第35話 創立祭開始!

「よーし、今日は創立祭本番だ! みんな全力で働いて、全力で楽しめ! 頑張るぞ!!!」


『おーーー!!!』

 色とりどりに装飾されて、カフェの様相漂う教室の中。

 先生の熱い挨拶に、クラスの全員が拳を突き上げながら元気よくそう叫ぶ。


 今日はようやく創立祭本番、長くて色々あった……本当に色々あった準備期間を終えて、俺たちの準備の成果を発揮する時間が来た。

 歩美とも、風花ちゃんとも色々あったけど、とにかくクラスのみんなと頑張った準備と計画を、しっかり実行に移す時が来た。


「絶対に、成功させよ~ね!」


『絶対に、成功させよ~ね!!!』

 だからいつまでも俺がそんな事を後悔したり、くよくよしたりしている場合ではない。そんな個人的な理由で、いつまでもショックを受けて、悲しんでばかりじゃいられない。


 こんな風に頑張っているみんなのためにも、俺は自分の仕事をちゃんと全うしないと……とは思ってるんだけど、少しだけ気にしなくてはいけない事がある。


「ほわわ~、太雅さん……が、頑張りましょうね! そ、その、私はホールで太雅さんはキッチンでお仕事は違いますが、お互い頑張りましょうね! 一緒の気持ちで、頑張りましょうね……離れ離れは寂しいですが、心はいつも太雅さんと一緒ですわ」


「そ、そうだね天ちゃん! 俺も頑張る、頑張るよ! ね、天ちゃんとは離れちゃうけど、俺も天ちゃんと同じ気持ちで頑張る……いつだって音夢と一緒だと思って。音夢と同じ場所にいると思って、頑張るよ! 俺の心も、いつも音夢と一緒! あ、あと、その……音夢もお客さんの男の人とかになびいちゃダメだよ。俺の音夢だからね、俺がそばに居なくて守ってあげられない間に、他の人についてっちゃダメだよ」


「そんなことしませんわ。私は太雅さんのですから。太雅さん以外の男の人になびくことなんてありませんわ、太雅さんの事を愛してますから……ほわわ、音夢は幸せですわ、太雅さん。今の音夢、すっごく幸せですわ、太雅さんと一緒で」


「うん、俺も音夢の事愛してる! それに俺も幸せな気分だよ! 俺もすっごく幸せで、嬉しい気分だよ……ってここ学校、音夢! 嬉しいし幸せだけど、学校はダメって決めたよね、音夢! みんなにはバレないように、隠そうって決めたよね!」

 ……な~んか太雅たちの様子が変というか、おかしいというか。

 昨日天間さんに誘われて二人で買い出しに行ってからというものの、なんかやけにべったりしてるというか、二人で色々囁き合ってるというか、密着してふわふわしてるというか……え、何があったの、この二人? 

 何というか、その……すごいラブラブな雰囲気でてるよ、これ!? マジで何があったの!?


 そんな俺の困惑をよそに、二人の世界の中ピンク色の雰囲気を出しながら、天間さんと太雅は話し続ける。

 それはそれは楽しそうに、周りの困惑とか嫉妬の視線とかを何も感じていないかのように、密着ぽわぽわしながら話し続ける。

「ふわわ~、問題ありませんわ。だって今日は創立祭、特別な一日ですもの……だから問題ありませんわよね、太雅さん? 音夢と太雅さんがらぶらぶしていても、何も問題がない日なのですわ。今日なら平気ですわ、太雅さん……今日は合法的に、太雅さんと学校でらぶらぶできる日ですわ」


「それはそうだけど。俺もラブラブしたいけど……でも俺たち、創立祭のスタッフとして働かないといけないでしょ? その時間、さっきも言ったけど音夢はホールで、俺はキッチンだもん。離れ離れになって、仕事集中しなきゃでしょ? 心はいつも一つで、ラブラブだけど、今はぐっとこらえて働かなきゃでしょ?」

 ……なんかいいこと言ってる風だけど太雅の表情とろとろほわほわ過ぎて全然説得力ないぞ! 

 めっちゃ天間さんの事感じてふわふわなってるじゃん……本当に何があったの、二人!? 隠すとかダメとか言ってるけどバレバレだよ、みんな困惑でひいちゃってるよ……ほら衣装係のさなちゃん困ってるし!


「ほわ、ほわわ~……ううっ」

 ……でも、やっぱりそんなのもお構いなしの二人は、相変わらずのピンクの世界の中で、

「うぅ、そうですけど……でも音夢は、太雅さんといちゃいちゃらぶらぶしていたいですわ。太雅さんの事が大好きで、やっとこの気持ちが実ったんですもの……昨日のだけじゃ、足りませんわ。もっと太雅さんの事、太雅さんをいっぱい……太雅さんとずーっと、らぶらぶしていたいですわ」


「うん、俺も……だ、だからさ、音夢! その、シフト終わったらさ、いっぱいラブラブデートしようよ! そのさ、バレないように、こっそりだけど……で、でもラブラブデート! 俺たち二人で創立祭をラブラブデートして、楽しもうよ! お互い全力でシフトをこなして、その後に! 全部全部終わらせた後の我慢して気持ちいいラブラブデート、シよ!」


「た、太雅さん……そ、そうですわね! 離れている時間が愛を育むとも言います、音夢頑張りますわ……頑張ってシますわ、太雅さん! でも、今はチャージですわ……愛してますわ、大好きですわ、太雅さん! 本当に大好きで、音夢は貴方の一緒のぱーとなーですわ……ふわわ、大好きですわ、太雅さん♪」


「も~、抱き着いてこないでよ、みんなにバレちゃうよ……ふふふっ、でも俺も大好き。俺も愛してる、一生一緒に居ようね、音夢……大好きだよ、音夢」


「ほわわ、太雅さんこそ頭撫でるのはずるですわ……でも、それも好きですわ。太雅さんの全部が、音夢は好きですから……ほわわ~」


「も~、甘えん坊だなぁ、音夢は……本当にバレちゃうよ、もう」

 そう愛を囁きながらぎゅー、っと身体に抱き着く天間さんの頭を、同じように愛を囁きながら優しく撫でる太雅。


 その雰囲気は幸せそのもので、ラブラブなカップルで。


「ん~、太雅さん……だいしゅき」


「音夢、愛してる……ホント可愛いな、音夢は。大好きだよ、音夢」


「……うっぷっ」

 ……隠してるって何の話ですか!? 

 もう胸やけ寸前なんですけど、朝から濃いイチャラブを見せつけられて俺たち全員吐きそうなんだけど!? 

 何を隠してるんですか、オールフリーじゃねえか、スーパーホワイトニング!!!


「うぷっ……な、なにぃ……?」


「へ、俺たちのてんま……へ、へぇ?」

 それにみんなのやる気がそがれてしまってるし!

 みんなイチャラブの過剰摂取と突然の出来事に困惑と嫉妬とあとあと……あぁとにかく! とにかく創立祭頑張ろう!!!

 なんか最初から微妙な雰囲気漂ってるけど、頑張りましょう!!! 今日の創立祭、絶対に成功させましょう!!!



 ~~~


「風花可愛い、やっぱり私の風花。私だけの風花だ、やっぱり」


「は、はい……そ、そうですね」


「嬉しいでしょ、風花も。大好きな人に褒められて、大好きな人が風花の事可愛いって言って……ねぇ、風花?」


「は、はい。私は嬉しいです……で、でも風花は、悠真k……ひゃう!?」


「その名前、出さないって約束したよね? 絶対言わないって約束したよね……まだ私の愛、足りてなかった?」


「い、いえごめんなさい……ごめんなさい、翠ちゃん。風花は、翠ちゃんの、風花です」


「うん、それでいいの……風花は私だけの風花なんだから。私だけが愛して、私だけを愛してくれる、風花なんだから」



 ★★★

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