第19話 ぽわ~
「おい、なんか視線感じね? さっきから凄い視線感じね?」
「ん? あー、風花ちゃんだよ。別に気にすることないよ、いつものだから」
「……気になるなぁ……」
そう太雅は言うけど、でもこれはいつものだからしょうがない。
昔から風花ちゃんはぽけー、っとしながら目線をくれることがあったし、多分風花ちゃんの癖みたいなものだろう。
だからこういう時は一発、ピースでもしてサービスしましょう!
~~~
「ぽえー……」
悠真君、お腹空いてるのかな?
なんかちょっと元気が……あ、でもピースくれた。風花嬉しい。
「ぽえー……」
「……風花? 風花? 風花! 風花、何してるの? 何してるの、風花?」
「ぽえー……ぽえ? あ、ごめんね、翠ちゃん。風花ね、悠真君の事、見てた。悠真君何してるかな~、って、悠真君今どんなこと考えてるかな~、って思いながら、見てた」
「何で見てるの? なんで野中の事見てたの? 見る必要も、野中の事考える必要もないんじゃない、今の風花には? なんで見てたの?」
「え、なんで? なんでって、それは……落ち着く、から? 風花ね、悠真君の事見てたらね、身体がんr、ほわほわぽかぽかして落ち着くんだ。だからね、見てた。風花ね、小さい頃から、悠真君の事、見るの好き。悠真君見てると、風花ふわふわなる、風花幸せな気分になる。最近、チャージ出来てないから、風花、悠真君を、チャージしようと思って……風花ね、悠真君とのね、幸せ時間、またチャージして、もっと、幸せ……えへへ」
「……今の彼女は私なんだけど。風花、野中の事好きなの? やっぱり男の方が良いの? 私よりやっぱり、男の野中の方が良いの?」
「え、好き……ち、違う! その、私が好きなのは翠ちゃんだよ! 私の大好きは翠ちゃんだけだよ……そ、その悠真君は、特別。悠真君は風花の特別、風花の優しい幼馴染さん……だから大丈夫だよ、翠ちゃん。私の大好きは、翠ちゃんだけだから! 私は、翠ちゃんが一番大好きだから……悠真君は、風花の特別さんなだけだから……ぽえー……」
あれ、悠真君また歩美ちゃんと話してる。
最近仲いいな、あの二人……しかも、なんか悠真君も歩美ちゃんも……もしかして、あの二人……や、ヤダな。風花、それ、なんかヤダ。
何でかわかんないけど、風花やな気持ち……悠真君が歩美ちゃんと仲良しするの、もやもやする、風花の心臓ズキズキしちゃう。風花、なんでかしんどくなっちゃう。
「悠真君……仲良し、ヤダ……風花だけ……」
「風花! 風花!」
「……え? あ、大丈夫だよ! 風花、全然大丈夫! 私が好きなのは、翠ちゃんだけだよ、本当に! だから大丈夫、翠ちゃん!」
うー、危なかった、私反省! ダメダメ、悠真君の恋に口出ししたら!
私も翠ちゃんいるもん、悠真君だって自由に……で、でも風花的にはやっぱり……風花は……
「ゆ、悠真君……風花……」
風花的にはやな気持ち、大きくなってる。
悠真君が他の女の子と、仲良くなって、お付き合いする……わかんないけど、風花はしんどくなっちゃいます、嫌な気分なります……風花、悪い子なのかな?
「悠真君……ぽぇ……」
「……何が大丈夫なの、それ。全然大丈夫じゃないって……何も大丈夫なわけないじゃん……」
~~~
「ねえ、悠真? 昨日は楽しかったね。今日もお楽しみ、するの? あれ、今日は最後までする日だっけ?」
「……その聞き方やめて、歩美。今日は行かない、秋穂さん、今日授業5コマまであるでしょ。だから今日は無理、家に帰ります」
「ふふっ、今日はそうだったね……でも、私はなくても来てくれたらいいんだけどね、悠真には。悠真はいつでも私のとこ、来てくれても良いんだよ」
「……ありがと。でも、俺が行くのは秋穂さんいる時だけ」
「え~、残念! 私は大好きなお楽しみ、悠真としたかったけどな!」
「……秋穂さんがな!」
―え、大好き、お楽しみ、最後まで? なくても来てくれる? え、それってまさか……え、あの二人……え!?
「どうしましたか~、美桜ちゃん? 何かありました~?」
「いや、天ちゃん、あの、その……彼氏欲しいな~、私も! あ~、彼氏欲しい! 天ちゃんもそう思わない!? 私彼氏欲しい!」
「ふふふっ、私は心に決めたあのお方が居ますので……ぽっ」
「ううっ、なんか幸せそう……やっぱり彼氏欲しいよ~……白馬の王子様とかいらないし、普通の彼氏さん……あ~、彼氏欲しい!!!」
☆
「悠真、今日の夜ご飯、すき焼きだってお母さん言ってた。食べて帰るでしょ、うちで? 一緒に帰ろ? 私部活休みだし、今宵は悠真と一緒が良いな」
秋穂さんと付き合い始めて、歩美と色々あって……そんなごたごたからしばらく経ったとある日の放課後、歩美にそう誘われる。
「すき焼き? 良いね、それ。でも俺は後から行くよ、良い感じの時間に行く。今日は最後までする日だからね、歩美は先に帰ってて」
今日は秋穂さんが最終コマまで授業のある日、夜遅くなるから普段は会えない日。
だからすき焼きという美味しい料理を食べながら、秋穂さんと会ってほわほわして……そう言う事が出来るのはすごく嬉しいんだけど、歩美と一緒に帰るのはちょっとまだ勘弁。
最近はおとなしくなったというか、まだ学校でその関係を言うのはダメ、と言ってるとじゃ言え俺と秋穂さんの関係を認めてくれたというか……そんな雰囲気はあるけど、でもまだちょっと怖い。
二人きりになった時に何されるかわかんないから二人で帰るのはちょっと怖い。
そんな気持ちを抱えながら、でもそれを表に出さずにやんわりと断ると、それをも予想してた様にニヤニヤと笑いながら、
「ふふっ、悠真素直じゃないもんね、そう言うと思ってた。いつまでも私の事素直にだいす……こほん。でもね、私と悠真が一緒に帰るのは今日は確定事項、絶対帰らないといけないの。ほら、これ見てみて」
「何でそんな自信たっぷり……おわ、ホントだ。めっちゃ命令されてる。お義母さんも秋穂さんもノリノリじゃん」
自信満々に手渡されたスマホの画面を見ると、家族LIMEの中でお義母さんと秋穂さんが『悠真君と歩美、お買い物行ってきて! すき焼きの材料、あと卵!』『よろしく、二人とも! あ、みんなで食べられるデザートも歩美ちゃんと悠真君よろしく!』とのメッセージ。
完全にお使い頼まれてるな、俺。しかもあっちは俺と歩美はすごく仲良しだと思ってるから、めっちゃ親密な感じな……まあでも、二人に頼まれたら断れないんですけど。流石にこれは腹くくって買い物行くしかないんですけど。歩美と二人きりはちょっと怖いけど、二人で行くしかないんですけど。
「も~、最初から素直になってよ、悠真。私と二人でお買い物、行くよ。悠真と私で今日の夜ご飯の材料、買わなきゃなんだから」
「アハハ、そうみたいだね。わかった、行きますよ……直接買い物行くの? 家に荷物置いてからにする? 俺は荷物案まないけど、歩美は結構あるでしょ?」
部活が休み、と言っても歩美の荷物は結構多そうだし、なんか重たそうだし。
だから一回帰った方が良いと思うんだけど。
そう言うと、歩美はプルプル首を横に振って、
「ううん、一回帰ると行きたくなくなるし、悠真もやる気無くすだろうし直接行くのが正解! それに直接行った方が……えへへ。ね、悠真?」
「ちょっと分かんないけどまあいいや。わかった、直接買い物行こ……あ、でも俺、お金持ってないよ、今日」
「ふふっ、大丈夫、お金は貰ってるから。だから買い物は安心して……ちょっと多めに貰っちゃったから、二人で放課後デート、してもいいけど。私とデートしても良いんだよ、悠真?」
「その言い方やめて、大丈夫だから」
「も~、ホント素直じゃないよね、悠真は……大好きなんだから素直になればいいのに……取りあえず買い物行こう! 美味しいすき焼きのために、二人でお買い物! 悠真と二人で制服でお買い物! 悠真と二人!!!」
「OKOK。行きましょ、すき焼きのために!」
元気よくおー、とこぶしをあげる歩美と同じように、俺も拳をあげる。
買い物の後は着替えって言って家に帰ればいいし、それに買い物中は二人きりにならないから歩美も何もしてこないだろうし!
だから大丈夫、今日は大丈夫なはず! 大丈夫だよね?
「あ、悠真君がまた……ゆ、悠真君、風花は……」
「風花! 今日は私とデートでしょ、デートだよ! 野中の事見てないで私に集中してよ!」
「ゆ、悠真君……あ、うん、ごめんね、翠ちゃん。私、ちょっと……ごめんね、風花、でも、悠真君……ううん、ごめん。私、良い。翠ちゃんと一緒が良い」
「……いいよ、デート楽しめれば。私との放課後デート、楽しめればいいよ」
「う、うん! 私、楽しむ! 翠ちゃんが楽しんでくれるようにも、私頑張る!」
「……そうだね」
―良くないよ、やっぱり全然。何なのあいつ、私の風花を、彼女いるくせに……なんなの、あいつは!?
「悠真、もっと近く歩いてよ! なんでそんな距離空いてるの、なんで? 恥ずかしいの、悠真? 私はもっと近くで、むしろ手繋いで、それで……えへへ、悠真! もっと近く来て、私の真横が良い!」
「……それはダメ」
「もー、悠真! 悠真!!!」
―せっかくの放課後制服デートなのに~! も~、悠真は照れ屋さんなんだから~! もっと私にぎゅーってして大好きって言ってくれてもいいのに! 今ならお姉ちゃんもいないし、もっと素直になってくれてもいいのに……この恥ずかしがり屋さんめ!
―もしかして、最近悠真とちょっと距離置いてたのがあだになったのかな~、徐々に仲良く作戦失敗かな~? そのせいで近くなった気持ち、ちょっとまた遠くなっちゃったかな? でもあれ、結構効果あると思うし……あ、そうだ! 今日お家で仲良ししよ! 悠真に大好きって、ちゃんと言ってもらえるように!!!
★★★
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