概要
桜が、ちょっとだけ咲いていたのをながめていた時のことだった。
視線を感じて、ふり向けば、彼が、立っていたのだ。
白銀色の短い髪と眉毛。切れ長の黒い双眸。
すっと通った鼻筋。透き通るような白い肌。
胸元に、銀色の蝶モチーフのネックレス。服装は黒づくめ。
あたしと目が合った彼が、おどろいたような顔をしたのを覚えてる。
そのあと彼が、悲しそうな顔をしたのも、覚えてるんだ。
あたしもなぜだか、悲しくなって。
だけど涙は、出なかった。
心の中で、違う!! と叫ぶ、自分がいたのだけれど、なにが違うのか、わからなかった。
その時は、離れていたためか、藤の香りには気づかなかった。
それなのに、なんか嫌だと感じる気持ちがあった
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