一刀斎ものと聞いて、読まぬわけにはいかない


 「一刀流」と聞くと、ほとんどの日本人が「北辰一刀流?」と聞き返す。
 ちげーよ、北辰一刀流は支流。その本流である一刀流は、日本最大の流派だよ! 一刀流を知らないなんて、日本人として恥ずかしいことなんだよ!

 日本人は、柳生新陰流や天然理心流、北辰一刀流や無外流は知っているが、一刀流は知らない。理由は簡単。一刀流の剣豪である伊藤一刀斎と小野次郎右衛門が活躍するヒットした時代小説がないからだ。

 だから、一刀斎が出てくる時代小説となると、読まないわけにはいかない。

 本作は一刀斎ものとしては、特異な部類に入ると思う。が、このキャラクターづけは面白いと思う。

 伊藤一刀斎。生没年不詳。生没地不詳。ただの一度も仕官せず。彼が実在した証は、後の世に残された一刀流のみ。彼こそは、まことの剣聖である。