風花ちゃんとクリスマス 前編

《半年くらい前》


 華やかに装飾されたツリーに、テーブルに並んだチキンと豪華な食事。

 ここはクリスマス、お祭り騒ぎ。


「メリークリスマス……って今年は風花ちゃんと二人だけど」


「め、メリークリスマス! えへへ、そうだね、悠真君と二人っきり。由美ちゃん、彼氏さんとデート行っちゃったもんね。でも嬉しいよ、悠真君と一緒で……えへへ」

 そんな豪華な内装に反して、中にいるのは俺とほわほわ楽しそうに笑う風花ちゃんの二人だけ……まぁ中学の時からずっとこんな感じなんですけど。


 俺が中学生になったころから、「もう子供たちだけでも大丈夫だよね!」とか言って、親たちは俺たちを放っておいてクリスマスデートを勝手に楽しむようになった。風花ちゃんを俺の家に預けて、両方の親とも二人の時間を過ごすようになった。


 いつもありがとうだし、クリスマスも料理とかケーキとか買ってくれてるから嬉しいんだけど、もうちょっと防犯意識とか持った方が良いと思います! 

 あと年甲斐もなくそんなイチャイチャしないの、幸せなのは良いことだけどね!


 まあ、そう言うわけで毎年風花ちゃんと妹の由美と3人でクリスマスを過ごしてるんだけど、由美は最近出来た彼氏君とクリスマスデートに出かけていて。

 中2なのにお泊りするとか何とか……全く、お母さんがいないからって張っちゃっけ過ぎ! 別に止めないし、幸せならいいんだけど! 


 でも、その……あんまりやばいことするなよ、節度もって付き合いえよ、由美!!!

 その、えっと……そう言う事したらお兄ちゃん許さない……ってなんかキモいな、やめておこう、これ以上は。


「ん~、切れない、このチキン、固い……んっ、んっ……ぷあっ! えへへ、やっと噛み切れた、固かった……でも、風花ちゃんの勝利……えへへ、悠真君、ぴーす!」

 まあ、そう言うわけで(2回目)、由美もデートに行った今年のクリスマスは固いチキンに悪戦苦闘した後、可愛い笑顔でピースをくれる風花ちゃんと二人きり。


 ゆるふわでほわほわな雰囲気で男人気は高いけど、昔から女の子が好きで、今はクラスメイトの難波ちゃんに恋する風花ちゃんと二人のクリスマス……だからこそ。

「う~ん、このサラダ美味しいね~。やっぱり、悠真君のお母さんの、作りお料理はおいしいな、また教えて、もらわないと。風花、お料理上手になって、悠真君とか翠ちゃん……ってあれ? どうしたの、悠真君? なんか、考え事?」


「あ、ごめん、風花ちゃん。その……」


「あ、わかった! 悠真君も、このチキン、食べたいんでしょ? これ、一個しか、ないからね! えへへ、風花の、食べかけで良ければ、どうぞ! ほら、あげるね、悠真君! あ~ん!」


「ううん、違う違う。それは良いよ、風花ちゃんが食べな。美味しかったんでしょ、それ?」


「うん、美味しかったよ! だから、悠真君にも、食べて欲しい! 美味しいものはおすそわけ、いつも、幸せ貰ってる悠真君におすそわけ……ほら、あ~ん! 悠真君に風花ちゃんがあ~んしてあげるよ。あ~ん」


「アハハ、ありがと風花ちゃん。それなら遠慮なく、あ~ん……mgmg……うん、美味しい! けどちょっと固くてスパイシーだね、これ。風花ちゃんが好きそうな味」

 風花ちゃんがもそもそちぎってあーんしてくれたチキンは、力がへにょへにょな風花ちゃんでは確かに嚙み切れなさそうな硬さで。

 でも一緒にいった俺が食べられなかった激辛ラーメンをペロッと完食するくらいに辛いもの好きである風花ちゃんが喜びそうなスパイシーさで……って違う違う。

 チキンは美味しかったけど、今はその話じゃない、風花ちゃんの恋の話だ。


「えへへ、風花の食べかけ、悠真君美味しいって……えへへ、悠真君の嬉しそうな顔見てると、風花も幸せな気分なって、胸がドキドキポカポカ……えへへ、悠真君、もう一口どうですか? もう一回、風花が、あ~んしてあげるから、もう一口食べませんか、悠真君?」


「いいよ、もう本当に大丈夫。風花ちゃんがお食べ。風花ちゃん好みの味だし、風花ちゃんがそれ食べてくれた方が俺も嬉しいよ」


「ぷー……風花好みは悠真君の……でも、悠真君が、そう言うなら、風花が食べる! 風花がこのチキン、美味しく食べるね……もぐもぐ……うん、おいひい! ふへへ、悠真君、すっごく美味しい……えへへ」


「ふふっ、良かった……ってまた流されるところだった。俺が話したかったのは風花ちゃんの恋の話だよ、クリスマスと言えば恋バナだから……ねえ、風花ちゃん、今からでも難波ちゃん誘って遊びに行けば? まだ6時だし、全然間に合う時間だと思うよ。難波ちゃんとどこか、遊びに行けば?」


「えへへ、もう一口、あ~ん……う~ん、美味しい! でも、やっぱりこの幸せ、悠真君と……ぷえ!? え、あ、み、翠ちゃん!? そ、それは、えっと……ううっ……」

 もぐもぐと美味しそうにチキンを頬張っていた風花ちゃんが、俺の声を聞いてぷえっと慌てたように口をもごもご、顔を青く……あ、やばい!


「だ、大丈夫風花ちゃん!? はい、お水! ごっくんして、ごっくん! 落ち着いて、風花ちゃん!?」


「う、うう……ごっくん……ぷぁぁ。ふえ、助かったです、悠真君……えへへ、悠真君のおかげで、風花は命が助かりました……えへへ、悠真君、ありがと……でも翠ちゃんの事、急に言うのはダメ。びっくりしちゃって、あわあわした」

 お水を飲んで復活した風花ちゃんが、俺の腕の中で、顔をキューっと赤らめながら、もじもじ恥ずかしそうに震えてそう言う。


 ちょっと早かったか、まだ。

 風花ちゃんと翠ちゃん、まだまだなのかな?

「ごめんね、風花ちゃん急に言って。そんなビックリするとは思わなかったから」


「ううん、大丈夫、悠真君は、悪くないよ、謝らないで……で、でもね、翠ちゃんは、その……今日は、誘えないです……い、いきなり、クリスマス一緒とか言ったら、そ、その……がっつきすぎで、え、えっちな女子とか、思われちゃったら、嫌だし……だから、無理だよ、翠ちゃんと二人とか」


「大丈夫だと思うけどな、風花ちゃんと翠ちゃんなら。だって友達でしょ?」

 風花ちゃんと翠ちゃん、親友と呼べるような間柄だし。

 だから誘っても大丈夫だと思うけどな?


「と、友達でも、ダメ、ダメダメ、好きだもん……そ、それに、今日は、悠真君と、二人で過ごしたいし。悠真君と、二人が良いから」


「え、俺と?」


「う、うん……だ、だって、昔から、ずっとクリスマスは、悠真君と一緒だし、悠真君と、一緒に居るのも好きだから。翠ちゃんといてもだけど、悠真君と一緒でも、幸せで、ぽかぽか気分なれるから……だから、悠真君と、一緒が良い。それに今日は、悠真君と、一緒に過ごす、予定立ててた。だから、悠真君と、二人のクリスマスじゃなきゃヤダ。悠真君と二人で、ゆっくり過ごしたい……だ、ダメ?」


「……わかった、良いよ。でも、それ、他の男の子に言っちゃダメだよ」

 風花ちゃん、すぐ勘違いされそうなこと言うんだから。


 今だって、上目遣いで可愛い表情をして、もじもじ恥ずかしそうにしながらそんなこと言って……ホント、好きな女の子以外にそう言う顔とそう言う事言っちゃダメだよ、風花ちゃん。

 勘違いされちゃって、変なことされたら、その……俺だってそいつに何しちゃうかわかんないし。だから絶対、そう言う事男の人に言っちゃダメだからね!


「えへへ、悠真君以外に言わないよ、悠真君は、特別なんだから……それで、悠真君? 風花と二人で、このままクリスマス、大丈夫ですか? 風花、悠真君と、このまま美味しいご飯食べて、面白いテレビ見て、それで温かいお布団でねむって、プレゼント貰って……そう言う事、したいです。風花のお願い、聞いてくれますか?」

 そう言う風花ちゃんは白くてほわほわな指をキューっと握り、唇をスッと結んで。

 ふんわりと、さっきよりもお願いモードな上キュートすぎる目づかいで俺の事をジーっと見つめて……ふふふっ、風花ちゃん!


「良いよ、わかった! 風花ちゃんが翠ちゃんとそう言う事する予定ないなら、俺は風花ちゃんと二人で過ごすよ! 今年もいつもみたいにもっと楽しもうね、風花ちゃん! 楽しい事、いっぱいしようね、今日は!」


「もう、翠ちゃんはダメ……えへへ、でも、そうだね! 風花も、いっぱい楽しむ! 悠真君と一緒に、いっぱい楽しくて幸せな事、する……えへへ」


「うん、そうだね……あ、でもお泊りはダメだよ! しっかりお家帰らないとね!」


「えへへ、悠真君と……あえ? な、なんで?」


「何でって、風花ちゃんのお母さん心配するし。だから帰りましょ、今日は……お泊りは、ちゃんとした時に、またすればいいからさ」

 正直言うと、風花ちゃんと二人きりで、クリスマスにお泊りは色々まずい気がするって言うのが本音だけど。


「う~、悠真君のケチ……けど、わかった。それまでに、悠真君と、いっぱい楽しめば、良いんだね……えへへ、それじゃあ、今日も、いっぱい幸せ、するぞ~! にへへ、よろしくね、悠真君♪」

 そう小さくガッツポーズしながら、にへへと俺に笑いかけてくれる風花ちゃんに俺も微笑みかける。

 風花ちゃんがそう言うなら、俺も楽しもう……風花ちゃんに喜んでもらえるように、俺も楽しむんだ!



 ~~~


「悠真君、風花、悠真君のケーキも食べたい。だから、あ~ん」


「良いよ、あ~ん……美味しい?」


「もぐもぐ……えへへ、すっごく美味しいよ、悠真君……悠真君が、あ~んしてくれたから、もっといっぱい美味しい、幸せ……それじゃ、私のも、あげるね。悠真君、あ~んして。今度は、風花が、悠真君にあ~ん、してあげる」


「ふふっ、ありがと、風花ちゃん。それじゃ、あ~ん……ふふっ、美味しい! 風花ちゃん、すっごく甘くて美味しい」


「えへへ、風花、甘々……悠真君が、嬉しいなら、風花、嬉しい……ぴとっ、すりすり~……ん~! ん~!」


「ふふっ、どうしたの急に?」


「もう、わかってるでしょ、悠真君……今日は、クリスマス、特別版が良いな……えへへ、悠真君の、特別版が、風花は欲しいな~……えへへ」


「ふふふっ、欲張りさんで甘えんぼさんだな、風花ちゃんは……それじゃあ、遠慮なく……ふふっ、ついでにケーキもあ~ん」


「あ~ん……ふふふっ、やっぱり、これ、好き……悠真君とこうやって、するの好き……温かくて、幸せで……えへへ、大好きな時間……えへへ、風花は、クリスマスも、悠真君のおかげで、幸せです……えへへ」



 ★★★

 前中後編になりました。

 明日もクリスマス。


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