あこがれの女教師は娼婦(その33)
黒い雨雲が天空を通り過ぎると、つい先ほどまでの土砂降りの雨が嘘のように、まばゆい日の光が道の先をどこまでも明るく照らし出した。
渋滞も解消したのか、ようやく車列が動き出した。
空港に着くころには日はすでに傾いていた。
ゆっくりディナーどころではなくなった。
空港入口で車を降りたエリカは、先に搭乗カウンターでチェックインしてから、航空会社のサービスラウンジで合流すると言うので、螺旋形の通路を巡って最下層の地下駐車場に車を停めた。
あまりにも広すぎる地下駐車場で迷ったあげく、やっとサービスラウンジに着いたが、ボーディングパスを持っている乗客と同伴でないと中には入れないと断られてしまった。
その場でしばらく待ったが、エリカは現れない。
携帯に電話すると、呼び出し音が続くだけで、応答はなかった。
やむなくチェックインカウンターへ行って確認すると、エリカはすでにチェックインしているという。
あるいはサービスラウンジではなくレストランで待っているのかと思い、近くのティーラウンジやミニレストランを回ったがどこにも姿がなかった。
再びサービスラウンジへもどり、ページングをしてもらったが、中にはいないという。
係員にたずねると、搭乗前に使えるサービスラウンジが税関の先にもあるというが、当然ボーディングパスがなければそこへは行けない。
エリカは、そこのサービスラウンジと勘違いしたのだろうか?
もっとも、サービスラウンジで会ったとしても、時間はそれほど残ってはいなかった。
エリカのミッションのことを、ディナーをしながらたずねようと思っていた。
エリカもそのつもりだったのか、車の中ではそのことは特に話題にはしなかった。
・・・その時、携帯が鳴った。
取り落としそうになりながらポケットから取り出した携帯には、エリカの名前が表示されていた。
携帯を耳に当てると、
「東條か?」
とくぐもった男の声がした。
「ああ」
と呻くように答えると、
「川崎さんは電話には出られない」
と男は言った。
その低い声にはどこか聞き覚えがあった。
「森本か?」
しばらく答えはなかったが、
「少し話がしたい」
と切迫した男の声が聞こえた。
「どこだ?」
森本は、空港に隣接するホテルの名前を口にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます