あこがれの女教師は娼婦(その41)
「たしかに、溺死していたら拳銃自殺などできないね。ではどうして便器を抱えて自殺したのだろう?」
「宗教の儀式のことは分かりません。考えられるのは、まず便器に水を張ってそこに顔を沈めて自殺しようとしたのでしょう。・・・ところが、うまくいかなかった。そもそも、この方法で自殺は不可能と思います。それで、拳銃自殺に切り替えたのではないでしょうか」
「たしかに便器に貯めた水で自殺するのはむずかしいね。でも、死因を知らないと、断定はできないと思う。警察の発表を待つしかないね・・・」
「はい。自殺とすれば、たしかにそうです。ですが、他の人が殺したとしたらどうでしょう」
「ああ、他殺ね」
「そうとも言います」
「トイレは内側から鍵が掛かっていて、森本は個室でひとりだった。他殺はありえない」
「でも、マネージャーが外から簡単に開けました」
「ああ、そう言えば、硬い紙を隙間に差し込んで鍵を跳ね上げて内鍵を外すのをこの目で見たね」
「トイレの内鍵は簡単な仕組みのものが多いです。ということは、外から細工して鍵を掛けたり外したりが簡単にできるということです」
「なるほど」
「それに、スタンガンで襲われてからだが弱っていたので、森本氏を思い通りに操ることができました。水の張った便器に頭を強く押しつければ溺死させることはできたはずです」
「では、サイレンサー付きの拳銃はどうだろう。サイレンサーは分かるね」
「はい、分かります」
「森本は、カリフォルニアで同じような殺人事件を犯している。サイレンサー付きの拳銃で売春婦をモーテルで殺している。その拳銃を日本に持ち込んだとしたらどうだろう」
「同じ型式の拳銃はたくさんあります。その拳銃から出た弾丸の線が同じであるか調べなければなりません」
「線条痕のこと?」
「はい、そうです。アメリカのFBIと日本の警察が仲良く調べれば分かることです」
その可能性は、すでに事情聴取で取調官に話したが、取調官は荒唐無稽な話としか思わなかったようだ。
「誰かが森本を溺死させてから、自殺にカモフラージュして拳銃で喉を撃ったということか。二重に自殺を偽装?そんなことはありえない」
「はい。ありえません」
可不可は首をひねった。
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