『進撃の巨人』好きに刺さりそう!

あちらの世界観が大戦中のドイツあたりの雰囲気なら、こちらはそれより百年古いイギリス風の異世界といった雰囲気。馬車とかパブリックスクールとか貴族、天使など。
義妹エイダとの関係を考えると『鬼滅の刃』の風味も少々。

いや作品名を出すのはちょっとな、とは思ったんですけど、あっち方向の雰囲気がある作品だと伝えるのにわかりやすいかなって。わ、悪気はないです(;´Д`A ```
端的に世界観を伝えられたらよかったんですけどもね。ちょっと表現がむずかしくて。
ああいったダークでシリアスなファンタジーで、「生きる」とか「生命とは」とか「神や善」みたいなものを考える作品なのです。

でも読み心地は意外とライトといいますか、すらすら読めますし、シリアスの塩梅もちょうどよく、暗くなり過ぎず、残酷な展開でも美しさが同居しているので、目をそむけたくなるおぞましい描写があるわけではないです。

冒頭、主人公が置かれている状況は、まるで三蔵法師と孫悟空のようでありまして。三蔵シエルがいうわけです。罪を犯した「それ」が人間として転生し、良い子として成長すれば、剝奪した力を返してあげましょう、と。

で、この「それ」は天使もどきなのです。そう、もどき。
しかも人間になり良い子として生き、ノルマを達成しても、力を返してもらえるだけで「天使」になれるわけじゃないんですよね。なんとも!

そもそもこの「それ」の罪っていうのは、理不尽っていいますか、指令に忠実に従っていただけなのです。でもそれは重要ではないのでしょうね。エラーを起こしている。処罰というより駆除っぽい。そこへ救いの手を差し伸べたわけですからシエル様はお優しい……のか?

さて、この人間になった「それ」は貴族の息子リチャードとして誕生します。さらに天使の加護付きということで、ある意味お得プランで生きていくわけなのですが。

この見守り天使は天使っぽくない。口が悪くリチャードのことは嫌い。でもシエル様は好きだから役割はイヤイヤ全うする。いうなら沙悟浄、や猪八戒あたりか?(←)。

しかもリチャードは「それ」だった時代に犯した罪のせいで、無力だというのに命を狙われ続けます。これに加えて「良い子」になるという使命まである。

良い子とは何か。成長するにつれてこの問いがリチャードを悩まし、混乱させていく。
それでも良い子の手本にしようと、とある友人と交友を深めるのですが……まさかの展開が!

次々と降りかかる試練に、リチャードは耐えて行けるのか。どう乗り越えるのか。
やがて迎えるラスト。読者に提示される光景は果たしてハッピーエンド?

幼いころからリチャードを慕う義妹エイダとリチャードの二人が出した答えに何を思うか。
あえてこの言葉を使えば、エイダも純血種の人間ではない、というところがポイントかなと思ったり思わなかったり……。

善悪について考える深い物語でもありますが、もっと単純にこの世界感を楽しむのもありかな、と思える作品です。完結済。一気読みして浸るも良し、かみしめながらゆっくり楽しむのも良し! おすすめです。

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