閑話:ゴールデンウィークの一幕、女子会にて
加奈は沢山のクラスメイトと共に、ある女の子の家に呼ばれていた。「お嬢様であり家が大きい」と事前に聞いていた加奈だが、実際にそこに来て、その大きさに圧巻されている。
「こ、こんにちは……」
「お、お邪魔します……」
「し、失礼します……」
加奈含めて、みんなが緊張している。
「そんな緊張しなくても、『マナー違反だ!』とか言ったりしませんよ? そもそも、マナーの大半は誰かが勝手に言い出したもの。相手を軽んじたりしない限り、細かいマナーなぞ気にしなくてもいいだろうと言われていますし」
今風の考え方と言うかなんというか。お嬢様なんて言われているが、あくまでここは現代日本。毎晩パーティーが開かれたり、そこで社交ダンスを踊らされたりする訳ではないようだ。それ故、マナーに厳しい家庭環境ではないようだ。
もっとも、時代の流れだけでなく、マナーとかそう言う細かい事を今の当主が嫌っている事も、その要因の一つである。曰く、「細かいマナーなんて学ぶ暇があれば、プログラミングを学ぶべし!」とのこと。良くも悪くも、先駆的な考え方と言えよう。
「着きましたわ。この部屋は普段使っていない部屋ですので、気楽に使いましょう。多少汚しても大丈夫ですので、女子会を開催といきましょう」
そう言いながら、部屋に備え付けられている冷蔵庫から炭酸飲料やフルーツジュース、紅茶などを出して並べる。また、全員に紙コップを配布する。
「普通に炭酸飲料とかあるんだね……」
「ええ。念のために言っておきますけど、カップラーメンの作り方も知っていますよ?」
「「「そうなんだ」」」
◆
最初こそ緊張していた一同だったが、徐々に慣れてきたようで、高校生らしい話題も増えてきた。「どのクラブに入る?」「○○先生、怖いよね~」「家庭家の授業、男女混合班らしいよ」「修学旅行の北海道、マジ楽しみ」などなど。
そして、いつしか話題は最近のファッションについてになった。互いの服やアクセサリーについて意見が飛び交う。
「加奈のその指輪、可愛いわね! どこで買ったの?」
一人の女子が加奈の指輪に気が付いた。
「これ? これはアユ君に作って貰った」
そう、これはアユがDIYで作った品だった。指輪が歩夢からのプレゼントであると聞き、その場にいた女子たち全員の目が光った。
「えー! すごいじゃん! 指輪ってもしかしなくてもプロポーズされたの?」
「二人は
女子はコイバナが大好物。加奈に好奇の視線が集まる。
「うんん、そんなんじゃない。私のお姉ちゃんにも贈っていたし……」
確かに、加奈がこの指輪を渡された時、歩夢は「ずっと一緒にいてくれますか?」なんてプロポーズめいたことを言ったが、それは姉妹二人に向けて言った言葉。そもそも二人は付き合ってもいないし。
「え~。じゃあじゃあ、加奈個人的にはどう思ってるの?」
「どうって言われても。分かんない」
「うーん、じゃあ赤木君とお姉さんが恋人になってもいいの?」
加奈は二人が恋人になったところを想像した。胸がチクッと痛むのを自覚した。
「それは……。寂しい……」
「それってやっぱり、赤木君のことを好きって事じゃない! 告白しちゃいなさいよ! お姉さんに取られる前に!」
「でも、お姉ちゃんとの関係を悪くしたくない……。お姉ちゃんも好きだから……」
「なるほど、抜け駆けはダメな感じなのね。じゃあ、赤木君を惚れさせるのが一番って事ね!」
「それなら、自然にボディータッチとかしたら、コロッと落ちるんじゃない?」
「いや、二人の距離は元々結構近いから、もっと過激な物じゃないと。やっぱり夜這いよ、夜這い!」
「なるほど、二人は同じ家に住んでるって言っていたわよね? だったら、夜中に赤木君のベットに潜り込む事だってできるよね?」
「そしたら、もうイチコロよ!」
「「「きゃー!」」」
話がどんどん進む。加奈は苦笑いしながら「ま、まあ考えておく」と言ったのだった。そして心の中で
(言えない……。毎日一緒の布団で寝てるなんて)
と思ったのだった。
その後、標的は別に移り、そのままコイバナに花を咲かせたのだった。
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