第24話 可愛い風花ちゃん

「悠真君、風花可愛い? 風花のこの服、可愛いですか?」


「……え?」


「悠真君の大好きに、合わせたつもりです……風花、悠真君の大好き、なれてますか?」


「……え?」

 色々考え事して、ちょっと頭が回らなくて、しんどくて……そんな日の放課後、家のチャイムを鳴らして現れたのは可愛い幼馴染の風花ちゃん。


「だって、悠真君、こういう服、好きだよね……えへへ、昔お出かけした時も、褒めてくれたし……悠真君、風花可愛い? 悠真君の大好き、なれてるかな……えへへ」

 プリーツスカートの裾を持った風花ちゃんが、そう恥ずかしそうにはにかむ。

 その瞳は、俺の気持ちを確かめるように、俺に可愛いって言ってもらいたさげに、ドキドキと希望に揺れていて。


「……うん、可愛い。風花ちゃん、可愛いよ……すごい似合ってる」

 すごく似合ってる……というか風花ちゃん可愛いからどんな服でも似合う。


 チェックのプリーツスカートに、少し季節感外れの薄手のカーディガンを羽織ったガーリーだけど、でも清楚で可憐に見えるそんな服……正直、大好きだ。こういう風花ちゃん、凄い好きだ、大好きだ。

 本当に可愛くて、心の底からまた、大好きが……ダメ、俺の彼女、秋穂さん。


 そんな俺の言葉を聞いた風花ちゃんは、その希望の瞳をパーッとまた明るくさせて、

「やった、良かった! えへへ、悠真君が、可愛いって言ってくれて、風花、嬉しい。えへへ、嬉しいな……えへへ、風花、今、幸せ気分」

 ……そういや、春先に遊園地デート行ったときとも少し違うけど、こんな感じの服装だったな。


 あの時の風花ちゃん、すごく可愛くて、もっと大好きになって。デートも楽しくて、いっぱい可愛くて愛らしい表情とか色々な風花ちゃん見れて、幸せで……あの時デートだと思ってたのも、そんな気持ちになったのも俺だろうけど……ってダメだ、そんな事考えてたら。また思考が、変なところ行っちゃう。


「えへへ、可愛い、嬉しい……うへへ、風花、可愛い。悠真君の中の風花、すごく可愛い……えへへ、悠真君、風花の事、好き? 風花は、悠真の君の、可愛い大好きさんですか?」


「……うん、可愛いよ、風花ちゃん。その恰好なら、デートで難波ちゃんも喜んでくれるよ、きっと。難波ちゃんももっと、風花ちゃんの事好きになってくれるよ」

 ……風花ちゃんが俺の事、そんな風に思ってるわけないもん。


 風花ちゃんの大好きは、俺の大好きとは絶対違うから。

 風花ちゃんは多分、俺の意見を聞いて、難波ちゃんのデートに活かしたいだけだから、翠ちゃんと幸せデートしたいだけだから。

「え、翠ちゃん? 風花、悠真君の……」


「喜んでくれるって、難波ちゃんも! 絶対難波ちゃん、そう言う服好きだから!」

 だから、こう言うのが正解、こう言って風花ちゃんの事……こうしないと、俺がまた、風花ちゃんの事好きになってしまうから。大好きな気持ち、また溢れてしまうから。今の不安定な状況だと、少しなびいてしまうから。


「……風花は、悠真君に、大好きって……あ、ああ! そ、そうだ、悠真君。きょ、今日来た理由、忘れてた。その、最近、いつもの、してなかった。今日、したい……良い、ですか?」


「うん、絶対喜んでくれる、大好きって言ってくれる。それにいいよ、いつものも……翠ちゃんに、怒られない範囲でね。それじゃ、いらっしゃい」


「う、うん……風花は、悠真君が、悠真君の……でも、悠真君のお家、悠真君のベッド、悠真君の……えへへ、悠真君のお家、久しぶり……えへへ、悠真君の、家の、匂いだ……好き、幸せ。もうぽかぽか、大好き……えへへ、悠真君の匂い、好き」

 少し早口でもじもじして、どこか不安そうな風花ちゃんを家に招き入れると、その顔に愛らしい笑顔が戻る。

 良かった、風花ちゃん復活だ……好きとか気軽に言うのだけはやめて欲しいけど。


「好きとか言われたらまた……あ、そ、そうだ! 風花ちゃんなんか飲む? 多分風花ちゃんの好きなカルピスも、なっちゃんもあると思うけど」


「えへへ、悠真君の匂い、いっぱい、幸せ……え、ジュース? う~ん、それは……えへへ、今日は、大丈夫。お気遣い感謝、でも、今日は、悠真君のベッドで、幸せぽかぽか、する日だから。だから、今日は、良い。今日は、悠真君のベッド、だから」


「わかった、OK。でものど渇いたら言うんだよ、風花ちゃん。熱中症とかなったら大変だからね」


「うん、わかってる……えへへ、ぽかぽか幸せ過ぎたら、のど渇くもんね……でも、今日は大丈夫、だと思う……えへへ、悠真君の幸せ、お腹の中から、いっぱい感じて、幸せが、全部満たすから、大丈夫……えへへ」


「……そっか。それじゃ、俺の部屋行こうか。いつものするため、俺の部屋行こ、風花ちゃん……しばらく由美もお母さんも、帰ってこないし」


「う、うん! 行く、悠真君のお部屋、悠真君のベッド……えへへ、もう、楽しみ、もう、ドキドキぽかぽか、ふわふわ……えへへ、もう、悠真君で、風花、幸せ」


「……うん」

 そう楽しそうに笑う風花ちゃんを背中に感じながら、階段を昇って自分の部屋に向かう。


 大丈夫、昨日何となくベッドの掃除した、部屋の掃除はいつもしてる……だから大丈夫。風花ちゃんが来ても、大丈夫なはず。

 だから、うん……風花ちゃんは、幼馴染。大事で可愛くて、大好きで……でも、幼馴染だから。だから、大丈夫……風花ちゃんとは、大丈夫だから。

 絶対何も、おこっちゃダメだから。



「えへへ、楽しみ……えへへ、悠真君と、一緒になれる……悠真君と一緒になって、悠真君の事、いっぱい感じて、悠真君の幸せ、身体も心もいっぱい……ふへへ……大好き、いっぱい欲しいな、悠真君の……風花をいっぱい大好きで、幸せにして欲しい……えへへ……」



 ~~~


「翠? なんか調子悪げじゃない?」


「……最近、風花が。野中、野中って……野中って!!!」


「おー、こわ……でも、あの二人幼馴染でしょ? 別にいいじゃん、ずっと仲良しなんだし」


「そんなんじゃないんだって、もう……今の彼女は私のなのに! 今の風花の恋人は、私なのに!!!」

 ―なんで野中ばっかりなの、最近ずっと考えてるじゃん、デートの時もずっと考えてたでしょ、私の事全然見てくれてないでしょ!!!


 ―私は風花の事大好きなのに、私は風花しか見てないのに! 風花の事大好きで、ようやくあの人気投票のおかげで両想いって気づけて……あ、あれ? あれ?


 ―風花って、最初から……あ、あれ? 風花最初から私の事、あの時も、私の事言って……もしかして、私が勝手に盛り上がって、私が大好きって言わせて……違う違う違う! そんな事ない、そんな事ない!


 ―私と風花は両想い、私と風花は大好き……でも、あの時、風花……あの時から風花は、ずっと……違う違う違う! 違う違う! そんな事ない、絶対違う! 風花と私は両想い、ずっと大好き同士なんだから! ずっとずっとそうなんだから!


 ―野中が全部悪い、あいつがたぶらかしてんだ! あいつが私に嫉妬して、それで幼馴染の風花を……全部あいつが悪い! あいつが私を大好きな風花を、私の事を愛してた、愛してた……風花? 風花、大好き……大好きなのに、風花の事。私は風花が大好きなのに……風花は、風花は……



 ★★★

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