おやすみと風花ちゃん

「ららら~ららら~ら~ららら~らららら~ら」

 ―この土日、悠真君と会えないの寂しいな。悠真君、土曜日も日曜日も用事あって、私も用事あるから会えないの寂しいな。

 昨日いっぱい悠真君に甘えられたけど、でもやっぱり毎日会いたいかも。無理なのはわかってるけど、毎日お顔見て、毎日甘えて、甘えられたいかも。


「お~い、秋穂? どうしたん、鼻歌なんて歌って? 今日はまだ土曜日だぜ~? 日曜日は明日だよ~? しゃらら~?」


「あ、ごめんね、しーちゃん。ちょっとね、あのね……えへへ」

 ―会いたいな、悠真君。次会えるのは多分火曜日で、まだ時間あるけどでも……ふふふっ、その日はまたいっぱい甘々したいな。


 悠真君といっぱいいちゃいちゃして、それで……えへへ、悠真君大好き。考えれば考えるほど、身体の中、ぽかぽかしてきて……ふふふっ、ダメだね、学校でこんな事考えたら。でも大好きだからいっぱい悠真君の事、考えちゃう。私ってふわふわダメな女の子。でもやっぱり……好きすぎて、そう言う気持ち、止まんない。


「えへへ、ふへへ……ららら~らららら~ららら~ららららら~」




「お~? なんか秋穂が女の子の顔しとる~? これどう思いますか、サナ?」


「これは彼氏確定じゃね? 秋穂にも彼氏できたんじゃね? 日曜日だけに明日デートなんじゃね!?」


「やっぱり? ついにロリコン彼氏見つかった感じ!? 秋穂にもロリコンの恋の使者が現れた感じ!?」


「……志摩、そう言うのはあんまりよくないぞ~」



 ~~~


「あれ、歩美? どしたん、なんか今日ご機嫌じゃない? 何々~、なんかいいことあった? 嬉しい事でもありました?」


「あ、わかる? ふふっ、確かに嬉しい事あったかも。確かにアレは嬉しい事だったかも」

 部活の休憩中、友達にニヤニヤしながらそう聞かれたので私も律儀に答える。

 確かに嬉しいことあったからね、悠真がやっぱり私の事大好きで、それで……ふふふっ、でもこれは今はナイショ。


 言ってもいいし、それで外堀埋めていくのも良いんだけど……でもやっぱりアピールするのは悠真と二人の時にしたい。

 悠真と二人の時にみんなにアピールして、悠真にも自覚を持ってもらって羞恥心を消して……それで私の事、大手を振って大好きって言ってもらいたいから。悠真と二人で、二人の時間を紡ぎたいから……だからあんまり、抜け駆けは良くないと思う。


「ほ~ん、よくわからんが……とにかく、楽しいことがあったんだね! 良かった、昨日の歩美、ちょっと怖かったから! 嫌なことあったのかな~、とか思ってたからいいことあったのは良かったよ!」


「ふふっ、そうだった? 一応それが解決して、いい結果になったんだけどね……それに多分ここから、もっと幸せになれるし。もっと楽しい事、なると思うし」

 悠真と私は絶対幸せになれる、だって好き同士だもん。

 お姉ちゃんじゃ無理な事、絶対に出来る、私と悠真だったら絶対に出来る。

 だから悠真が私の事大好き、ってみんなの前で言えるようにするから。


 恥ずかしさとか不安とかそう言うの取り払って、ちゃんと素直に大好きって言ってもらえるように私も頑張るから……だから待っててね、悠真。

 一緒に大好きなって、お姉ちゃんじゃなくて、私と……ふふふっ、家族、なってくれるんだよね? 家族、一緒に作るんだよね? 


 私はいつでもいいよ、いつでも待ってるよ……だからね、我慢しないで、悠真。

 私の事、いつでもめちゃくちゃにしていいから、私の事欲望の赴くままにしていいから……悠真と私なら絶対、幸せなれるから。



「お~、すごい……なんかちょっとえっちだ!」



 ~~~


「ん~? なんか悠真君嬉しそう! 何かあったの、悠真君!?」


「悠真先生、な。まあちょっとね……でも、湊ちゃんが気にすることじゃないよ、あっちで遊んでおいで。僕はこっちで色々準備することあるからさ」


「え~、私は悠真君と遊びたいの! そんな冷たくしないで、お手伝いでも何でもするし……も、もしかして悠真君彼女できたの!? 私という女の子が居るのに、彼女が出来たって言うの!? 酷い、浮気者! 私と結婚するって言ったのに!」


「ふふふっ、そんなこと言ってないよ、湊ちゃん。それじゃあお手伝い頼もうかな、そのバケツに水組んできてくれる?」


「ぷーぷー、悠真君の浮気者……でもお手伝いはする~……ぷーぷー」




 ☆


「……ちょんちょん」


「ん? んんっ?」

 月曜日、教室。

 今日は歩美と偶然会わなくて、学校でもあんまり話してこなくて……なんかちょっと不気味だけど、でも平和な時間を過ごしていると、ちょんちょんと俺の背中を叩く小さな感覚。


 でも後ろを振り返ってみても、前を見てみても誰もいなくて……え、何怖い!? 心霊現象?

「……ぴょこーん。ぴょこぴょこ……悠真君、風花ちゃんだよ~」


「あ、何だ風花ちゃんか。びっくりするじゃん、もう」


「えへへ、びっくりしちゃった? それなら、風花的には……ぬへへ、すごく、嬉しいです……悠真君、びっくりさせられて、嬉しいです……もへもへ」

 そんな慌てた様子の俺をニコニコふわふわと笑いながら、ぴょこーんと可愛く机の角から顔をあげたのは幼馴染の風花ちゃん。

 今日も今日とて彼女の難波ちゃんとイチャイチャしてた幼馴染の風花ちゃん。


「えへへ、そうだよ。悠真君の幼馴染の、風花ちゃんです。悠真君、今、時間良い? 風花ちゃんとお話し、してくれますか?」


「うん、良いよ。何かあったの?」


「うん、その……悠真君、難波ちゃんとの話、聞きたいって言ってたから。だから悠真君に風花と翠ちゃんの話、聞かせてあげたくて……い、良い? 風花のお話しタイム、良いですか?」

 いつものどこかふわふわ不安定な声とゆるゆるな上目遣いで。

 ちょっと心配そうな声で、風花ちゃんがそう聞いてくる……ふふっ、風花ちゃんの頼み、断るわけないじゃん! それに俺も話聞きたいし!


「えへへ、よかった……風花も、悠真君と、お話したかった……最近、話せてなかったから、風花も嬉しい」


「そうだね、最近お家にも来てなかったもんね。それじゃあ、話してくれる、風花ちゃん?」


「……こ、ここじゃヤダ。その、悠真君と、二人きりで話したい……風花と悠真君の二人で話したい……だ、ダメ?」


「ううん、良いよ。でもそれなら昨日の夕方とかに来てくれれば良かったのに」


「え、そ、それは……もにゅもにゅ……昨日は、その翠ちゃんと、デートして、夜まで一緒だったから……えへへ」


「ああ、そっか! なんかその……もう、かなりキてるね!」

 そっか、昨日日曜日だったから二人デートしてたんだ!

 百合カップルでデートか……ああ、もうゾクゾクしますな!


「き、きてる……わかんないけど、それじゃ二人になれるとこ、行こ? 風花と悠真君で、二人で話せるとこ、いこ?」


「OK。それじゃあいっぱい、お話聞かせてね」


「う、うん……えへへ、悠真君と二人きりでお話……えへへ」

 相変わらずのんびりした声でふわふわと笑う風花ちゃんと一緒に、二人で話せるいつもの廊下の端っこに向かった。



「……悠真? 悠真?」


「風花? 何あの表所……風花? 風花?」



 ☆


「それでね、その時、翠ちゃんがね……えへへ」


「お、おー、それは……凄く良いね! ご、ごちそうさまです!」


「うん、お粗末様……えへへ、風花、悠真君に食べられちゃった」

 風花ちゃんが話してくれる難波ちゃんとのデートのお話は何というか、その……すごく尊いというか、めっちゃ良いというか。

 百合カップルとか創作でしか見たことなかったから、本当に存在して、それが幼馴染で、それで……ああ、なんかすごい良い! めっちゃ尊い!


「ふふふっ、悠真君に、喜んでもらえて、風花嬉しい……ぬふふ、もっと話し、あるよ? 聞きたい、悠真君?」


「うん、聞きたい聞きたい……ふふふっ」


「えへへ、悠真君がいっぱい求めてくれるなら、風花も応える。悠真君なら、風花はおかわり自由……ん? どうかした、悠真君?」


「いや、ごめん、ちょっとね。風花ちゃんが自分の恋愛話話してくれるなんて新鮮だな、って思って。ずっと一緒に居たけど、お互いそんな話してこなかったらさ」

 風花ちゃんとはずーっと一緒に過ごしてきて、ずっと仲良しだったけど。


 お互い今の今まで恋愛経験とか全然なかったから、こう言う事一度も話したことなくて……だからすごく新鮮でちょっと嬉しいって言うか。

 小さい頃から女の子好き、って言ってて、でもそれが叶う気配が全然なくて……そんな風花ちゃんの好きが実って嬉しいって言うか! 風花ちゃんが自分の好きにちゃんと出会えて良かったって言うか……とにかくなんか嬉しいし、ちょっとむず痒い気分!


 そのちょっと熱くなってしまった気持ちを伝えると、風花ちゃんんはほっぺをむにむにしながら、

「そ、それは風花も一緒……こういう話、悠真君以外でするとは思ってなかったから……こういう話するのは、悠真君と、って思ってたから」


「ふふっ、してるじゃん、話。俺にしてくれてるでしょ、風花ちゃんの楽しい恋愛話!」


「……そ、そう言う事じゃなくて、その……風花は、将来、悠真君と……もへもへ……あ、あ! そ、そうだ! もっとね、お話する、昨日の事! えっとね、昨日ね、翠ちゃんとね……」


「お、そんな事も……ほ、ホントごちそうさまです!」


「うん、風花のおかわり……えへへ、また風花、悠真君に食べられちゃった」



 ★★★

 幼馴染パート。

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