あこがれの女教師は娼婦(その11)

「シンジュクチュウオウコウエン11ヒ20ジ」

前と同じような定規とボールペンで書いた手紙が、また家に届いた。

今週の土曜の夜、新宿中央公園で、ひとを殺すという予告だった。

「連続殺人魔から殺人予告が届きました」

と警察に届けようか?

だが、たかが高校生の悪ふざけとして取り合ってくれそうもないような気がした。

放課後、玄関の下足棚の前で脇坂の帰りを待った。

校門に向かって並んで歩きながら、2通の手紙を見せると、脇坂は驚いた。

駅前の喫茶店で話すことにした。

ふたりとも制服を脱いでから店に入った。

校則では、制服を着て飲食店に入ってはいけないことになっていた。

・・・ならば、脱げばいいだけのことだ。

お互いをライバルと意識していたので、コーヒーを前にして親しく話などしたことはなかった。

「定規とボールペンで書いたこの2通の手紙は、同じ犯人によるものだ」

ブラックコーヒーをひと口飲み、もう一度匿名の手紙を読んだ脇坂は、ひとり言のように呟いた。

よく見ると、定規の使い方にしても、白封筒もレポート用紙もまったく同じものだ。

「新宿中央公園といってもかなり広い。ピンポイントで殺人現場を探すのは大変だなあ」

脇坂は、新宿へ出かける気になったようだ。

「行くのか?」

「ああ、面白そうじゃないか」

いささか不謹慎なことを口にした脇坂は、

「ふたりで手分けして張り込もう」

と身を乗り出した。

「どうして俺にだけこんな手紙が来るのかね?」

「・・・ああ、君に殺人を見せつけたいのか、それとも、あわよくば君を犯人に仕立てたいのか」

「誰だろう」

「犯人は、意外と身近にいるのかも知れない」

「長身で、レイバン風の大きなサングラスに黒マスクの変質者の人殺し・・・。そんな奴が近くにいるとも思えない」

黒ずくめの服装で、強力な懐中電灯と縄をリュック入れ、サバイバルナイフもあるといいなどと脇坂は言い出した。

「サバイバルナイフ?」

「ああ、犯人とやりあうことになるかもしれない」

「なら、スタンガンの方がいいのでは・・・」

「ああ、伸縮する警棒でもいい。君に任せるよ」

いつも青白い顔で冷静な脇坂にしては、めずらしく頬を紅潮させ興奮していた。

・・・脇坂とは、土曜日の7時半に都庁裏のホテルのロビーで会うことにして分かれた。

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