第5話 だったら俺は
「野中君嘘だよね! お姉ちゃんと付き合ってるなんてそんな事ないよね!? だって今日私の……嘘だよね、そんなバカみたいな話ないよね!?」
「言ってくれたよね悠真君! 私の事可愛いって、私の事好きだって……そう言ってくれたよね? 絶対言ってくれたもん、絶対だもん……嘘なんて嘘だよね? 私の事、好きって言ってくれたもん……言ってくれたもん……」
「あ、え、あ……そ、その……」
キレイな顔に青筋を浮かべながら怒気の混じった運動部の大声を放つ藤井さんとうるうる涙を両目に溜めて、小さく消えそうな声でシュンと俯く秋穂さん。
そんな似てないようで、でもやっぱり似てる姉妹に迫られながら。
「野中君! 野中君……悠真!!!」
「……悠真君」
助けたとはいえ姉をナンパした男に、甘い言葉だけ囁いて、それを嘘だと逃げようとすると男。どっちに転んでもクソ男、何があっても言い訳無用のクソ野郎。
「私の方がずっと一緒に居たよね! ねえ悠真、私に投票したんでしょ? ねえ、ねえ! 私の事だって……悠真!!!」
「悠真君……ゆーまくん……」
それなら俺は。
どっちに転んでもダメ男なら、だったら俺は……
「……う、嘘です! 嘘ですよ、それは!」
『え?』
「だ、だからその……嘘、です! 嘘ですよ、秋穂さん! 同級生の前だから恥ずかしくて、ちょっと嘘ついちゃっただけです。あとちょっと秋穂さんが本当に好きか試したくて……ご、ごめんなさい。全部言いましたよ、秋穂さんの事好きだって、お付き合いしたいって。秋穂さんは俺の彼女です、もちろん!」
……だったら俺はこうしたい。
こうなったら俺はこうしたい―秋穂さんの事、好きなりたい。秋穂さんの事もっと知って、それで……自分で言ったように秋穂さんの事、大好きになりたい。
好きな人……好きだった人からどう思われようと俺はその……嘘ついて人を騙して泣かすのは嫌いだ。そんな事、絶対したくない。
「ゆ、悠真君……悠真君!!!」
「ごめんなさい、秋穂さん。その……ごめんなさい」
「もう、もう!!! もうもう!!!」
……だって秋穂さんの涙見たくないし、俺がいつもの調子のせいでナンパまがいの事言ったのも事実だし。
それに秋穂さんすごく可愛いし。小学生だと思ってたからからかう感じですんだけど、でも……ちゃんとわかったら今なら絶対、もっともっと好きになれるから。
秋穂さんの言動、年上だとわかったら無邪気で可愛すぎて、それで⋯⋯絶対メロメロになる自信あるから。秋穂さんの魅力に憑りつかれそうだから。
それにもし秋穂さんと付き合えばもっと藤井さんと仲良くなってゆくゆく……ってこれはダメ、絶対ダメ! 俺の彼女は秋穂さん、秋穂さんを大好きになるんだから!!!
今はその……まだ藤井さんの方が好きだけどでも絶対秋穂さんを大好きになるんだから!!!
ほら、今もちょっと泣きそうな顔で俺の胸にボーンと飛び込んできてる……めっちゃ可愛い、秋穂さんすごく可愛い! めっちゃ可愛い!!!
「もー、悠真君!!! そう言ういじわるしないでよ、心配だったし悲しくなっちゃったでしょ! お姉さん泣いちゃいそうになっちゃった!!!」
「ごめんなさい秋穂さん……本当にごめんなさい、少し心配で」
「もー、大好きは疑わないで! 大好きだよ、悠真君の事私大好き!!! 大大大大だーい好き!!!」
「……僕もです。僕も秋穂さん、可愛くて好きですよ」
「悠真君、私も! 私も大好き、だ~いすき……うへへ、大好きだよ、悠真君」
ぎゅーっと甘く抱き着いて、ほわほわの柔らかい身体をころころ押し当ててくる秋穂さんの頭をナデナデ優しく撫でる。
ごめんなさい、本当に……でも絶対本当にしますから……本当になりますから!
「なんでお姉ちゃんのほうが、私の方が……こほん。はいはい、私がわるぅございました! 私が変なこと言ったのが悪かったでーす! それじゃあ私、2階上がってるから。二人は気にせず、イチャイチャしててね」
そんな俺たちの様子を見て、呆れたように唇を噛んだ藤井さんがそう冷たい声で言い放ってテクテク2階に上がっていく。
ごめんね、藤井さん、その……で、でも秋穂さんの事は絶対大事にしますから!
絶対に大事にするから安心してください!
「えへへ、悠真君そんな強くなでなでしちゃやーや、お姉さん壊れちゃう。悠真君の大好きに潰されちゃう……それはそれで良きかもだけど」
「……え、あ、ごめんなさい、秋穂さん! すぐやめますね!」
「あん、別に離れなくても良かったのに……で、でもアイスまだ残ってたもんね、食べなきゃ溶けちゃうもんね! えへへ、続きしよ、さっきの続き!」
そう言って僕の手を取ってぺたぺたとリビングに向かう。
……リビングにおもちゃとかなくて凄いな、って思ってたけど当たり前だ、大学生と高校生なんだもん、この家に住んでるの。そりゃあるわけないや、おもちゃなんて。
「……悠真君? 悠真君!」
「あ、ごめんなさい秋穂さん。どうかしました?」
「うん、また悠真君のお膝のとこ座りたいなって思って! あそこ、私すごく好きだから……またお座りしていいかな?」
「も、もちろんです! いくらでも座って良いですよ、秋穂さんなら!」
「えへへ、やったー! ありがと、悠真君、それじゃあ失礼して……うふふっ、やっぱりここ好き。悠真君に包まれてるみたいで安心して、大好き……えへへ、大好きだよ、悠真君……本当に好き」
パーッと無邪気な笑顔で俺の膝にダイブして、すりすりとほっぺを胸に擦り付けてくる秋穂さん……やっぱり可愛いです、秋穂さん。
小学生じゃないとわかった今、その魅力が容赦なく降りかかってます、やっぱりすごく可愛くて……んふふっ。
「んふふっ、も~、悠真君ナデナデ好きすぎ。今はだめよ、ちょっと緩いのにアイスもお顔もとろとろになっちゃうよぉ」
「へへ、ごめんなさい。すっごく可愛いですから。しかも撫でやすい位置にあるのでついやっちゃいます、秋穂さん小さくて可愛いですから」
「も~、頭なでなでも好きだから良いけど。んふふっ、ふふっ……あ、で、でもあんまりされるとお姉さんなでなで……ってあれ? もしかして私の事、また子供扱いしてる? また小学生と勘違いしてる? 悠真君ってもしかしてロリコンさん?」
「いえ、そんな事ないですよ。ちゃんとわかってますよ、秋穂さんの事。それにロリコンでもないです、秋穂さんが可愛いだけですから」
「え~、どうかな? 最初は私の事小学生だと思って好きって言ってくれたみたいだし……やっぱりロリコンさんだよ、悠真君は! ロリコンさんはダメ、絶対ダメ……えへへ、そんな悠真君は私のお姉さんおーらでめろめろにしなきゃだね! 悠真君のロリコン直すために秋穂お姉さんがお姉さんおーらでむんむんで大人のみりょくにめろめろのほねぬきにしてあげるからね!」
そう言って俺の膝の上で、薄い胸をででーんと張る。
……お姉さんオーラに大人の魅力ねぇ。
「……秋穂さん、俺のアイス食べますか? もう一口、いかがですか?」
「え、くれるの! やったー、食べる食べる! あ、あーん……うん、美味しい! えへへ、すっごく美味しいよ、悠真君!」
……やっぱり大学生というか大人の魅力には程遠いよな。
無邪気な天使の笑みですっごく可愛いくて、愛おしくて……ふふふっ。
「……悠真君? どうしたの、そんな優しい顔して……あ、お姉さんおーらにめろめろになったんでしょ! 私のお姉さんおーらがむんむん過ぎてほわほわしちゃったんでしょ!」
「……ふふっ、そうかもです。やっぱり秋穂さん、魅力的です」
……でもその感じが可愛いな。
そんなところがやっぱり……すごく魅力的で可愛い人だ。自然体がすごく魅力的な人です。
「んふふふっ、も~、そんな褒めないでよ悠真君……えへへ、私も大好きだよ、悠真君……私もめろめろです、悠真君に」
……僕も結構メロメロですよ秋穂さんに。
秋穂さんの魅力、ちゃんと伝わってますから。
「……ちっ、意味わかんない意味わかんない! なんでお姉ちゃんが……私の方が絶対先に……」
★★★
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