エスケープラビット
エスケープラビットを捕まえる方法について、あーでもない、こーでもないと話し合う内に、ふとマリさんが行っていたセリフを思い出す。
「『極稀にサッカーバットに襲われて瀕死になっているエスケープラビットが獲れる……』ってことはさ。サッカーバットはエスケープラビットを捕まえる事が出来るって事だよな?」
「そうね。だからと言って、テイマーを目指すっていうのも違うわよね」
「そもそも、テイマーになってエスケープラビットを捕まえる事が出来るなら、もっと目撃証言や撃破例があるはずだよ」
「いや、サッカーバットをテイムするって事じゃないよ。サッカーバットを倒すんだ。もしかしたら、サッカーバットには特殊なスキルがあるのかもしれない。隠密とかそう言う類の」
「「!!」」
「まずはサッカーバットを倒そう。夕方から夜にかけて現れるはずだから、今日は徹夜だな」
異世界で徹夜しても、現実世界に影響は及ばない。時間の流れがこっち(異世界)とあっち(地球)で違っているという事だろうか? ほんと謎である。
「サッカーバットの群れね! アユ君、やっちゃって!」
「バレットレイン!」
土魔法の応用、『バレットレイン』。端的に言うと、マシンガンのような魔法である。その魔法で10匹以上は倒したはずだ。
「駄目だ、スキルは手に入らなかった」
「次、行きましょ」
それから一時間ほど経過。50体以上はサッカーバットを倒し、「そろそろ諦めようか」と思っていた時だった。
「「「あ!」」」
一匹のサッカーバットから出た光の粒子が俺に向かって飛んできた。体の中に吸収されて……。
<ジャミングLv.0を取得しました>
「きた! ジャミングって言う名前のスキルらしい」
「おめでとう!」「流石アユ君。推理的中だね」
その後、ジャミングを使ってみたが、特に変化は無し。透明になったりする事は無く、一見効果はないように思えたが……。
「取りあえず、俺がここでじっとしておくから」
「私たちが離れたらいいのね。合点承知!」「分かった」
二人が遠くへ行ったことを確認した後、俺はジャミングを起動。暫くすると……。
(あ、兎だ! 鑑定!)
『エスケープラビット』
レベル:25
生命力最大値:50
生命力回復率:1
魔力最大値:150
魔力回復率:10
(ビンゴ! 姉さんと加奈が向こうにいるから逃げてきたんだろうな。俺がここにいる事に気が付いていないし、ジャミングは何らかの効果があるんだろうな。さてと。エスケープラビットは生命力最大値が低いな。一撃で何とかなりそうだな! もう少し近付いてくれ……。今だ! 『アイスプリズン』!)
水魔法を行使。エスケープラビットを氷漬けにする。魔法を使う瞬間、エスケープラビットは俺に気が付き逃げようとしたがもう遅い。君に逃げ場はもうないよ。ざまあねえな!
は! これこそまさに、最近流行りの「○○したがもう遅い系」、あるいは「ざまあ系」の展開なのでは?(違う)
「パッパラー! アユムはエスケープラビットの肉をゲットした! なんちゃってー」
◆
「わふふ?! ほんとに捕まえたのか?」
「にゃ? どうやって?」
「こん? ほんとだ、確かに【鑑定】したら『エスケープラビットの肉』ってなってる……!」
上から順に、
「ええ、頑張りましたよ! 主にアユが」
「そ、それで。これを売ってくれるのか? 幾らだ、幾らなんだ!」
「それが問題なんですよね……。なにせ珍しすぎて相場が分からないので……」
「それって物凄い高級品って事になるよね? マリ、それを買うだけのお金はあるの?」
「わふ! それは……ほら! 三人で割り勘しようぜ? お前らも食べてみたいだろ?」
「それはまあいいけど、三人で割り勘しても、出せる金額かしら?」
そもそも、サッカーバットは人気のない魔物。積極的に狩る魔物ではないし、さらにそこからジャミングを入手できる確率は低い。エスケープラビットの肉はある意味ダイヤモンド並みの希少価値があるのではなかろうか?
「な、何とか安くしてもらえないか……? 頼むよ、何でもするから~!」
うーん、困った。まあ俺としては別に譲ってもいいのだが、それは彼らも躊躇するだろう。タダより高い物はないって言うし。
「それならさ……。ねえねえ、アユ。こんなのはどう? ごにょごにょ」
「ええ、それっていいのか?」
「提案するだけならタダなんだしさ!」
「まあそうだけど……。じゃあ、姉さんが提案してよ」
「いやいや、アユが言ってよ」
「えー。まあいいけど。あの、これは譲るので、その代わりにその耳と尻尾、触らさせてくれませんか」
「「「?!」」」
「あー、やっぱりダメですかね?」
「ま、まあ。そのくらいでいいなら、アタシはいいけど?」
「私も別にいいわよ……恥ずかしいけど」
「もっと過激なことを言われるのかと思ってたから、それくらいなら全然。ちょっと恥ずかしいけど」
その後聞いたところ、「尻尾を触りたい」≒「頭をなでさせて」という感じらしい。確かに、年下の子に頭をなでられるのは……恥ずかしいけど、過激とまでは言わないかな?
で、せっかくだし六人で焼き肉パーティーをしようという話になって、三人が住む家にお邪魔させてもらった。
「「「「これは……! 美味い!」」」」
旨味の暴力。そんな言葉が頭に思い浮かんだ。
その後、俺達三人は獣人三人組をモフモフさせてもらった。ユイナさんの尻尾が特にモフモフで素晴らしかった。抱き枕にして眠ってみたいなあと思ったくらいである。
◆
「美味しかったな!」
「美味しかったわね!」
「三人が喜んでくれてよかったね」
「「「また捕まえよう」」」
その後、何度もエスケープラビットを狩る事になった。自分達が食べたい、というのも理由の一つだが、もう一つが「金になる」である。希少品という事で、買い取りではなくオークション行きになったのだが、一つ50万ゴールドで買い取られた。凄くない? 肉に50万だぜ?
「そんな高級肉を自分たちで狩れるのだからありがたいわよね」
「アユ君に感謝」
「あはは。今日も狩ろうか!」
そしてその日。いつもの様にエスケープラビットを倒すと、それは起こった。
「え? エスケープラビットからスキルがドロップした?」
俺に吸い込まれる光の粒。得たスキルは……。
<魔力感知Lv.0を取得しました>
使ってみた所、【魔力感知】はその名の通り魔力の流れを知覚できるようになるスキルだった。この世界では、生物のほとんどが魔力を有しており、それ故に魔力感知は索敵に利用できるた。
「これはすごいな。茂みに隠れている魔物もはっきりと分かるよ。まるで赤外線カメラだな」
魔力感知は非常に便利なスキルであり、何度も使ってどんどんレベルを上げた。
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