あこがれの女教師は娼婦(その18)
「D坂のラブホ街で、美祢子先生が若い男とラブホに入るのを君は見た。だが、それが森本だとは断言できないが、新宿中央公園で見た男と似ていると君は言う」
「その通りだ」
「一方、川崎さんはD坂の男は森本だと言う。D坂の男が森本なら新宿の男も森本ということになる」
「そういうことだね」
「ここに脅迫状がある。まあ、殺人予告だ。封筒、レポート用紙、定規を使った書き方、・・・すべて今までのと同じだ。今までの脅迫状を森本が書いたとするなら、これも森本が書いたことになる」
「・・・・・」
「ところが、この殺人予告は、森本がアメリカに旅立ってから届いた。ここにいない人間が脅迫状を送りつけたり、殺人を実行したりがどうしてできる?」
「・・・・・」
「答えはひとつだ。・・・川崎くんがD坂で見かけた男は、森本ではなかった」
「では、誰が?」
「君の住所を知り、美祢子先生がD坂で娼婦をしている噂を聞いた男だ。胸板が厚くガタイがでかいスポーツマンタイプの男・・・」
「ああ、それって同級生?いや、われわれの高校の体育会系の部活の男か?森本から美祢子先生の噂を聞いた奴なら誰でも犯人になりうる」
そう叫んで、思わず脇坂と顔を見合わせた。
「では、どうして俺を犯人に仕立てようとする?美祢子先生殺しを、どうしてもひとのせいにしたいのかね」
「そのあとのふたつの殺人現場に君をおびき出したのは明らかにそうだ。だが、それはうまくいってはいない。むしろ、目撃者を増やしているだけだ」
「プロの犯罪者ではない。頭の悪い高校生が考えそうなことだ」
「たしかに、それはその通りだ。君に殺人を見せつけたいだけなのかもしれない。君に恋をしていて、殺人が君へのラブレターとかね」
「冗談は止してくれ」
「悪かった。やはり美祢子先生に恋焦がれるわれわれの高校の学生が、先生を金で買ったが、何らかのトラブルで衝動的に先生を殺した。・・・そこから猟奇的殺人に目覚めた」
「殺せば殺すほど、人殺しに快楽を感じるようになったということ?高校生が?まさか!」
そんな話をあれこれしてから、
「で、今週の土曜日は吉原に出かけるの?」
そうたずねると、
「むろん」
脇坂は事もなげに答えた。
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