車に轢かれそうな女の子を助けたら、学校1の美少女の姉だった!~なぜか彼氏認定してくるし、ヤンデレになるし、百合百合幼馴染もなんだか様子がおかしくなった~

鈴音凜

プロローグ 学校のアイドルはなぜか俺と話したいらしい

「という事でクラスの女子の人気投票! 結果が出ました、速報です!!!」


「しー、声がでかい! 廊下の隅とは聞こえるぞ!」

 廊下の隅っこ、あんまり人がいない空間とは言えそう叫ぶ友達の簑島太雅みのしまたいがを口に指を当てながら制す。


 俺たち華の高校2年生、6月って言うまだ夏も修学旅行も控えてるこの時期にそう言う発言女の子に聞かれるのまずいだろ!


「いやはや、失礼しました。ちょっと興奮しちゃって! とにかく、結果発表だ、結果発表! 今回はクラスの男子16人と百合好き女子の難波ちゃんと高田ちゃんの計18人の参加とかなり信ぴょう性のあるデータ! それをまずは親友であり、色々協力してくれたお前―野中悠真のなかゆうまに初めに教えようと思ってな!」


「だから声でかいって、太雅! もっと声抑えろ、結構見られてるぞ! と、とにかく結果だ! 結果だけ見せてくれ、うるさくしないように! 風花ちゃんの結果もちゃんとな!」

 別にそこまで結果が気になるわけではないけど!

 でもやっぱり他のやつがどう思ってるかとかはちょっと気にかかるし、それに俺の投票した子が何位かも気になるし! 自分のセンスもちょっと気になるし、風花ちゃんとかも!


「まあまあ、お前も落ち着け落ち着け! それじゃあ1票でも入った女の子から紹介するぜ! まず1票入ったのは佐々木さんに難波ちゃん、それに高田ちゃん! 投票したのは……多分言っていいから言うけど、前からヒロ、高田ちゃん、難波ちゃんだ!」


「まあヒロと絵美ちゃん付き合ってるもんな……ってあの二人お互いに入れたのか!? お互いに投票……こ、これって両想い、ってコト!」


「おいおい、そう興奮するな! 多分そう言う事だぜ、投票するときお互いもじもじ恥ずかしそうだったし! 多分、そう言う事、何だと思う!」


「マジかよ、すげえ! 百合カップルとかすげえ、興奮する! てか風花ちゃんがその一人ってことにも興奮する! あの風花ちゃんが⋯⋯めっちゃ興奮する!」

 こんなのマンガだけの話だと思ってた、現実世界にあるのかよ!

 マジかすげえな、お幸せに難波さんに風花ちゃん! ずっと言ってたもんな、好きって! 幼馴染として嬉しい、マジで!


「わかる、俺もそう思う! まあとにかくランキングの続きだ! 次に2票は言ったのは、矢野ちゃんに天間さん。そして青木さん!」


「おー、ここでもう! 確かに3人とも人気だ、矢野さんにはファンクラブあったし、義則とか徹とかが入ってる奴! 俺はこの中だと青ちゃんかな、フランクで話しやすいし、活発系女子って感じで可愛いし!」


「俺は天間ちゃんが好き! あのゆるほわな感じがたまんない! それじゃあ次が堂々の1位、もう1位の発表だぜ!」


「え、もう? 早くない、まだ結構残ってるよ?」

 まだ出てきた女の子6人だし、18人の投票の半分しか出てきてないし。

 ちょっと早くないっすか、終わりが見えるの早くない?


「いやー、わかってるくせに悠真さん! 1位はあの子ですよ、悠真も俺も投票したあの子! あの子がダントツで一番なんですわ!」


「……ふふっ、把握。なるほどね、大人気だもんね可愛いもんね! 俺も大好きだもん、めっちゃ可愛いし性格も素晴らしい! まさにみんなのアイドル、高嶺の花子さん!」


「そう、そう言う事! という事で栄えある第1位は、第2位の2票に圧倒的な差をつけての1位、9票で藤井歩美ふじいあゆみちゃんです!!!」


「私に何か用かしら、野中君に簑島君?」


『ゲッ!?』

 大興奮の1位の発表の瞬間、突如後ろに現れた藤井さんに思わず変な声と汗がブワッと飛び出る。


 長い黒髪にぱっちり大きな目、スッと通った鼻のキレイな顔立ち。

 モデルを思わせるようにスラっと長く伸びた身長、長い脚。

 くびれた腰元に出るとこは出た身体のラインは美術品を思わすようなそんな完璧な……ってそうだけどそうじゃない! 


 なんかすごく気持ち悪くなってたけど、とにかく完璧美人な藤井さんがなんでこんなところにいるんですか!? ここは廊下の隅っこ、藤井さんみたいなみんなのアイドル、太陽さんが来るところじゃないよ!? バドミントン部のアイドルエースさんが来る場所じゃないよ!?


「なんでそんなに焦ってるの野中君? いやらしい事で……野中君ってそう言う趣味だったのかしら? それとも私で何か変な事考えてた?」


「いやいや、そんな事ない、何も考えてない俺はノーマルですから! その、えっと……藤井さんは凄いなー、って話してたんだ! アハハ、やっぱり尊敬しちゃうなー、って!」

 こんな話聞かれちゃダメだ、こんなランキング作ってたことバレちゃダメだ!


 この先の学校生活の平穏のためにも、こんなランキングバレるわけにはいかない……あと俺が藤井さんに投票したこととかも! 藤井さんの事こっそり好きなことも! こっそり身の丈に合わない恋をしていることは絶対にバレちゃダメだから!


「ふふっ、何それ。たまに変な事言うよね、野中君は……まあいいけど、そう言う野中君も面白いし。ところで野中君、私は君に用があったんだけど大丈夫かな? 今ちょっと、君と話したいけど大丈夫?」


「え、俺? ふ、藤井さんが? ぼ、僕に何か用ですか?」


「ふふっ、一人称変わってる。なんでそんなに焦ってるの? 別にいいじゃない、私が君に用事があっても、クラスメイトだよ?」


「いや、その……藤井さんが僕に用事とか珍しいですし!」


「だから何でそんな喋りかたなの? 面白いからいいけど……あのね、これ。手塚先生が君に、って。だから渡しに来た……教室居ないから大変だったよ、野中君探すの。半分機密情報って言われたし、直接渡すしかなかったから」


「あ、そう言う事ね! ごめんね藤井さん。ありがと……この前のやつか、これ」

 クスクスと笑いながら手渡されたプリントには藤井さんのふんわりいい匂いとともに謎の数値と文面……これあれか。この前お菓子と称して人体実験されたときのやつか、数値見ても何もわかんないよ繭先生! あとあの時の報酬まだ貰ってませんし!


「んふふっ、相変わらず面白いね、野中君は。こんな廊下の隅っこに居なくても教室で話した方が楽しいと思うよ?」


「いやー、どうでしょう? 俺はこっちの方が似合ってると思いますよ。こういう隅っこの方が俺っぽいですし」


「そうかな? 少なくとも私は、野中君と話したいけどなー。野中君といっぱい、仲良くなりたいけどな」


「いやー、それは……って、マジ? 本当、藤井さん? お、俺と話したい、ってマジ?」


「うん、大マジ。去年はいっぱい話してたのに、今年になってから全然話せてなかったもん、ちょっと寂しかった。バドミントンの事とか、色々話したいこといっぱいあるし。野中君と話してない間に、言いたいこといっぱい増えたんだ。だから二人でまた、たくさん話したい」


「あ、えっと……えへへ?」


「もう、何それ。とにかくまた話そうね、野中君。絶対だよ、二人きりでゆっくり……でも今は簑島君となんだか楽しそうだから失礼するわ。楽しんでね、野中君。それじゃあ、教室で……またゆっくり、話そうね」


「う、うん! じゃ、じゃあね、藤井さん! ま、また話そうね!」

 ニコッと柔らかい笑顔で小さく俺に手を振ってくれて、どこか楽しそうなステップで帰っていく藤井さんに手を振り返す。


 ……ふ、藤井さん僕と話したいってどう言う事、かな?


 た、確かに去年は席が隣で結構話してたけど、2年生に進級してからはあんまり話してなかったし、もしかして藤井さん俺の事……え、何すごく嬉しい! ていうか可愛い! 手の振り方までそーキュート! 可愛い、凄い可愛いやっぱり好き!


「……じー」


「やっぱり藤井さん……って何だよ、太雅? 何だいその目は?」


「いや、お前藤井さんと仲いいんだな、って。なんか楽しそうだったし、さっきの会話俺いないものとして扱われてたし……何、どういう関係? 実はもう深い仲だったりするのか、俺たちを嘲笑ってた感じか? どうなんだい、悠真?」


「いやいや、そんな事ないですぜ太雅さん。去年席が隣だったころはよく話してたけど、それ以外で全然接点ないし。だから、全然そんなんじゃない、たまたまだよ、たまたま!」

 ……現実的に考えると、気まぐれって言葉が正解なんだろうな。


 去年話してたは言えそんなに深い話をしたわけでもないし、合宿とかの班も別だったし、席替えからはそんなに話してないし……実際問題知り合い以上友達未満、って感じなんだよね。

 だからあんなに浮かれてたけど、そんなことは絶対なくて、多分藤井さんの気まぐれで……まあでも話せるのすごく嬉しいな! 仲良くなってゆくゆく……にへへ。


「……なんだその気持ち悪い笑顔は。まあいいけどさ、別に人の恋路を邪魔する権利は俺にはありませんし? でももし藤井さんと付き合ったらぶっ飛ばす!!!」


「邪魔する気満々じゃん、何だそれ。まあ、そんな事にはならないから安心しててくれ……おくがいちにもそんな事にはならないよ」

 そうだよ、俺が藤井さんとどうにかなろうなんてそんなのお天道様が許してくれない、そんな素晴らしい事起こるわけない。


 藤井さんは高嶺の花、俺はただの一般高校生……そんなキセキみたいなこと、起きるはずがないんだ。



 ―その時の俺はあんなことが起きるなんて思ってもいなかった……ていうか予想できるわけないでしょ、あんなこと!


「……え、なんで藤井さん!?」


「な、何で野中君が……だって、ここ私の家……な、なんで!? なんで私の家に……ていうかなんでお姉ちゃんと一緒に!?」

 助けた女の子が藤井さんのお姉さんだなんて誰が予想できた!?



 ★★★

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