ちょっとヤバいサブキャラたちの日常

《太雅君→天ちゃん→青ちゃんの順です》


「……ん~、最近やっぱり、すごい視線感じるんだよな。なんだろ、これ?」

 悠真のやつは、この視線は高田さんからのだから気にしなくていい、って言ってたけど、悠真といる時以外も、最近すごく視線感じるし。普通に一人の時でも、結構視線感じるし。


 ちょっと話変わるけど、悠真と高田さん、なんで付き合わなかったんだろう? ラブラブな雰囲気出てたし、いつも一緒だったし。親同士も仲良しらしいし、それにベッドとかキスとかそう言う単語も聞こえて……って、今はお互いに恋人いるんだっけか? だからこう言う話はNGだっけか? 

 高田さんは難波さんと、悠真は藤井さんと……おっと、不確定情報を流すのはダメだ、話を戻すぜ。あんまり話しすぎると怒られるぜ!


 話し戻して視線の話だけど、今、家の中なのにものすごい視線感じるし。誰かに見られてるというか、監視されているというか……最近ずーっとそんな視線を感じるんだよな。


「何なんだろ、これ……も、もしかして俺の事好きな女の子が……いやいや、そんな事ないか、家の中だぞ。まさか監視カメラでも仕掛けてるわけでもないだろうし! そもそも俺を好きな女の子なんて存在しないだろうし……ハァ」

 自分で言って、悲しくなった。俺昔から全然モテないんだよな、バレンタインに女の子から直接、チョコレート貰ったことないし。去年は下駄箱にでっかいチョコレートと不気味な匿名メッセージが入ってたけど、まぁ、あれは……イタズラでしょ、じゃないと文章がヤバすぎて怖い……ま、美味しかったんですけどね!


 とにかく、俺は悠真と違って全然モテないから、俺にそう言う心配はなし! 心配はないから、この視線も自信過剰! そうに違いない……ハァ。


「俺も彼女無し生活からおさらばしたいぜ、この創立祭で……天ちゃん、誘ったら一緒にデートしてくれるかな? 俺と一緒にデートしてくれるかな?」

 机の上に立てかけられた写真―4月のプチ旅行の時に、偶然天ちゃんととれたツーショットを眺めながら。

 ゆるふわ可愛い天間さんの、天使のふわふわ甘そうな私服姿を眺めながら。


「天間さん、俺と創立祭、一緒に回りませんか! 俺と一緒に、回ってくれませんか……って、言えるかなぁ? 写真だと簡単に言えるけど、ナマで言えるかなぁ、言いたいなぁ。天ちゃんとデートして、それで……天間さん、いや、音夢さん! 大好きです! 付き合ってください……なんて言えるかなぁ? ハァ、緊張してきた~」

 写真に向かって、何度目かわからない告白をしながら、俺は深くため息をつく。

 写真の前だといっぱい告白も好きも言えるし、緊張もしないんだけどなぁ。妄想の中なら、天ちゃんもデートしてくれて、お付き合いもしてくれるんだけどなぁ。


 でも、現実は違う。俺はデート誘えないし、それに天ちゃんがデート来てくれる可能性は限りなく0に近いし。


 天ちゃん人気者だし、俺なんか眼中にないだろうし、創立祭はイケメンの先輩とかと……ああ、ヤダヤダ! そんなのヤダぁ!!! やっぱり誘おう、やっぱり告白しよう!!! この創立祭で天ちゃんへの告白、絶対する! 成功失敗関係ない、とにかく自分の想いを伝えるんだ!!!


「音夢さん! 大好きです!!! 俺と付き合ってください!!! んちゅ……ハァ……」

 ……なんか勢い任せに写真の中の天ちゃんにキスしちゃったけど、これ罪悪感と虚無感が半端ないな。

 なんかもう虚しい気分で、天ちゃんに申し訳ない気分で……ハァ、ヤバ。


「太雅、お風呂張れたよ~! 先入って、姉ちゃんの残り汁飲まれるの嫌だから!」

 そんな虚無感で机に突っ伏していると、大学生の姉からそんな失礼な声が聞こえてくる……誰が飲むか、そんなの! ばっちぃな!


「思春期ってそう言うもんでしょ? とにかく、お風呂入っておいで~」


「どんな思春期だよ、それ! お風呂は入るけど!」

 この姉は、俺の事なんだと思ってるんだよ、もう! お風呂は入るけど!!!


「……ハァ、ダメだな、俺……アハハ」

 正直、天ちゃんの残り汁なら飲みたいな、って考えちゃった。

 ダメダメ、そんな事考えたら! 変態さんは嫌われる、そもそもそんな関係じゃないでしょ、俺たち!


 とにかくデート、そして告白だ! 俺は創立祭で、天ちゃんと一緒になるんだ!



 ~~~


「ほわ~、太雅さん、今日もカッコいいです~、美しいです。大好きですわ、太雅さん……ほわ~」

 やはり太雅さんはカメラ越しでもカッコいいですわ、大好きですわ! 惜しむべきは音声が入らないことですけど、それはしょうがありませんわ。盗聴器を仕掛けるのは、流石に犯罪ですからね!


「ほわ? その写真、私と太雅さんの……ほわ~!?」

 太雅さん、今私の写真にちゅーしましたか!? 写真に写る私にちゅー……ほわ~!? ほわわ!?


 た、太雅さん、そう言うのダメですわ! そ、そう言うのは現実でして欲しいですわ! 太雅さんには、私の事をめちゃくちゃに……ほわ~! ほわわ~!!! ほわわわ、ダメですわ、ダメですわ、気持ちよすぎますわ、太雅さん……もっともっと、音夢の事を……ほわ~、ほわ~!!!


「音夢さん、大丈夫ですか?」


「や、矢崎さん!? だ、大丈夫ですわ!!!」

 ほ、ほわ~、少し取り乱しましたわ。冷静冷静、あまりはしゃぎすぎると、太雅さんに嫌われますわ、太雅さんの日常生活、切り抜けなくなりますわ。


 しかし、太雅さんは何を言ったんでしょうか? 音声が入ってないことが残念ですわ、太雅さんがもし、私の事好きとかおっしゃってたら……ほわ~、いけませんわ、太雅さん! そんなとこ触られたら私……ほわ~! ほわわ~!!!


「お、音夢さん!?」


「ほわ!? だ、大丈夫です! 大丈夫ですわ、矢崎さん!」

 いけません、私ったらまたはしたない……あ、あれ? 太雅さんがどこか行かれますわ?


 どこに行かれるのでしょうか? お風呂とかでしょうか……太雅さんのおふろの残り汁なら、私飲んでみたいですわ。太雅さんの残り汁で、ご飯炊いたり、スープ作ったり……ほわわ、それはとても、美味なんでしょね……ほわ~!


「ほわわ~、太雅さん、好きですわ~……大好きですわ、太雅さん」

 壁に立てかけてある、等身大太雅さんパネルにキスしながら。

 太雅さんが戻るまで、私はベッドで太雅さんと……ほわ~、ほわ~~!!!


「お、音夢さん!? 本当に大丈夫でしょうか!?」


「ほわ、太雅さん……ほわ!? だ、大丈夫ですわ! 気にしないでくださいまし、矢崎さん!!!」



 ~~~


 放課後の校舎裏。

 夏の陽気が届かない、涼しくて、どこか寂しいそんな場所。

「ずっと前から先輩の事が大好きでした! 私と付き合ってください!」


「ごめん、無理。美桜ちゃんは無理かな」


「なんで!? なんでですか、先輩!?」

 そんな校舎裏で、私は何度目かわからない失恋をしていた……なんで!? なんでですか、先輩!?


「いや、顔は可愛いし、性格もいいよ、美桜ちゃんは。正直、俺にはもったいないくらいの、いい子だと思ってるよ」


「じゃあ、良くないですか!? 私と付き合ってくれませんか!?」


「でもさ、美桜ちゃん性欲ヤバいらしいじゃん」


「……はえ?」


「噂になってるよ、美桜ちゃんの性欲。美桜ちゃん、本当に凄いらしいじゃん。休みの日は1日中求めてくるし、普通の日も部活終わりに何回も……それで身体が持たなくなって、別れたって」


「あ、あ……あああ!!!」

 ああ、思い出したくない記憶、思い出してきちゃった!!!

 田中君と毎日してて、毎日私の方から求めてずーっとエッチしてて。

 休みの日に「デートじゃなくて、1日中エッチしたい! ずーっとエッチして、繋がってたい!」って言ったら「できるか! 俺は普通にデートしたいんだ! 健全に美桜と付き合いたいんだ! それなのに毎日SEXSEX……もうヤダ! 別れる!!!」って……ああ! ああああ!!!


「その様子、ホントみたいだね……と、とにかく、そんな性欲強い子は、俺じゃ無理かな。ごめんね、美桜ちゃん。多分あらわれるよ、その……美桜ちゃんの性欲、満たしてくれる人!」


「あ、はい……ありがとうございます」

 やばい、トラウマが……だって、我慢できないんだもん、彼氏と居たらずっとムラムラして、濡れてきちゃって、それで……我慢できないんだもん! 性欲が止まらないんだもん、アレが欲しくて身体が疼くんだもん!!! しょうがないじゃん、私の身体がムラムラ止めてくれないんだもん!


「……そんな性欲ヤバいなら、セフレとか作れば? 美桜ちゃん可愛いし、多分誰でも乗ってくれると思うけど」


「え、それは嫌です。セフレは絶対嫌です」

 だって愛がないじゃん、それは!

 私は愛あるエッチじゃないとときめかないの、大好きな人と繋がりたいの!!! だからセフレはヤダ、嫌です!!!


「そ、そっか……ま、とにかく頑張れ! じゃあね!」


「はい、ありがとうございました……じゃあねです」

 ……また失敗だ。これでもう、田中君から5連敗だ。


「ハァ、彼氏欲しいなぁ……ホント、彼氏欲しいなぁ……ハァ……」

 ……出来るのかな、私に? 不安なってきた。

 私とちゃんと付き合ってくれる男の子……そんな優しい人、出来るのかなぁ?


「……ハァ、彼氏欲しいなぁ……彼氏が、欲しいです……」



 ★★★

 唐突に書きたくなったので。

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