地球に魔力がやってきた~魔法もダンジョンも夢で予習済みです~
青羽真
夢の世界は異世界だった
プロローグ
<魔力濃度が一定以上に達しました。ステータスシステムが起動します>
その日、地球に住まう全ての人類がその声を聴いた。そして、驚愕した。ステータス、スキル、魔法、ダンジョン。そう言った創作物の中でしか見る事の無かった物が現実になったのだ。
つぶやいたーなどのSNSでは、自身が獲得したスキルやクラスを自慢する者や逆に嘆く者が続出。社会全体が混乱したのは言うまでもない。ちなみに「ステータス」という言葉がトレンド入りした。
さて、俺がこの声を聴いたのは高校の教室だった。一応授業中だったのだが、授業どころではなくなり、みんなが自身のステータスを見たり掲示板を開いてみたりしはじめた。幸い、先生もゲームやラノベを読む人だったため、「俺も自分のスキルについてとか調べたいから授業は中止にしようか」と言ってくれた。なんなら、先生が一番、自身のステータスに興味津々だった。
そんな中、俺は同じクラスにいる我が
(本当に起こるとはな)
(うん。正直びっくり)
(だな。警戒していたとはいえ、現実に起こるとはな。学校が終わったら、姉さんと例の場所を見に行こうか)
(うん)
俺達は訳あって魔力について事前知識を得ていた。だから、地球の魔力濃度が上昇していることに気が付いていたし、いつかステータスシステムが地球にも及ぶのではないかと予想していた。
どうして魔力について知っていたのか、それは俺がまだ小学校一年生の頃に遡る……。
◆
自分の中にある「一番古い記憶」と言われて何かを思い浮かべる事が出来る人はいると思う。では、「一番古い夢」について覚えているだろうか? こちらはほとんどいないのではないかと思われる。
俺もまた、一番古い夢を
なお、俺は訳あって加奈と咲良が暮らす家庭(叔父の家)に居候しており、当時もそして高校生になった今でも二人とは仲が良い。だから、「毎日、夢の中でも一緒に遊んでいる」と言っても、叔父と叔母は「ずっと一緒にいるから、そういう夢を見るんだろうな」と思い、疑問視しなかったようだ。
ちなみに叔父と叔母の事はお義父さん、お義母さんと呼んでいて、遺伝上の両親は父さん、母さんと呼んでいる。
そんな中、最初に夢について疑問を呈したのは姉さんだった。
「これは夢じゃないかもしれないわ」
「「どういう事、サク姉?」」
当時は姉さんではなくサク姉と呼んでいた。
「実はね、友達と夢について話したんだけど、その時に教えてもらったの。夢と現実の違いについて」
「「違い?」」
「友達が言ってたの。『夢でほっぺを抓っても痛くないよね』って。あと、『これが夢だって分からないよね』とも言ってたの」
「「?」」
ほっぺを抓る。当然痛い。それに、俺達はこれが夢であるとはっきりわかっている。
「私ね、『そんな事は無いけどなあ』って言ったら、『現実で寝ぼけてただけじゃないの?』って言われたわ。それで色々と調べてみたのだけど、他の人が見ている夢と今の私たちは絶対に違う物よ!」
姉さんは加奈と俺よりも二歳年上。論理立てて思考する知能が先に育っており、それ故か真っ先に違和感に気が付いたのだ。
「「そうなの?」」
「ええ。これはたぶんだけど夢じゃないわ。これは……冒険の世界よ!」
「ぼーけんの……」「せかい?」
当時、姉さんはオープンワールドRPGゲームにはまっていた為、ここが『冒険の世界』であると呼称したのだが、要は異世界であると姉さんは主張したのだ。
「そうよ! という訳で、冒険しましょ!」
俺達はまず、洋館の中を探索する事に。今まで毎日遊んでいた場所だったのだが、改めて探索すると、色々な物がある事が分かった。
「みて、二人とも。剣よ、剣!」
「危なくないの?」「怖いよ……」
「危ないわよ? だから二人は持っちゃ駄目よ。というか、重すぎて私にも持てないわ……」
姉さんは運動神経が良い方だが、当時は小学生。流石に剣を振り回す事は難しい。
「ねえ。こんなの見つけたよ」
そう言って加奈が持ってきたのは子供が持てるサイズの剣とステッキだった。
「このサイズの剣なら私でも持てるわね。私が使っていい?」
「ステッキじゃん! ちちんぷいぷい!」
結果、姉さんが剣、俺がステッキ、加奈はタリスマン(当時はただの宝石だと思っていた)を装備した。駆け出し冒険者パーティー(笑)の完成である。
洋館を後にする俺達。洋館の周囲には草原が広がっており、ごろんと寝転がりたい衝動に駆られる。
そうやって散歩すること数分。俺達の前にプヨプヨした生き物が現れた。
「スライムよ、スライム!」
「なに、あれ?」「可愛いね」
「あれを倒す事でレベルアップする事が出来るのよ! 喰らえ、スラッシュ!」
姉さんは躊躇なくスライムを真っ二つに切った。幸いこの世界にいるスライムには目が無いので、その分罪悪感は少ない。
「やった! レベルが上がったわよ! ステータス! おお!」
「どうしたの?」「すてーたすってなあに?」
「んっとね。自分の事を知りたいって思いながら、ステータスって唱えてみて」
「「すてーたす? わあ!」」
自分の眼前に半透明の板が現れた。その内容とは……。
※ちなみに、小学校一年生だった時は平仮名で書かれていたはずだ。
『
生命力:6/6
魔力:10/10
レベル:0
生命力最大値:6
生命力回復率:1
魔力最大値:10
魔力回復率:1
幸運値:800
スキル
・夢渡り(Lv.---)
クラス
・■■、学生、異世界の者
「赤木歩夢」は俺の名前。父方の従姉妹である加奈と咲良と同じ苗字である。
なお、他の人のステータスを覗き見る事は出来ないので、聞いてみた所、二人のステータスはこんな感じらしい。
『赤木加奈』
生命力:10/10
魔力:6/6
レベル:0
生命力最大値:10
生命力回復率:1
魔力最大値:6
魔力回復率:2
幸運値:15
スキル
クラス
・学生、異世界の者
◆
『赤木咲良』
生命力:9/9
魔力:9/9
レベル:1
生命力最大値:10
生命力回復率:1
魔力最大値:10
魔力回復率:1
幸運値:8
スキル
クラス
・学生、異世界の者
「サク姉だけレベルが1なんだね!」
「さっきスライムを倒したからだね。ってそれよりも! アユ、幸運値が800もあるの?」
「八行目に書いてある数字だよね? うん、そう書いてあるよ」
「あと、スキル。アユだけ『夢渡り』ってスキルがあるのよね。これがこの世界の事なのかな……?」
「どういう事?」
「つまり、こうして私たちが冒険の世界に来ているのはアユの力かもしれないって事よ」
「アユ、何もしてないよ?」
当時の一人称はアユだった。今では「俺」だけどな。
「なるほど。つまり、いわゆる『
「「ぱしっぶすきる?」」
「勝手に使ってしまうスキルの事をそういうのよ」
「「へー!」」
ゲームの中でパッシブスキルという言葉が出てくるので、姉さんはこの言葉を知っていたらしい。だが、正確に覚えていなかったよう。
「取りあえず、二人もレベルを上げよう! スライムを探せーー!」
「「おーー!」」
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