あこがれの女教師は娼婦(その10)

逃げるようにして家に帰った。

恐る恐るPCを開き、犯罪ネットを立ち上げると、

「歌舞伎町のホテルで若い女性刺殺」

の一行だけのニュースが流れていた。

いったん布団に入って寝入ってから真夜中に起き出し、再び犯罪ネットに入ると、今度は犯罪の詳細が明らかになっていた。

若い男が先にホテルに入り、デリヘル嬢が呼ばれて部屋へ入った。

「女が長風呂なので、先に帰る」と言って、若い男はホテルを出た。

時間が来ても女が下りてこないので、従業員が部屋に入り、真っ赤な血に染まった風呂水に漬かった若い女を見つけた。

女はスーツのジャケットと白のハイネックセーターは着たままで、下半身はスカートも下着も身に着けていなかった。

鮮血は下腹部からとめどなく流れていた。

若い男はレイバン風の大きなサングラスと黒いマスクだったので、フロントの従業員は男の顔を憶えていなかった。

背は高いとしか覚えていないと語っている。


大きな黒いサングラスに黒マスクの背の高い若い男、・・・となれば、S坂のラブホで美祢子先生を殺した男そのものではないか。

上着は着たまま、下腹部だけが晒されて殺されたのも同じだ。

歌舞伎町で殺されたのは、デリヘル嬢だった。

美祢子先生も娼婦として殺された。

犯人は、売春婦を異常な殺し方で殺して楽しむ嗜虐的な男なのだろうか?


Agatha Christieの小説の一節、From an early age I knew very strongly the lust to kill.に続く、Crime and its punishment has always fascinated me.のように、社会の害虫のような売春婦を悪と見立てて殺し、悦に入っている若い殺人者を思い浮かべた。

でも、売春って犯罪?

・・・売春婦というだけで罰せられていいのか?

むしろ、売春婦はからだを売ってお金を稼ぐしかない社会的弱者のように思えた。

その弱者をいたぶって楽しんで殺す・・・。


殺すべきは、巨額の歳費を得ていながら権力を誤って駆使し、収賄でさらに金儲けをする政治家どもではないか。

社会の寄生虫になり果てた政治家どもにこそ、立ち向かえ!

・・・妙な怒りが、腹の底からこみ上げて来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る