体の頑丈さは異常です」


「それが彼が生まれ持った才能ですよ。大して鍛えていないのにも関わらず、あの異常な筋肉質。例えどんな攻撃でも、耐えきれますよ」


 フウカは異常な硬さのトルカの筋肉に不思議そうな所を、スネイが説明する。レイヤはトルカの顎に目掛けてアッパーを入れる。だが痛みを感じたのはトルカではなく、レイヤの拳だった。


「痒いなぁ!!」


「なんて硬さだ...」


「パンチの仕方すら知らねぇ羽虫がぁ、如何ってんじゃねぇ!この俺がパンチの仕方を教えてやる!」


トルカはレイヤの顔に目掛けてパンチを飛ばした。

 レイヤは耐え切ってトルカの顔面に目掛けてパンチを飛ばす。

2人は防御を捨てて、顔面に向かってパンチの連打をする。まさに猛攻一方なのだ。


「はぁはぁはぁ」


「どうした?随分と辛そうな顔をしてるな?」


「うるせぇぇぇ!!!」


 トルカはレイヤの服を掴み壁に叩きつけるが、レイヤの服を掴んで持ち上げてもビクとも動かなかった。


「やめろよ。服が伸びるだろ?」


「はぁはぁはぁ」


「息が荒いじゃん?もしかして疲れてる?なぁ、才能君?」


「殺す...お前を殺す!!!」


「さっきから、それしか言ってねぇじゃねぇか?まぁ、しょうがないよな。圧倒的な才能の蜜を吸って努力してこなかったからな。それが疲労こそ、アンタが馬鹿にしてた努力だよ。アンタはそれを知らないから弱いんだ。どんな才能があろうが、それを活かさなかったら鈍と同然なんだ」


レイヤは初めて力を入れたパンチの連撃をトルカに喰らわせた。

 トルカを倒れさせない様に壁に寄りかからせて、連打!連打!連打!と壁に亀裂が入るぐらいの威力のパンチを喰らわせる。

そして気絶させたトルカを持って頭から地面に落とした。まさにその姿はひっくり返ったカエルの様なみっともない姿だった。


「疲労と痛みを知らねぇ奴に負ける訳がねぇ」


「と、トルカの戦闘不能とみなし!勝者レイジー!!!」


「トルカが負けた...?」


この試合、トルカの恥が世間に広まって試合が終了するのであった。

トルカが完全に負けたことにスネイは青ざめていた。


「フウカ。勝ったぞ」


「...お疲れ様です!」


2人は拳を向ける様に差し出した。

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