嘘から出た……
次の日。俺が教室に入ると、仲良くしてる友人達が集まって話しているのが見えた。俺もそこへ向かって話に参加する。
「おは~。何の話してるんだ?」
「「「おはーー」」
「おは。最近アニメ化されたラノベの話してたんだ。で、それから最近のラノベについて話してる」
「ラノベか。俺も色々読むぜ、転生ものとか」
「そっか! それなら話は早い! 今『ダンジョンが存在する日本』を舞台にしたファンタジーはハイファンタジーに分類すべきかローファンタジーに分類すべきかどっちだと思うか議論してるんだ! 俺はローファンタジーだと思うんだが、こいつはハイファンタジーだと思うと言っていてさ! 意味わからないだろ?」
そう言ったのは赤坂。こいつも出席番号が近かったので仲良くなった。
「こいつら、その件で五分以上揉めててさ。赤木、なんとか言ってやってくれ」
「確か、ハイファンタジーは『現実世界とは異なる世界観』で、ローファンタジーは『現実世界に近しい世界観にファンタジー要素を加えた物』だったよな? それなら、日本にダンジョンが出現ってのは、ローファンタジーだろ?」
「ほら! 赤木もこう言ってるぞ!」
「いやいや、赤木。一度俺の主張を聞いてくれたまえ。主人公がギャルゲーに転生するタイプの小説ってよくあるだろ? 例えば【自主規制】とか。読んだことがあれば分かると思うが、この小説は日本に似た世界観。だけど、これをローファンタジーだとするのは変だと思わないか?」
と主張するのは稲葉。なるほど、一理あるな。
「確かにこの場合、ハイファンタジーに近いように感じるな。つまり、現代日本っぽい世界観ではあるが、そこはあくまで『ゲーム世界』だから、ハイファンタジーに近い気がするな」
「だろ? で、ゲーム世界に転生と明記されていなくても、ダンジョンが日本にある時点で、それは異なる世界だと俺は思うんだ!」
「うーむ、一理あるな」
「だろ? 赤木、お前が決めてくれ!」
「「ハイファンタジーかローファンタジーか。どっち?!」」
「いや、なんで俺が決めるんだよ。まあ、いいけど。うーん、俺の個人的な意見だが……」
・現実世界が変化したと明記されている、あるいは作者がそう考えているならローファンタジー
例)時は2XXX年。地球規模の大地震が発生した。その日を境に、地球にダンジョンが発生した。そんな世界で、主人公はダンジョンに潜る「探索者」となった。
・現実世界とは違う世界であると明記されているならハイファンタジー
例)弾幕シューティングゲームのプロである主人公は、トラックにはねられた。気が付くと、魔物が跳梁跋扈する日本に転生した。ゲームに酷似したこの世界で、主人公は無双する。
・地球誕生以降ずっと魔物が
例)そこは魔法が存在する世界。主人公は祈祷術の発展した『倭国』で生まれたごく普通の祈祷師。しかし、魔導王朝『アメリ』からの留学生と出会い、そこで主人公には魔法の才能もあると知る……。
「こんな感じでどうだ?」
「うーむ、なるほど」
「まあ、折衷案としては妥当だな」
「「折衷案の提案、ご苦労。褒めて遣わす」」
「なんでそんなに上から目線なんだよ。ちなみに、主人公が異世界と現実世界を行き来する系のストーリーはどっちだと二人は考える?」
「ハイファンタジーだろ?」
「ローファンタジーだろ?」
「「なにを~!」」
「なんでこの二人はこうも意見が合わないんだ?」
「さあ……? こだわりでもあるのかなあ?」
二人の議論を一歩引いて聞いているのは青山と畑って友人だ。二人もラノベは読むらしいが、特別ジャンルに拘りはないらしい。
ちなみに、さっきの話だが、俺は異世界要素が半分以上あるならハイファンタジーに分類されるのではないかと思っている。
◆
「ふー。貴様、なかなかやるな」
「お前こそ。いい
ガシッと握手する赤坂と稲葉。途中から二人の議論は聴いていなかったので何があったのかは分からないが、ともかく二人はバトルを通じて友情が芽生えたらしい(?)
「ラノベと言えば、俺も昔は中二病を患っていたなあ。俺の中には魔力が宿っているはずだ! 臍の下あたりにあるエネルギーを意識的に動かし、放出すれば魔法使いになれるはずだ! とか思ってたっけ」
そう言って「はあ~っ!」と魔法を使う真似をする赤坂。これがただの妄想ならまだしも、今の赤坂には実際に魔力が宿っているから、なんとも反応しずらい。
なお、魔力は体全体にまんべんなく存在するモノなので、臍の下にある訳ではない。
「ふと思ったんだけどさ」
と稲葉が口を挟む
「万が一、この世界でも魔法が使えるようになったとしたら……。さっきのハイファンタジー or ローファンタジー問題が完全に解決するのでは?」
「どういうことだ?」
「だってさ。日本がファンタジーな世界観になったなら、ローファンタジーってジャンルが意味をなさなくなるだろ? 実際にダンジョンが存在すれば、ダンジョンモノは現代ドラマに分類されることになるだろ?」
「お前、天才か」
「その発想は面白いな」
「そうだな! 争いをなくすためにも、地球がファンタジーな世界になってくれないかなあ!」
笑えない話だなあ……と俺は思いつつも、「そんな訳ないだろ、あはは」と返しておいた。
そしてこの日、世界の常識が崩れ去った。
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