夢渡り
「あそこ。プルプルがいる」
次にスライムを見つけたのは加奈だった。加奈はスライムを「えいっ!」と言って踏みつけた。スライムは光になって消えた。そう、この世界では魔物を倒すと光の粒子となって消えてしまうのだ。さっきは姉さんのレベルアップに気を取られてスライムの残骸がどうなったのか見てなかったので、俺達は二匹目にして初めてその事実を知ったのだった。
「お、アユも発見! サク姉たいちょー、倒してもいいですか!」
「いいわよ。やっちゃいなさい!」
「ちちんぷいぷい、スライムよ、ばくはつせよ!」
と言いながら俺は足でスライムを踏みつけた。「いや、魔法は?」と思うが、なにぶん当時の俺は小学校一年生。行動にいちいちツッコミを入れていてはきりがない。
レベルアップに喜ぶ俺とそれを見て一緒に喜んでくれている姉さん。そんな中、加奈は地面をじっと見つめていた。
「アユ君、サク姉。何かが落ちてるよ」
「「?」」
そこには半透明のビー玉のような物と小さなスライムのようなものが落ちていた。後からそれらが『魔石』『スライムゼリー』と呼ばれる物であると知る事になるのだが、当時の俺達はそれを『宝石』『ミニスライム』と思ったようで……。
「凄いね! スライムを倒せば宝石がゲットできるのね!」
「もっと集めたい!」「綺麗だね。私もゲットしたい」
「「「スライムを倒せ~!」」」
興奮している三人の幼児。ともすると迷子になってもおかしくない状態だが、幸いにして俺達は三人一緒に行動する事に慣れている。いわゆる「三人はいつも一緒」ってやつだな。まあそういう訳で俺達三人組は一緒にスライム探しの冒険(笑)に出かけるのだった。
そして、それから各々十数匹のスライムを撃破した。
「な……なんでアユばっかり……」
「むう。ずるいよ、アユ君」
「そー言われても……」
しかし、魔石を手に入れたのは俺ばかり。二人が倒した場合、魔石は全くドロップせず、スライムゼリー単体が時々ドロップした。
「じゃあ、アユから二人にプレゼントするね!」
「いいの?! ありがと、アユ!」「嬉しい。ありがと、アユ君」
◆
さて。その後一年程かけて少しずつ検証し、分かった事を列挙するとこんな感じである。
1.【夢渡り】について
・夢で異世界に行く事が出来るのは、俺と一緒に寝た人だけである。例えば姉さんだけ別の場所で寝た場合、異世界に姉さんは現れなかった。
・異世界に地球の物品を持ち込むことはできない。逆に異世界の物品を地球に持ち帰る事も不可能である。ちなみに衣服も向こうで用意する必要がある。
・異世界での肉体と現実世界の肉体は別物である。向こうで怪我をしても現実に反映される事は無いし、逆もまたしかりだ。
・現実世界で入眠し異世界に入ると、前回意識を失った場所に「出現」する。例えば庭で寝落ちした場合、次の日の夢は庭から始まる。なぜ「出現」と表現しているのかというと、ある日の出来事に由来する。ある日、外で昼寝をしまったのだが、その日の夕方、異世界にて雨が降ったらしいのだ。次の日、異世界に来た時には、草花が濡れていたのだが、俺達の体や持ち物は全く濡れていなかった。だから、「出現」と表現した。
・ある意味これが一番重要なことかもしれないが、精神年齢の成長速度が普通の子供の1.5倍ほどあると分かった。昔から『三人は育てやすい子ねえ~』と言われてきたが、もしかすると精神年齢の発達が速かったからかもしれない。
2.ステータスについて
・レベル:魔物を倒す事でレベルが上がる。ただし、レベルが上がれば上がるほど、次のレベルに達するまでに必要な経験値が増えてしまうようだ。また、レベルアップの度にステータスが上昇する。複数のパラメータが同時に上昇する事もあるし、一つだけしか成長しないこともあり、規則性は不明。
・生命力最大値:保有できる最大の生命力。生命力が残っている限り、負った傷は瞬時に回復する。
生命力回復率:一分あたりに回復する生命力。
魔力最大値:体内に蓄える事が出来る最大の魔力量……だと思う。現在、その用途は不明。
魔力回復率:一分あたりに回復する魔力量……だと思う。はっきりしたことは不明。
幸運値:魔物を倒した時のアイテムドロップ率に関わる。俺ばかりがスライムの魔石を入手できたのはこの値がずば抜けて高かったからであろう。
3.スキルについて
・夢渡り→俺が持つ、夢の中で異世界に行く事が出来る能力。加奈と咲良は持っていない
4.クラスについて
クラスとは各々が持つ特性を示している。俺達は三人とも「学生」であり、「異世界の者」である訳だ。
ちなみに、スライムを500匹ほど倒した際に、「駆け出しハンター」というクラスを獲得した。
また、俺が持つクラス「■■」だけが何故か読めないが、夢渡りに関係したクラスと思われる。
5.ドロップアイテムについて
今の所スライムにしか遭遇していないが、魔石とスライムゼリーしか手に入っていない。魔石はレアドロップ扱いのようでなかなか手に入らない(俺が倒した場合、90%位の確率でドロップするが)。一方、スライムゼリーは通常ドロップのようで、頻繁に手に入る(加奈と咲良が倒した場合でも、30%位の確率でドロップする)。
魔石の使い道は不明だが、貴重そうなので洋館に保管してある。スライムゼリーは食べると美味しいと判明したので、入手する度に食べている。
『赤木歩夢』
レベル:18
生命力最大値:27
生命力回復率:1
魔力最大値:20
魔力回復率:1
幸運値:810
スキル
・夢渡り(Lv.---)
クラス
・■■、学生、異世界の者、駆け出しハンター
◆
『赤木加奈』
レベル:16
生命力最大値:30
生命力回復率:1
魔力最大値:15
魔力回復率:2
幸運値:19
スキル
クラス
・学生、異世界の者、駆け出しハンター
◆
『赤木咲良』
レベル:19
生命力最大値:35
生命力回復率:1
魔力最大値:13
魔力回復率:1
幸運値:15
スキル
クラス
・学生、異世界の者、駆け出しハンター
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