第34話 誰にも渡さない

「ね、ねえ翠ちゃん、今日私お家帰りたい……お家帰って、それで色々したいことあるから。お家に帰って、色々準備して、それで悠真君……悠真君に、風花の事……だから離して、翠ちゃん。私、お家帰る。だから離し……いやっ!?」


「また野中、また野中……ダメ、帰さない、どうせ明日も授業ないでしょ? 学校のために準備することなんてないでしょ? だから帰らせない、風花は私と一緒に過ごすの。風花は、大好きな彼女の私と一緒に過ごすの! 風花は彼女の私と、これからずっと一緒に過ごして、それで……野中の事、完全に忘れるの。あんな奴の事、風花が考えられないようになるまで、風花は私と一緒に暮らすの、私と一緒なの!」


「ヤダ、ヤダ……風花ヤダ、そんな事ヤダ……私も、風花もヤダ……お家帰りたい、怖いよ、翠ちゃん。そんな強くしないで、私怪我しちゃうよ? 痛いよ怖いよしんどいよ、私ヤダよ、無理やりヤダ、翠ちゃん……それに、風花は、悠真君と、悠真君と……痛っ!?」


「ダメ、ダメ、なんで帰りたいの、大好きな彼女と一緒なんだよ? 大好きな彼女と一緒なのになんで帰りたいとか言うの? 絶対帰さない、風花の事絶対に帰さない……風花が本当に私の事だけ見てくれるまで。絶対に家に帰さない、絶対に、絶対に絶対に……ずっとずっと、私の監視下に置いてやる……大好きだから、問題ないよね? 風花の事大好きだし、風花は私の彼女で、大好きって言ってくれてたし……問題ないよね? 風花の事、大好きだからね」


「ひえっ……ぴえっ……」

 ―絶対に風花の事離さない、風花の事私の家から出さない……今の風花一人にさせちゃいけない。


 ―今、風花を一人にしたら絶対に野中のところに行く。野中のところ行って、それで……そんな事、絶対させちゃいけない。風花は私の何だから、私以外の事、好きになっちゃいけないんだから。


 ―だからこれはしょうがない。風花と私の幸せ、考えてやってるんだから……だから風花、今日からずーっと一緒にいようね? ご飯もトイレもお風呂もずっと一緒だよ? 学校には行くけど、その時もずっと一緒、どこに行くのも一緒。


「ぴえっ、ぴよっ……ぴゅぇぇ……」


「うふふっ、風花……大好きだよ、風花。大好き大好き大好き……ずっと一緒に居ようね、風花。本当に大好き……誰にも渡さない。私だけの、大好きな風花」

 ―大好き同士なんだし、ずっと一緒に居るのに問題なんてないよね? 大好きなんだから、ずっと一緒なのはむしろ当たり前だよね?


 ―だから私は、風花とずっと一緒に居るよ。風花と一緒に、幸せになりたいから、風花と幸せな気分になりたいから……だからずーっと一緒だよ、風花。


 ―取りあえずまずは、風花が私だけの事、見てくれるまでかな? 風花が野中の事完全に忘れて、私だけを大好きになって、私だけを見てくれるように……そうなるまでは、ずっと風花と一緒に居ないと。風花が私以外を見ないように、私しか見ないようにずっと一緒に居ないとね。風花の事、ずっと見てないとね。私まだ、人殺しとかしたくないし。風花が私以外見なくなったら大丈夫だし。


「ね、風花? 今日はずっと一緒だよ、明日も明後日も、創立祭が終わってからもずーっと一緒だよ? 風花と私は大好き同士で、付き合ってるんだから……私がずっと一緒に居てあげる。風花とずっと一緒だよ、絶対離さない……このままずーっと風花と二人っきりだよ。私、すごく幸せ……風花も幸せだよね? 大好きな人と一緒なんだもん、幸せだよね? すっごく幸せな気分だよね、風花?」


「ヤダ、ヤダ、ヤダ……怖い、翠ちゃん……私、怖いよ……それに、風花、悠真君と……悠真君ともっと、幸せ……はぐっ!?」


「また野中、また野中……ダメだよ、風花。私の事、ちゃんと見てくれないと、私だけをずーっと見てくれないと……風花は、私の風花なんだよ。だから私だけの事を大好きにならないと、私だけと幸せにならないと。だからお仕置き、風花にはお仕置きだよ……んっ、あむっ、んっ……ちゅぱっ……」


「んっ、んんっ……あうっ……」


「ちゅぷっ、ちゅぱっ……ふふっ、やっぱり風花美味しい。風花とのキス、大好き、やっぱりキスも風花じゃないと嫌だ……私幸せだよ、風花。風花も幸せだよね、私とキス出来て……幸せ、だよね?」


「あうっ、あむっ……ゆ、悠真君……」


「チッ、なんでまた野中……風花お仕置き。これからの中の名前言うたびに、お仕置きするからね。野中の名前言うのダメ、私以外の名前言うのダメ。お仕置きだよ、風花……んんっ、んみゅっ……」

 ―なんで野中のことしか言わないんだろう、なんでそんなに野中が好きなんだ? 野中に酷いこと言われたのに、もう会いたくないって言われたのに……なんでそんなに野中の事が好きなんだよ! 絶対私の方が、風花の事好きなのに! あんな奴より、絶対私の方が風花の事好きなのに、大好きなのに!!!


 ―それに野中のキス、全然気持ちよくないよ、風花は私とキスする方が絶対良いよ! あんな奴とキスするより、絶対私とキスする方が気持ちよくなれる。風花は絶対渡しといたほうが幸せになれるんだ、風花と私で、一緒に幸せになるんだ!!! だかラこうする、風花と幸せになるために! 風花と私が幸せになるために!!!


「んんっ、んんっ、ゆう……ううっ……」


「ふふふっ、大好きだよ、風花……私以外の事、大好きにならないでね。もう野中の事なんて忘れて、私の事だけ大好きって言って? あいつはもう、風花の事何とも思ってないよ、風花の事大好きなのは私だけ。私が一番風花の事大好きだよ……だから風花、私だけ見て。あいつを忘れて、私だけの風花と言って」


「あうぅ……怖い、怖い……悠真君……」


「また言った。またあんな奴の名前言った……お仕置きだよ、風花ちゃん……んちゅっ……」


「悠真k……あうっ……んんっ……」



 ☆


「お~い、なんだか元気ないな、悠真? なんかあった?」


「いや、別に。大丈夫だよ、太雅」

 ざわざわと盛り上がる創立祭準備中の特有の空気の中、いっそに作業していた大河にそう聞かれて、俺は苦笑いしながら返す。


 いや、まあ……普通に元気はないんだけど。

 昨日あんなことあったし、風花ちゃんとも……正直、秋穂さんと電話して、色々楽しく話せたけど、全然回復しなかった。


 今日もお弁当作ってくれたらしくて、歩美から貰ったけど……まだ、全然元気が回復とはならないな。

 まだまだ時間がかかりそう……ファーストキスとか、風花ちゃんともう会えないとか、そう言うショックの。風花ちゃんと会えないの、普通にショック大きい。


 今日もずっと、風花ちゃんと難波ちゃん一緒に居るし……ちょっとだけ、風花ちゃんの目が虚ろだったのは気になるけど、俺はもう気にしちゃいけないんだろうな。

 風花ちゃんとは何の関係もなくなるんだし、俺は風花ちゃんと……ハァ、やっぱりしんどいや。


「……まあ、親友としては色々心配になるけど、悠真がそう言ってるならいいか。あんま無理するなよ、悠真」


「うん、ありがと。ありがと、太雅」

 でも、くよくよしてても始まらない。

 創立祭は目の前だし、秋穂さんとのデートも目の前……だからちゃんと、しないと。ちゃんと気合い入れて、頑張って今日の準備をしないと!!!


「よし、それじゃあ太雅、いまかr……」


「すいません、お二人さ~ん……特に太雅さん。少しお時間、良いですか~~?」

 そう気合を込めて太雅に声をかけようとした時、その話を遮るようにほわ~、っとした甘い声が聞こえる。


「お、俺? えっと、その……天間さんが、俺に何か用ですか?」


「はい、太雅さん。えっと、その……わ、私と、買い出しに行きませんか? 二人きりで買い出し、しませんか!!!」

 俺たちの間に割り込んだほわほわ少女―天間さんが振り絞るような声でそう言った。



 ★★★

 話が暗くて悲しいので、明日から数話「ほわわ!? 買い出し編!」をやります。

 サブキャラの話です。


 感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る