第15話 好きって言ってくれた!!!
「ねえ悠真! 悠真!!!」
―隣に大好きな私がいるのに! 私が隣で大好きな悠真の事待ってるのに!
―なのになんで!? なんでなの悠真!!! あんなにお姉ちゃんとイチャイチャして、我を忘れたみたいにお姉ちゃんを……あれじゃ本当に悠真お姉ちゃんの事……違う違うそんなわけない! だって言ってくれた、あの時廊下で人気投票……あの時の言葉が嘘なわけない!
―ねえ悠真、私だよね!? 一番は私だよね、大好きって言ってくれたよね!? 私の事が大好きなんだよね、ねぇ! ねえってば、悠真!!!
☆
放課後、藤井家。
「ねえ、悠真! 悠真!!!」
イチャイチャ楽しい時間を過ごして、お菓子を取りに行った秋穂さんと入れ替わるように入ってきたのは血走った目と怒ったような怖い目で俺を見つめる藤井さん。
「大好きな私が隣にいるのに、待ってるって言ったのに……よくもまあ、お姉ちゃんとイチャイチャイチャイチャ……ねえ悠真! ねえ!!!」
その怖い目の奥には怒り以外の複雑な感情が混ざっているようで、でもその感情を制御しきれていないみたいで。
ぐらぐらと燃えるように暴走した行き場のない感情を、そのまままっすぐ俺にぶつけているように見えて、そのまま俺に襲い掛かってきそうな恐怖を感じて……やばい、どうしよう!?
当然か、あんなに釘差されてたのに俺は構わず秋穂さんとイチャイチャして。
大好きなお姉ちゃんである秋穂さんの事心配して守ろうとしていっぱい釘差したり自分を犠牲にして頑張ったのに、それをあざ笑うかのように俺と秋穂さんがイチャイチャして。
大好きなお姉ちゃんが俺に手籠めにされてるようで、会ったばかりの俺に盗られて騙されてるみたいで……それはこんな複雑な感情にもなるか。
正確にはわかんないけど、多分盗られたとか守れなかったとかでぐちゃぐちゃな感情なんだろう、今の藤井さん……だ、だったら!
「だ、だって、俺秋穂さんの事、好きだし! ちゃんと秋穂さんの事、好きだし! だから好き同士、イチャイチャするのは当然って言うか、というか秋穂さんの方が甘えたいって言ったって言うか! だから両者合意の上、大丈夫! そんな悪いようにはしてないから、ちゃんと秋穂さんの事大事にするから! 絶対秋穂さんの事幸せにするから!」
だったら俺はその感情を受け止めて、ちゃんと誠実に秋穂さんの事を好きでいる、て言う事を藤井さんに言うのが正解だと思う。
この言葉がもっと藤井さんの気持ちを煽ってもっと大変なことになるかもしれないけど、でもこの言葉は伝えないといけない。
ちゃんと俺は秋穂さんの事好きだって、ちゃんと大事にするって……そう言う誠実な気持ちをちゃんと伝えて、藤井さんに秋穂さんと俺の関係をちゃんと認めてもらう事が大事だと思う。
秋穂さんを騙してるわけじゃなくてちゃんと大好きで、絶対大事にするって事―それを藤井さんに伝えて、ハニトラとかそんなバカな事をやめてもらうんだ!
藤井さんがそんなことしなくていい、安心して俺と秋穂さんの事見守って、自分の事だけに集中してほしいから。不安になるような事、絶対しないから。
「ハ、ハァ!? な、何言ってるの悠真は、何々!? わかんない、意味わかんないって、だって悠真は私の、しょうがなく……どう言う事!? 当然じゃないじゃん、好き同士なわけないでしょ! そんなわけない、騙してたの!? そんなわけないよね、悠真!? 違うよね、悠真!?」
そんな俺の言葉を聞いた藤井さんの表情はさっきまでと特に変化なく、さらに激情を増したみたいに真っ赤に染まっていって、息も絶え絶えに激しくなる。
信じられないという風に泳いでぐちゃぐちゃになった瞳で俺を見つめて……ホントだから、大丈夫だよ藤井さん!
「騙してるなんてそんなわけないじゃん、ちゃんと大好きだって! そりゃ最初はあれだったけど、でも段々好きになって、大好きになった! 今は本当に大好き、ずっと一緒に居たいと思ってる! 本当に大好きだから! だ、だから大丈夫、安心して藤井さん!!! 大好きだから、本当に!!!」
だからその気持ちを全力で伝える。
俺の気持ちを知ってくれたら藤井さんだって納得してくれるだろう、俺が秋穂さんの彼氏で大丈夫、ってわかってくれるだろう!
そんな全力の俺の言葉を聞いた藤井さんはキョトンと目を丸くして、その大きな瞳をぐるぐるわけわかんないという風に回して、
「え、大好き? ずっと一緒に居たい、今は大好き……きゅ、急にそんな情熱的な……え、えぇ!? な、なんで急にそんな告白みたいな、そんなこと言われたら私もだし、その……で、でもそれならお姉ちゃんじゃなくて私待ってたし、大丈夫だし、お姉ちゃんとわざわざ……ゆ、悠真? ど、どう言う事? そ、その、だ、大好きってあの……大好きって事? ちゃんと大好き、って事?」
「うん、大好きだよ、ホント大好き!」
「好き、ちゃんと好き……えへへ。そっか、好きか、大好きか……えっへ、も~、悠真! もうもう、もう!!! それならもっと早く素直になってよ、もっと早く言ってよ、そんな事なら!!! 心配しちゃったじゃん、もう! こんなことしないで、ちゃんもっと早く言って! 大好きってもっと早く言ってよ!!!」
「そ、そうだね……ど、どうかしたの、藤井さん? なんか変だよ、ちょっと」
さっきまで藤井さんを覆っていた負の黒いオーラがどこかへ飛んで行って、急に現れた幸せのピンクがその身体を覆って、キャーっと身体を幸せそうに悶えさせて。
ギラギラ怖く輝いていた瞳も、ぐるぐる渦巻いていた色々な感情も全部全部優しく柔和ないつもの藤井さんに戻って、でもかなり幸せなオーラが漂って……え、な、何!? きゅ、急に認めてくれた感じですか!? それなら嬉しいですけど!
そんな困惑する俺をジーっとピンク色の熱視線を向ける藤井さんは、もじもじ身体を揺らしながら、ピンクに染まった幸せそうな笑顔で、
「えへへ、悠真が好きって、大好きって……あ、あれ? だ、だけどそれならお姉ちゃんとこんな……あ、そっか、わかった! わかったよ、悠真! も~、悠真、わかった! 全部わかったよ!!!」
「え、な、何!? わかってくれたのは良いけど、その、ど、どうしたの、その感じ?」
「えへへ、わかったから! 大丈夫だよ、悠真! そう言う事だよね、うんうん……よし!!!」
「!? な、何藤井さん!?」
さっきまでの態度とは全然違って、かなり不気味にも取れる幸せスマイルの藤井さんがぐっと俺の方に近づいてきて、息が当たるくらいの距離まで顔を近づけて。
ちょ、近いよ藤井さん、いいにおいするし、可愛いし……な、何!?
「ふふっ、照れてる悠真も可愛い……でもそうだよね、私と悠真……まずは名前からだね、悠真! 私の事藤井さんって呼ぶのヤダ。まずは名前から始めよ―歩美、って呼んで、私の事」
「……え?」
俺の眼前数センチで唇にスッと指を当てた笑顔の藤井さんがそうイタズラに、嬉しそうに呟いた。
★★★
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