第37話 全部ここで、秋穂さんに染める!!!

「ねえねえ、お母さん! 行くよ、早く行くよ! 悠真君と歩美ちゃんの創立祭行くよ、悠真君のお店行くよ……えへへ、大好きな悠真君に、会いに行くよ! 私ね、悠真君のお料理食べて、悠真君と創立祭でーとしなきゃだからね!」

 ―今日は創立祭、大好きな悠真君と妹の歩美ちゃんがクラスでかふぇをする日。そしてお姉さんと悠真君が、二人で堂々と、創立祭でーとする日……にへへ、とにかくすっごく楽しみな日! 早く悠真君にあいたい、創立祭でーとしたい!


「はいはい、秋穂ちょっと落ち着いて。そんなに焦らなくても悠真君も創立祭も居なくならないわよ」


「えへへ、そうだけどぉ! そうだけど、悠真君に早く会いたいもん、私の愛しの悠真君に早く会いたいもん……ぬへへ、最近電話だけだったからね! ナマの悠真君にも、お姉さんは早く会いたいのです、早くでーとしたいのです! だから早く行くよ、お母さん! お姉さん愛しの悠真君に会いに行くよ!」


「はいはい。ホント秋穂は大好きね、悠真君の事」


「うん、大好き! 悠真君は私の彼氏さんだからね、私も大好きだし、悠真君もお姉さんの事大好きなんだよ……えへへ、大好きだよ、悠真君!」

 ―えへへ、待っててね、悠真君! お姉さんすぐ行くからね、悠真君といっぱいでーとしたいからすぐに会いに行くからね! 悠真君と私が付き合ってるって事、みんなに堂々と知ってもらいたいからね!


「ぬへへ、悠真君……えへへ、大好き、会いたい……えへへ、悠真君とでーと……ぬへへへへへ……」


「ふふふっ、本当にラブラブね、秋穂と悠真君は。この調子で歩美も良い人……アレ? 歩美も確か悠真君の事……まあいいか!!!」



 ☆


「いらっしゃいませ~! 3名様ご来店で~す! キッチンのゆ~ま~、3人入ったよ~!!!」


「あ~、今人いっぱいで! 少々お待ちくださいね~! そうだ、待ってる間葉月とにらめっこしましょ、あっぷっぷ~……おい、ファンクラブ1号2号! 追加の席作りやがれ、早くしろ!!! にらめっこなんてやらせんな!!! 早く働け、私のために!!!」


『はい、矢野様!!! インカム越しの声、最高でございます!』


「きっしょ……あぁ、ごめんなさい。にらめっこ続きでしたねあっぷっぷ~……ふふふっ、負けちゃいました~♪ てへっ……早く!!!」


「ほわ~? もうちょっと、ゆっくりお願いします~」


「え、貴方みたいなイケメンが私の彼氏に!? う、嬉しい……え、カレーライス? し、失礼しました……彼氏欲しいなぁ……」


「あ、あの……クリームパスタです、悠真君が作りました! 悠真君お手製のクリームパスタさんです、美味しいですよ、どうぞ! 味は風花が保証します、悠真君はお料理上手ですから……えへへ、悠真君のホワイトクリーム、すっごく濃くていっぱいで美味しいんです。悠真君、好きですから……えへへ」

 ―少し不穏な空気をまとったまま始まった創立祭の喫茶店だったけど、そこは流石我がクラス、団結力とか色々で大盛況を見せていた。


「悠ちゃん、これお願い! パスタまたゆがいて!」


「OK、了解!」


「悠真、アップルパイ! アップルパイ入った、レンチン! あとパンケーキも!」


「了解了解! いっそがしいな、おい!!!」

 そんなに忙しい想定をしていなかった俺たちキッチンも、馬車馬のように働くことを強要されるくらいの大盛況。

 お客さんきすぎて入れない人も出るわ、キッチンも回らないわ、ホールのみんながパンクしかけるわ……とにかく予想をはるかに超えるくらいの大盛況。


「待ってヤバ、めっちゃ可愛い! 写真撮っていいですか!?」


「あ~、すみません! チェキは禁止になっています、ごめんなさい! 私には悠真という大事な人がいるので!」

 そしてその人気を支えているのはもちろん。


「そ、そうですか……そ、それじゃあそこのお二人は! そこのぽわぽわ可愛いお二人さんは写真、どうですか!?」


「ほわわ~、すみません。私にも、太雅さんという大事な人がいますので」


「ふ、風花も悠真君が大好……はうっ、違う、大好きな人翠ちゃんいる。だからダメ、ごめんなさい」


「そ、そうですか……そ、それじゃあそこのボーイッシュさん!!! そこの可愛いボーイッシュさんは……」


「ダメですよ、お客さんしつこいです、追い出しますよ……私も彼氏欲しいし!!! この創立祭で彼氏欲しい!!!」


「そうですよ~、ダメダメです♪ 葉月の事、写真じゃなくてしっかりおめめに焼き付けてくださいね~……ってファンクラブ1号4号6号18号!! 勝手に写真撮ってんじゃねぇ、踏みつけるぞ!!!」


『むしろご褒美!!!』


「だからキショイって……あ~、すみません! 葉月の事、いっぱい記憶して、大好きで楽しい思い出のまま、帰ってくださいね♪」

 この喫茶店が人気になっている背景の9割は、このクラスの女子が可愛いという事が原因であろう……実際、俺たちキッチンの料理は大体レトルトか簡単なやつだし。


 十中八九俺たちのキッチンは関係ないだろうから、やっぱり原因はホールの女子たちのレベルが高いこと。

 歩美に風花ちゃんに天間さんに青ちゃんに矢野さんに……とにかくタイプの違う美少女が勢ぞろいしている。他のクラスの男子から嫉妬されるくらいに、いろんな美少女が集結している。


「ふふふっ、お待たせしました! 私の事大好きな悠真が作った、オムライスです! 私の未来の旦那様特製のオムライスです!」


「ほわわ~、こちらは音夢の彼氏さんの太雅さんが作ったカレーです。美味しく食べてください、音夢の彼氏さんの味です!」


「は~い、お待たせしました! 葉月の愛のこもった、ラブラブ炒飯です、どうぞ召し上がれ♡葉月印に、レタス入れてみました、葉月の愛、感じてください♡」

 そんな美少女たちが、大正ロマンな給仕服に身を包みながら接客する―正直、こんな魅力的な店は他のクラスには出来ないだろう。こんな美少女たちの接客受けられるってなったら、そりゃ人気にもなるだろう。


「えへへ、未来の旦那様は未来の旦那様ですよぉ! ふふふっ、愛がこもって隠しきれてないですから、このオムライスからも私への愛を……あ、ごゆっくりどうぞ~!」


「ほわわ~、太雅さんはカッコいいのです。本当にカッコよくて、それで……あ、ごゆっくりです。美味しく食べてくださいね」


「……こんなの言われて楽しいのか、本当に? 私は嫌だしキモいし、ファンクラブい1号また私を騙し……あ~、美味しいですかぁ! 葉月感激、嬉しい……もっと頼んでくれても良いんですよ、葉月のラブラブ炒飯♡ついでにスパチャとチップも!」

 ……まあたまにフロアから不穏な言葉も聞こえてくるけど、それは無視して。なんか関わるとめんどくさそうな言葉がいっぱい聞こえてくるけど、それは一旦怖いので無視して俺はキッチンに集中するとして……あ、難波ちゃんが指切って保健室行った、これキッチン回るか心配だ集中集中!!!


「お、お待たせしました……こちら、はちみつたっぷりパンケーキです。悠真君が、作ってくれたはちみつたっぷりなパンケーキさんです。味は保証しますよ……えへへ、風花の、大好物ですから。悠真君が、風花に作ってくれるお料理の中で一番美味しいですから……えへへ、風花、大好きですから。ごゆっくり、お食べください」

 ……でも、やっぱり風花ちゃんの接客は思わず目で追ってしまう。


 歩美にはあんなこと言ったけど、正直この衣装が一番似合ってて、この中で一番可愛いのは風花ちゃんだと思う……風花ちゃんが一番、この中で可愛い。

 可愛くて、愛おしくて、甘やかしたくなって。ぎゅー、ってしてなでなでして、ちゅーして……風花ちゃんへの大好きが溢れて、いっぱい甘やかしたくなる。

 いっぱいまた美味しいもの食べさせてあげて、ベッドの中で風花ちゃんのしたいように甘々したくなる。


「こっちは、悠真君作のうさちゃんりんごです……風花が風邪ひいたとき、悠真君が良く作ってくれたやつです。悠真君、風花の事いっぱい看病してくれて、風邪が治るまでつきっきりで看病してくれて……えへへ、風花すごく嬉しかった思い出です」

 ……だけど、この思いはもう完全に断ち切らないといけない。風花ちゃんへの想いは完全に断ち切らないといけないんだ。


「えへへ、悠真君のです……ぬへへ、悠真君が風花にくれたんです、それも」

 全部秋穂さんのため。

 秋穂さんと一緒に居るために、秋穂さんが笑顔でいるために……この大好きの想いは絶対にもう出しちゃいけないんだ、俺の心で封印しなきゃなんだ。


「悠真君、ステキですよね……えへへ、風花もそう思います。風花も悠真君大好きで、それで……えへへ、とにかく悠真君すぺしゃる、風花の代わりに楽しんでください」

 ……でも、違う未来もあったんじゃないかって考えてしまう。

 風花ちゃんと一緒に居て、お互いに大好きを伝えあって、ずっと甘々イチャイチャできる―そんな未来もあったんじゃないかって、考えてしまう。


 風花ちゃんが俺の事、もっと大好きって。俺も風花ちゃんの事大好きって、ずっと一緒に、大好きなことするって……どこで間違えたんだろうな、選択肢?

 今の秋穂さんと一緒なのももちろん幸せだけど、でも……こっちの未来も絶対幸せだったな、って考えてしまう。


 風花ちゃんと一緒になって、風花ちゃんと毎日ご飯もおやつも食べて、お風呂もベッドも全部一緒で……ダメだな、まだ未練タラタラだ。あんなに頑張って断ち切ったのに、まだこんな調子じゃダメだな、ホント俺。

 まだ風花ちゃんへの想い、全然断ち切れてなかったや……い、いやでも! 今日絶対それも断ち切る、絶対に今日断ち切る!!!


 だってこの後秋穂さんとデートだから!!!

 秋穂さんとデートして、全部負の連鎖を断ち切るんだ……歩美も風花ちゃんも全部! 全部全部納得させて、納得して! 今日わるいことを、全部断ち切ってやる!!!

 俺と秋穂さんのラブラブパワーで、全部いい方向にもっていくんだ!!!



 ~~~

「お母さんこっちこっち!!! あ、綿あめある食べて良い? お母さん食べて良い!?」


「アハハ、秋穂焦らないの。買ってあげるから待ってなさい」


「は~い……という事で一こ頂戴!!!」


「ふふふっ、ありがと~! でも小学生はサービスだから、お金払わなくて大丈夫だよ~! 来てくれてありがとね~、誰の妹さんかな?」


「えへへ、ありがと……って大学生! お姉ちゃん!!!」



 ~~~


「なんか不穏な顔してるな、大丈夫か?」


「……大丈夫じゃないです、風花がとられてる気がして気が気じゃないです」


「そうか。ところで私はこれから弟デートなんだが保健室開けて大丈夫か? 私の可愛い弟のゆずが待ってるんだが行ってもいいか?」


「……勝手にしてください、先生。私もマッハで帰りますし」



 ★★★

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車に轢かれそうな女の子を助けたら、学校1の美少女の姉だった!~なぜか彼氏認定してくるし、ヤンデレになるし、百合百合幼馴染もなんだか様子がおかしくなった~ 鈴音凜 @akibasuzune624

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