そのパンドラの箱の最奥にあったものは、果たして本当に希望であったのか?


 ただ戦うことだけの存在であったソレは、捕縛され断罪され、そして、人の子として転生させられた。そして、二十年の猶予を与えられ、「良い子」になることを命ぜられるのだ。
 伯爵家の子息リチャードとして人間の生を始めたソレは、天使の監視のもと、すくすくと成長してゆく。だが、「良い子」というものがどういうものであるかは、全く分からなかった……。

 なかなか攻めた作品です。
 人の中の善、まるで機械のような天使たち、狂って暴虐を働く堕天使ども。悪意をもって邪魔する人間と、愛を教えてくれる大切な人たち。親友、夢、そして絶望。これらが渾然となって、善とは何か? 悪とは何か? そして、生命とは何か?を問いかける物語です。
 訳もわからず人としての生を与えられ、もがきながら行き着いた最後の場所は、彼にとっての究極の答えだったかも知れない。
 その答えを、あなたはどう読むか? 読み手を選ぶ作品かもしれないが、読者の読者たる資質を問う作品でもある。もしかしたらあなたは、この作品に呼ばれているかも知れない……。

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