あこがれの女教師は娼婦(その17)

エリカも森本もアメリカの高校に転校してから1週間ほど過ぎたある日、またも匿名の手紙が届いた。

以前の2通と同じように、定規とボールペンを使い、同じレポート用紙に、

「15ヒ24ジヨシワラマキシム」

と書いてあった。

白封筒も同じ、あて名もまったく同じ書き方だった。

わが目を疑った。

エリカが連続殺人の犯人と疑った森本は、とっくにアメリカへ旅立っていた。

この見立ては、まちがっていたのだろうか?


放課後、駅前の喫茶店で、脇坂に3通目の脅迫状を見せた。

「同じ?」

「ああ、同じだね」

「15ヒというのは今週の土曜日のことかな」

脇坂は携帯で何やら検索していたが、

「吉原のソープランドのセラヴィで午前零時か・・・」

と言って携帯の画面をこちらに向けた。

若い美女がこちらに向かって手を差し伸べる絵柄が、画面に大きく立ち上がっていた。

「どうする?やはり警察に・・・」

顔を寄せると、脇坂は、

「それはまとも過ぎて面白くないね」

とニヤリと笑った。

言うか言うまいか迷ったが、

「川崎くんが、D坂で森本を見かけて追跡し、美祢子先生とラブホに入るところを目撃していた」

と白状すると、

「あの川崎エリカか?」

とたずねた。

「ああ、こっちは背後から、彼女は横から・・・。で、美祢子先生を殺したのは森本だと彼女は固く信じている」

「君は?」

「暗くて、真後ろからだったので、森本だったかどうかよく分からない」

「だが、川崎さんは刑事にそうは言わなかった」

「理由は分からない・・・。とどのつまりは、確信が持てなかったのさ。・・・ただ、森本はふたりの目撃者が背後にいたことを知っていた」

「それで君を犯人に仕立てようと、続けて殺人を犯した。これはどうだ」

「そうだろうね。・・・だが、そこは、森本にとって、おまけでしかなかった」

「おまけ?」

「美祢子先生を殺したのは成り行きだか偶然だったような気がする。君が美祢子先生がD坂で客を引いていると噂を流したので、森本は先生を金で買おうとした」

そう言っておきながら、

『お前もそうだったのか?』

脇坂にそうたずねられたら、どう答えよう?

・・・先生を金で買う気などみじんもなかった。

あこがれのマドンナが堕落した姿を見たかっただけ?

・・・いや、妖しい気持ちを抱えてD坂に向かったのはまちがいない。

金があったら森本と同じように先生を買ったのだろうか?

それを完全に否定するほどの自信は、なかった。

「俺のばらまいた噂で、3人がD坂にかけつけた。いや、他にももっとたくさんいたのかも知れん」

脇坂は、皮肉めかしてそう言った。

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