ラトソールダンジョン6
……? 今、俺の体、どうなってるんだ? てか、やけに周りが冷たいな……。
目を開けるも、冷たい水が目に入ってきたので、すぐに目を瞑った。えっと、どういう状況だっけ?
(あー、思い出した。確かクッション代わりにしようと雪を生成して、そこへダイブしたんだったな。って呑気に考えてる場合じゃない! 二人はどうなった?!)
周囲にある雪に意識を集中し、魔法の制御下に置く。よし、あとはこれを蒸発させれば……!
「た、助かった……」
「スリリングなスライディングだったね」
「よかった、二人とも無事か……」
幸い、三人とも軽傷で済んだ。ふう、助かった。
「取りあえず、回復魔法かけるね。『ヒール』」
「ありがと、助かる」
「ありがとね! もう出口がすぐ傍ね! 早く入りましょ!」
「……でも、37層が安全って確証はないよな?」
「「……」」
無言で見つめ合う事数秒。意を決したように姉さんが宣言した。
「取りあえず行ってみよ。無理なら引き返せばいいし! 最悪死に戻って『楽園の間』に戻っちゃえばいいし!」
そういえば、【夢渡り】の効果でこっちの肉体が滅びた場合、『楽園の間』でリポップするんだったな。試した事は無いが、いったいどういう原理なのだろうか?
「じゃあ、行くわよ! せーの!」
「「「えい!」」」
◆
37層に到着した。きょろきょろと周囲を見渡して、危険が無いか調べる。
「……平和そうだな」
「安全そうね」
「ひと安心だね」
37層は平和そのものだった。だが、いつ噴火するか分かった物じゃないし油断はできないよな。
「何か噴火するフラグとかあるのかな? 通ってはいけない場所とか」
「なるほど、あり得るわね! アユ、魔力感知で怪しい所は無かった?」
「いや、特になかったと思うけど……。少なくとも、魔力感知に引っかかるようなトラップは無かったぞ」
「うーん、他に何かあるかしら?」
「時間経過とか?」
「なるほど、それはあるかも!! もしそうなら大変よね、急いで38層を目指さないと!」
「うん、その可能性はあると思う。ちょっと急ぎ目に移動しよう!」
「魔物はいったん無視でいいかな? 40層のチェックポイントを取るのを優先した方が良いと私は思うけど」
「俺も賛成。姉さんは?」
「私も賛成。それと、スタンピードについてはそんなに心配しなくても良いと思うわ」
「「?」」
「さっき36層で逃げている時に見たのだけど、火山弾って魔物に当たる事もあるみたいなの。つまり、この層でも火山噴火を起こせば、スタンピードの影響を軽減させることができるかもしれない」
「そうなのか。でもそれって違和感があるよな。スタンピードを食い止めようとする俺達冒険者を排除すべく火山爆発を起こして、それがかえってスタンピードを止めているだなんて。ダンジョンが自分で自分の首を絞めるような事をするかな?」
「それは確かに腑に落ちない点だけど……気にしちゃ駄目じゃない?」
「もしかしたら、救済措置かも。リエルさんが『ステータスシステム、ダンジョンという生き物は、人に魔法を授け、同時に試練を課す』みたいな事言ってたよね。人を殺す為の装置ではないから、救済措置が用意されていても不思議じゃない……と思う」
「さっすが加奈、頭が回るわね! それが本当だとしたら、敢えて火山が噴火するまで待ってから次の階層に行った方が良いかもしれないね!」
「オーケー。よし、方針は決まったな。取りあえず、37層の出口を目指すぞ」
◆
基本的に魔物を避け、どうしても「倒さないとかなり遠回りになる」という場合だけ倒すようにした結果、二十分くらいで37層の出口に到着した。36層は一時間くらいかけたから、三倍くらいのスピードだ。
「どうする? ここから噴火するまで待つ?」
「どうしようか。取りあえず、周囲の魔物を狩ろうか」
「そうね。じゃあ、索敵お願い!」
「おっけ、任せろ。まずは向こうにいるソイルダイルと水晶兵士から倒そう」
…
……
………
「そろそろ、この階層に来てから一時間ね。で、まだ噴火しそうにないわね」
「だな。このままだと時間がヤバいし、そろそろ次の階層に行くか?」
「……そうね。心残りだけど、到達できない方が困るし」
しっくりこないまま、俺達は37層を後にしたのだった。
地球に魔力がやってきた~魔法もダンジョンも夢で予習済みです~ 青羽真 @TrueBlueFeather
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