風花ちゃんの好き

《中学時代の話》


「ねえ、風花ちゃん。黄泉先輩の告白断ったってホント?」

 とある10月の放課後、いつも一緒に居る幼馴染の風花ちゃんにそう尋ねる。

 あのイケメンサッカー部のエース先輩に告白されて、しかも断ったってマジなのかな?


「う、うん……断ったよ。風花、黄泉先輩とはお付き合い出来ないって、断った」


「あ、ホントなんだ……ちょっと嬉しいけど、もったいないよ、風花ちゃん。あの人モテモテでサッカー上手で将来有望だよ? 多分幸せだよ、お付き合いしたら」


「そ、そうだけど……だって、風花、悠真君とかと……風花ちゃん、お付き合いできませんでした」


「そっか……この前も野球部のエースの妻鹿さんの告白断ってたし、その前も……てか、なんか最近モテモテだね、風花ちゃん。嬉しいけど、寂しいし……なんかヤダな」

 体育祭の準備の時くらいから風花ちゃん急にモテ始めたんだよな、風花ちゃん……なんか寂しいし、ちょっとジェラシー。


 いつも一緒の風花ちゃんとは今回たまたま別の組になっちゃったから、風花ちゃんに何があったのかは知らないけど、なんか気づいたらすごいモテモテになってて。

 色々なイケメンで人気のある先輩に次々に告白されるようになって。


 風花ちゃんが幸せになったり、色々な人に好かれるのは嬉しいけど、でもなんか、こう……俺がいない間の事で、寂しいし、ちょっと色々嫉妬……って風花ちゃんが幸せになるのは嬉しいけどね! それはものすごく喜ばしい事なんだけど、でも個人的に……て、てか、なんで断ってるの、風花ちゃん! イケメンだし、将来有望さんだし!


「えへへ、寂しいの、悠真君? 大丈夫、風花はいつも、悠真君と一緒に居るよ。風花は、悠真君と、ずっと一緒だよ……悠真君は、見てるだけで、幸せだもん、一緒に居ると、いっぱいドキドキぽかぽかするもん……だから絶対、悠真君とはずっと一緒に居るよ」


「あ、ありがと、風花ちゃん。俺もずっと一緒に居たいな、風花ちゃんとは……でもそれとこれとは別だよ、風花ちゃん! あんなにカッコイイ先輩たちの告白次々と断るなんてもったいないよ、風花ちゃん!」


「えへへ、私もだよ、悠真君……うぎゅ!? だって、それは……ドキドキ、しないんだもん。風花、告白してくれた先輩さんの人たちと、一緒に居ても、その……あんまりドキドキ、しないんだもん」


「ドキドキ?」


「うん、ドキドキ……あのね、悠真君とか、女の子の友達と一緒に居ると、ドキドキしてふわふわするの。ドキドキ温かくて、幸せな気分になるの。でもね、先輩さんとかの、悠真君以外の男の子と一緒に居てもね、そんな気分にならないんだ……はっ!」

 もじもじバツが悪そうに指を絡めながら話していた風花ちゃんが、突然思いついたようにポンと、可愛い顔を俺の方に向ける。


「ん、どうしたの、風花ちゃん? 何か思いついた?」


「うん、大発見! 風花ね、女の子の事が、好きなんだ! 男の人より、女の子の方が好きなんだ! 風花、女の子が好きだったみたい!」


「え、そうなの? そうなの、風花ちゃん?」


「う、うん! 風花、女の子が好きなんだ……だから、悠真君以外の男の子と一緒に居ても、ドキドキとかしないんだ。そっか、風花、女の子好きだったんだ……自分で自分を大発見!」

 そう楽しそうに言いながら、おー、と嬉しそうにガッツポーズをする風花ちゃん。


 なるほど、女の子が好きなのか風花ちゃんは……なんか納得で応援したいかも!

 確かに風花ちゃん小さい頃から俺にべったりで、男の人と一緒に居るとこ見たことないし、それに女の子と遊んでるときすごく楽しそうだし!


 こっちまで嬉しくなるくらいに楽しそうだったけど、女の子が好きだったのか、風花ちゃんは! 

 最近友達の紹介で百合小説読んでたこともあって、なんか、こう……すごく、良い! すごい応援したくなる、風花ちゃんの事!


「えへへ、ありがと、悠真君。悠真君が応援してくれるなら、私も頑張れる……えへへ、こんな大発見しちゃったら、ちょっと疲れちゃった。ねえ、悠真君、今日も行っていい、お家? 悠真君のお家、行っていい?」


「俺はいっぱい応援するよ、風花ちゃんの事! もちろん、お家に来るのは大歓迎! 今日はお母さんが美味しいおやつも用意してくれてるし、一緒に食べよ!」


「え、ホント! やった、風花、嬉しい……えへへ、それじゃあ今日も、悠真君と一緒に、帰ります! 風花、悠真君のお家に、行かせていただきます……えへへ、悠真君、ふへへへ……えへへ」

 ふんわりぽかぽか可愛い笑顔で笑った風花ちゃんが、ぴとっと俺に引っ付いて、首をコテンと俺の肩に擦り付けながら、甘えた声でコロコロ鳴く。

 風花ちゃんが帰り道によくする、疲れた可愛いヘロヘロポーズ。


「……えへへ、悠真君にこうしてぴとってしてると、いっぱいドキドキして、身体、ポカポカして、ふわふわ幸せな気分、なる……えへへ」


「ふふふっ、それいつも言ってるけど、ホントなの?」


「ふへへ、ホントだよ~……えへへ、見てるだけでも、そうなるのに、こうするともっと、効果抜群……えへへ、やっぱり、悠真君は、特別。悠真君は男の子だけど、すごくドキドキふわふわする……えへへ、やっぱり特別だ、悠真君は。風花の特別な人だよ、悠真君は……えへへ、風花の悠真君」


「えへへ、ありがと。いつもありがと、何度聞いても嬉しいな、風花ちゃんにそう言ってもらえるの! 俺も特別に思ってる、すごく大事な幼馴染だと思ってるよ、風花ちゃんの事!」

 なんたって俺は風花ちゃんと十数年ずっと一緒に居る、大の仲良し幼馴染ですから!

 風花ちゃんことは誰よりも知ってるから! 今日もまた新しい風花ちゃん知れたし!


 だから風花ちゃんがどんなになっても一緒に居るし、ずっと応援するよ……風花ちゃんが大好きな女の子と一緒になれるまで、いっぱい応援するね!

 風花ちゃんの恋、誰よりも応援します!!! 


「にへへ、ありがと、悠真君……えへへ、悠真君♪」


「うん、風花ちゃん! 頑張ろうね、大好きな女の子と付き合えるように! 世間からの理解は難しいかもだけど、風花ちゃんなら大丈夫だよ!!!」


「うん、悠真君……ありがと……えへへ、なでなで、風花、好き」


「どういたしまして。ふふふっ、風花ちゃん」


「うへへ、ぬへへ……ん~、悠真君、んんっ……えへへ」

 甘えモードが加速したのか、さらに身体をぴとっとくっつける風花ちゃんの、すりすり甘えてくる頭をなでなでする。

 小さい頃からやってる、風花ちゃんがいっぱい大好きで喜んでくれる大好きコンボ。


「えへへ、悠真君……えへへ」


「うん、風花ちゃん! 風花ちゃん!」

 やっぱり風花ちゃんは最強だな。

 ずっと可愛くて、甘えん坊で、女の子が好きでゆりゆりで……最強の幼馴染だよ、風花ちゃんは。



「ぬへへ、悠真君……ふふふっ」

 ―悠真君のドキドキ、他の人と違うな。やっぱり特別な幼馴染さん。

 悠真君といると、他の人とは比べ物にならないくらいドキドキして、ふわふわ幸せな気分で……えへへ、やっぱり悠真君は、風花の特別です。女の子じゃないけど、悠真君は特別……だからずっと、風花は悠真君とは一緒に居たいな……幼馴染で、特別な、悠真君と。



 ★★★

 クリスマス回にしようと思ったんですが、長かったので一旦中学の話。

 明日多分、クリスマス。


 感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る