定番のスキル
「あの。私達はこのダンジョンの外へはいけませんか? この世界をもっと色々探検してみたいのですが」
姉さんはそう問うた。正直俺も、異世界の町を見て回ったり、各所にあるダンジョンを見て回ったりしたい気持ちはある。だが、それに伴い危険もあるだろう。それらを天秤にかけて、俺は反対かな……。いや、さっき「この世界で死んでも生き返る」って言っていたよな? それに、自滅魔法を使えば、いつでも洋館に戻ってこれる。それなら、別にいいかも。
「なるほど。確かにずっと『楽園の間』っていうのも退屈だろうしね……。いいわよ、異世界の町へ繰り出しても。この世界は戸籍制度がはっきりしていないから、『冒険者に憧れて田舎から来ました』って言えば、疑問に思われないと思うし」
「そうなんですね」
「でも、その前に二つのスキルをあげるわね。【鑑定】と【異世界語】それから【ステータス偽造】よ」
「「おお! 異世界モノの定番!」」
そんな感想を抱いたのは姉さんと俺。普段ラノベを嗜む俺達にとって、なじみ深いスキルである。
「【鑑定】は色々なアイテムの名称を調べる事が出来る他、魔物の名前、レベルなんかを調べる事が出来るわ。【異世界語】はそのままね。この世界の言語を聞いたり話したりできるようになるわ。【ステータス偽造】はステータスを変えて見せる事が出来るスキルね。クラス『異世界の者』とか、アユム君の幸運値とかは偽造した方が良いと思うわ」
「「「ありがとうございます!」」」
「早速、私を鑑定してみて。私を見ながら鑑定って念じたらいいわ」
(((鑑定)))
◆
『リエル=ヘキサウィング』
レベル:65535
生命力最大値:9223372036854775807
生命力回復率:18446744073709551615
魔力最大値:18446744073709551615
魔力回復率:18446744073709551615
◆
「「「……」」」
なんというか……。「僕の考えた最強の敵」みたいなステータスだな。
「上手く鑑定できたみたいね。ぞれじゃあ、さっそく迷宮の外に連れて行くわね。あ、その前に転移を試してもらおうかな。あの扉の外にある魔法陣に入ってみて」
パチン!とリエルさんが指を鳴らすと、『ボス戦前の扉』がひとりでに開いた。そこには光り輝く魔方陣が描かれていた。これは……?
「それは『チェックポイント』と呼ばれている物よ。ダンジョンの入り口以降、ボス戦後の階層に用意されているの。そのチェックポイントは65534階層にいる別のボス後のチェックポイントね」
魔方陣の上に乗る俺達。その直後、頭の中に声が響いた。
<65534階層のチェックポイントを記録。【ダンジョンスキップ】を取得しました>
「チェックポイントを踏むことで、他のチェックポイントへ行くことが出来るわ。あなた達の場合、『65534階層』と『楽園の館』に行けるはずよ」
気が付かなかったが、洋館の絨毯に魔方陣が描かれていたようで、そこは迷宮のチェックポイントだったらしい。
また、【ダンジョンスキップ】は第0層(=ダンジョンの入り口)と第10層のボス後の二か所のチェックポイントを踏んだ時点で解放されるスキルらしい。それが俺達の場合は『65534階層』と『楽園の館』の二か所のチェックポイントを踏んで解放されたようだ。
◆
『赤木歩夢』
レベル:38
生命力最大値:77
生命力回復率:3
魔力最大値:106(×1.2:クラス「魔法使い」による補正)
魔力回復率:3(×1.2:クラス「魔法使い」による補正)
幸運値:816
スキル
・夢渡り(Lv.---)
・風魔法(Lv.17)
・水魔法(Lv.18)
・火魔法(Lv.15)
・土魔法(Lv.18)
・自滅(Lv.0)
・鑑定(Lv.3)
・異世界語(Lv.5)
・ステータス偽造(Lv.50)
・ダンジョンスキップ(Lv.---)
クラス
・■■、学生、異世界の者、ハンター、魔法使い、駆け出し冒険者
◆
『赤木加奈』
レベル:36
生命力最大値:62
生命力回復率:2
魔力最大値:127
魔力回復率:5(×1.5:クラス「ヒーラー」による補正)
幸運値:38
スキル
・回復魔法(Lv.14)
・水魔法(Lv.4)
・自滅(Lv.0)
・鑑定(Lv.3)
・異世界語(Lv.5)
・ステータス偽造(Lv.50)
・ダンジョンスキップ(Lv.---)
クラス
・学生、異世界の者、ハンター、ヒーラー、駆け出し冒険者
◆
『赤木咲良』
レベル:38
生命力最大値:145(×1.2:クラス「剣士」による補正)
生命力回復率:4(×1.2:クラス「剣士」による補正)
魔力最大値:41
魔力回復率:1
幸運値:36
スキル
・風魔法(Lv.2)
・剣術(Lv.12)
・自滅(Lv.0)
・鑑定(Lv.3)
・異世界語(Lv.5)
・ステータス偽造(Lv.50)
・ダンジョンスキップ(Lv.---)
クラス
・学生、異世界の者、ハンター、剣士、駆け出し冒険者
◆
「うん、もう注意すべき事は無いかな。それじゃあ、異世界を楽しんでおいで~!」
「色々とありがとうございました。楽しんできます!」
「「ありがとうございました」」
リエルさんが指を鳴らす。と次の瞬間、俺達は人が沢山いる場所にいたのだった。
◆
<0階層のチェックポイントを記録>
そんな無機質な音声のおかげで自分たちがどこに飛ばされたのか分かった。ここは無限迷宮の入り口なのだろう。
さっと周囲を見て、その場の雰囲気を把握する。凄く直観的な表現になってしまうが、ここは大きな駅の改札口のような雰囲気を受ける。忙しなく人々が移動し、ある人は出勤し、ある人は家へと変える。そんな場所。
「移動しようか」
「そうね、その方が良さそうね」「同感」
姉さんと加奈と共に、人が少なそうな場所へと俺達は移動した。
「改めて見ると、異世界に来たんだって痛感するわね……」
「だな。ケモミミとか実在するんだ……」
「みんな武器を持ってて、物騒」
俺達は、まるで田舎から東京にやってきた若者のように、周囲をきょろきょろと見る。ドラマだと、ここで「オラ、東京さやってきたべ~!」とか叫んで周囲の注目を集め、それに気づいてそそくさと移動するのかな。流石に俺にはここで大声を上げる勇気はないが。
目の前を角が生えた男女カップルが通り過ぎた。少し離れた所でわいわい騒いでいる若者たちは全員鎧を着ており、その手には剣を持っている。うわ、なんかすごく「勇者」みたいな恰好をした人が歩いている……。別の場所では魔女の帽子をかぶった妖艶な女性が歩いている。
一見コスプレ集団にしか見えないが、この世界では普通の光景なのだろう。
「取りあえずだ。ここにいる人たちは
「そうね。優しそうな人……いるかしら?」
「みんな怖そう……」
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