第49話 再会


 退屈だった....


俺の人生は勝ち続けることが、あまりにも退屈だった。ガキの頃、他のガキと違う所があった。俺の身体の筋肉はあまりにも発達していた。その異常な筋肉のおかげで、貴族でもある親がスラム街に捨てられたのだ。親の顔なんて覚えていない、俺が覚えているのはマグウェルと言う家名だけだった。


 強すぎた俺は、最初は仲間になろうとしていた人間でさえも恐怖を覚え、俺にただ従うだけの人間しかいなかった。誰も俺と対等に話す人間もいなく、俺をまるで王の様に接する人間しか存在しない。


...孤独


 だから、仲間に恵まれていなくても、俺は殴り合いの戦い好きだった事に色んな奴に喧嘩をうった。だが、12歳と言うガキと変わらない歳で俺はこのスラム街で俺の本当の敵は存在しなくなった。ただ、向かってくる人間を倒すだけ行動。好きだった戦いですら退屈だと感じ始めた。


そして、3年後俺は拳王大会の存在を知り参加してみた。

 最初は世界から集まる猛者達がうじゃうじゃいると聞いてワクワクしていたが、結果はいつもと変わらない退屈だった。圧倒的な力に拳王と呼ばれてから2年の月日が流れる。俺の噂を聞きつけたのか、俺の前にレイヤ=カグラザカと名乗る男が現れる。


「アンタ、強いって聞いたぞ?俺は魔導王になる男だ。俺の仲間にならないか?丁度拳で戦う戦士が欲しい所だったんだ」


「...仲間?仲間って対等な関係の事を言うんだろ?なら、俺達は仲間になんぞなれんぞ?」


「仲間になれない?まぁ、無理ならしょうがないか...でも、お前なんか寂しそうな目をしているな。どうだ?俺と拳で語ってみないか?拳闘士の王と言うものと戦ってみたかったんだ」


レイヤは軽い気持ちで俺と殴り合いを申し出た。

 俺がお前の仲間にならないと、圧倒的な実力を見せようと全力で挑んだ。だが、結果は


初めての敗北


一度も経験したことのない、敗北を味わった。

 不思議なすぎなかった。このレイヤと言う男は、最初は優勢だったのにも関わらず、拳闘士としての俺の技術を吸収して強くなっていた。


「...はぁはぁ、アンタ強いな。やっぱり、仲間にならないか?」


 これが対等な関係なのか?俺と同じ才能を持つ男なのに、何故この男の周りには人が集まっていくんだ。でも、その気持ちはわかる、何故か俺もレイヤの背中を追っていたんだ。


 孤独と言う退屈から、救ってくれたレイヤ、ライバルでもあり親友でもあるデルグ、そして仲間達は俺にとって最高な場所だった。だから、俺は大将でもあるレイヤにみんなを託された。例え、レイヤ、サラ、デルグが死んでも、ホクトがレイヤ以外俺達に仲間と思っていなくても、トウマが人間を恨んで復讐しても、サクヤが最愛の人を無くし絶望しても、他のみんなと離れ離れになっても俺はレイヤに託されたチームの居場所を守り続ける。不可能かも知らないが、またみんなが集まる為に...


トルカを倒し次の日、決勝戦が始まる。

 これまでの戦いでワンパンKOを決め続けたタラタキと圧倒的な力で相手をねじ伏せたレイジーことレイヤが対面する。


「まさか、あの時森で出会った奴が、ここまで登りつめるとは思わなかったぞ」


「俺は最初からアンタとやり合いたかったぜ、タラタキ」


「...やはり、その声似てるな」


「なんの話だ?」


「いや、独り言だ」


「それでは、元拳王タラタキ=マグウェルVSバーサス白髪仮面レイジー!!それでは試合開始!!!」


「「「「「うおおおおお!!!」」」」」


流石決勝戦、会場は大盛り上がり状態だった。

 試合の開始と同時にタラタキは踏み込み、レイヤの胴体に目掛けてパンチを入れる。レイヤはそれを避けるが、タラタキはレイヤの背後に回り込み、下段蹴りを放つ。


「ほぉー」


タラタキはノールックで自分の蹴りを防いだレイヤに関心する。


「アンタ、昔と変わらんな。相手の出方を調べるために真正面からの殴り、そして後ろからの蹴りを入れる。変わらんな」


「...どうやら、お前は俺の事を知っている様だな。何者なんだ?」


「今は剣帝になる女の剣さ...そして昔はアンタと共に旅をした仲だな。タラタキ、元気でなによりだ久しぶりだな」


「...?!」


「おおお!!白髪仮面が仮面を取りました!!仮面の中は有名な拳闘士なのか?!イケメンなのか?!と騒がられていましたが、い、イケメンですね!」


レイヤはタラタキの目の前で仮面を取った。

司会者はレイヤが仮面を外した事を実況をする。


「...あ、あ、ありえねぇ!お前は誰なんだよ!レイヤは死んだんだぁ!俺達の目の前で!あの戦いでデルグもサラも...そしてレイヤも死んだんだぁ!」


「(...死んだ?)」


 タラタキが知っているレイヤが死んだと言った事に、フウカ、そしてクロエやリンが反応をする。


「俺ら一緒に黒ダイヤマグロを食べた仲じゃねぇか。もう、俺の顔を忘れちまったか?」


「忘れる訳がねぇ!俺の中で1番尊敬している人間を忘れる事なんねぇ!でも、あ、あ、あり得ねぇ!れ、レイヤは俺達の前で、さ、サラと一緒に殺されたんだ」


「俺はサラに生かされた。俺は死んでねぇよ...悪いな、勝手に消えて全て押し付けてよ。ただいま、タラタキ」


レイヤは優しく微笑んだ。

目の前に死んだ筈の人間がいる事に、タラタキは涙を流すのだった。

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