あやかしが見える人の生活風景

主人公の琴乃は「あやかし」が見える女子短大生だ。彼女は進学を機に親元を離れて一人暮らしを始めたのだが、以前、他の人とは違うものが見えるというので苦い経験をし、交流に積極的になれず、ひとりでいることが多い日々。

そんなある日、学校で人気者の女の子と親しくなるきっかけがあり、彼女もあやかしが見えることを知って……。

前世の記憶を断片的にしか思い出せず、目にする光景に戸惑ったり、湧いてきた自身の感情に悩んだり、涙したり。そんな心の機微が丁寧に描かれています。

あやかしが見える光景は主人公にとっては普通のこと。そしてあやかしのほうでも人間を驚かせるために存在しているわけでなく、彼らは彼らの日常を当たり前に送っています。

そんな人の世界とあやかしの世界とが、時に交わったり、すれ違ったりする日々の中で、前世で関わりがあったであろう人達との交流も広がっていくのが本作。

登場するアイテムや色、動物や植物など、物語を読み解くヒントになりそうなものがたくさん登場して、なんとなく細部まで書き込んである絵本を読んでいるような、そんな気分になりました。

琴乃は前世で何があったのでしょうか。双子の姉も今生に転生しているのか。いるなら誰? 不思議な謎もたっぷりな作品です。

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